Yahoo!ニュース

NY原油29日:クッシング原油の減少を受け、年初来高値を更新

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

NYMEX原油6月限 前日比1.52ドル高

始値 56.93ドル

高値 59.33ドル

安値 56.54ドル

終値 58.58ドル

米クッシング地区の在庫が減少に転じたことを受けて、期近主導で上昇した。年初来高値を更新している。

米エネルギー情報局(EIA)によると、4月24日の週の全米原油在庫は前週比+191万バレルの4億9,091.2万バレルとなり、増加傾向を維持した。米国内の産油量は前週の日量936.6万バレルから937.3万バレルまで上振れしており、生産データの観点からも原油相場に対してはネガティブな結果になった。ただ、WTI原油先物の受け渡し場所であるクッシング地区の原油在庫が前週比-51.4万バレルの6,168.6万バレルと減少に転じたことが、ポジティブ材料と評価されている。同地区の原油在庫が減少に転じたのは昨年11月以来のことであり、米国内の増産ペース鈍化を受けて、内陸部の在庫積み増しフローにブレーキが掛かった可能性がイメージされている。

現在の生産環境でクッシング在庫が本格的に減少するとは考えづらく、在庫の絶対水準としても明らかなだぶつき状態にある。このため、原油価格が年初来高値を更新するような相場展開は正当化しづらい。ただ、現在の原油市場ではファンドの強気スタンスが維持されており、強引にポジティブ材料を探す相場展開になっている。米産油量の増加、全米原油在庫の増加は特に材料視されなかった。また、為替市場でドル高是正の動きが継続していることも、ドル建て原油相場に対してはポジティブ材料になっている。

引き続き、「シェールオイルの減産兆候」と「足元の需給緩和」のどちらを重視するのかで決まる相場環境だと考えている。冷静に考えれば、シェールオイルの生産が日量数万バレル減少したとしても、大きな意味はない。それ以上にOPECからの供給が増えており、供給サイドで需給引き締め圧力が強まるような環境にはない。短期トレンドは明らかに上を向いているが、今後は高値是正の必要性が強く、下値不安の大きい価格水準と評価している。ただ、シェールオイル生産が当面のピークを確認するステージを迎えているのも事実であり、将来の需給均衡化を先取りする動きが加速する流れには注意が必要。投機筋の強気スタンスは、なお崩れていない。

画像
マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

小菅努の最近の記事