金融市場で急激な変動が発生、いったい何が起きたのか。インフレトレードの巻き戻しに巻き込まれた可能性
2日の東京株式市場では日経平均株価が2216円安となり、1987年10月20日のいわゆるブラックマンデーで3836円下げて以来の大幅な下げ幅となった。7月11日に42426円77銭まで上昇していたが、(引け値は42224円02銭)、2日のナイトセッションの日経平均先物は34800円となっており、高値から7000円近く下落した。いったい何が起きているのか。
2日のニューヨーク外為市場ではドル円が一時は146円42銭と2月上旬以来半年ぶりの円高・ドル安水準を付けた。ドル円は7月3日に161円台を付けており、そこから15円もの急落となった。
そして米10年債利回りをみると4月の4.7%台をつけたのをピークに低下基調となり、7月1日に4.5%台から7月24日に4.3%近辺低下後、低下ピッチを速めて、8月3日は3.8%割れとなった。
米国株式市場をみるとナスダック総合指数は、7月10日に18647.45ポイントを付け過去最高値を更新後、2日には16776.16ポイントに下落した。ダウ平均は7月18日に41000ドル台をつけたあといったんげらくしたが切り返して7月31日に再び41000ドル台を付けたあと大きく調整し、2日の引けは4万ドルの大台を割り込んでいる。こちらはいわゆるダブルトップを形成したようにもみえる。
たしかに7月31日あたりからの変動幅が大きくなっているのは確かだが、米国のナスダック総合指数や日経平均はすでに7月10日頃にピークアウトしており、米長期金利に関しては4月にピークを付けた後、低下基調となっていた。
ドル円に関しては米長期金利の低下による影響も大きく、連動した動きとなっていた。
金(ゴールド)のドルベースでの価格の推移をみても、7月17日あたりがピークになって下落基調となっていた。
これら一連の動きから読み取れるのは、いわゆるインフレトレードの巻き戻し、アンワインドが起きていた可能性がある。インフレトレードとはインフレを見込んで株式や商品、資源などといった、インフレに強い資産に投資する取引のことである。インフレで金利が上昇することに賭けて債券を売る動きもインフレトレードと呼ばれる。
7月からの特に米国市場での動きをみると、米国株式市場ではナスダックを中心に下落基調となり、米債は買い戻されて、金価格も下落している。インフレを見込んで株式や金などを買い、米債を売っていた向きの反対売買が起きていた。その動きが、米雇用統計などをきっかけにここにきて加速したといえる。それに東京株式市場も巻き込まれた可能性がある。
特に相場の地合が変わったのが8月1日であった。1日の米国株式市場ではFRBの利下げ期待よりも、雇用情勢の軟化や製造業の景況感悪化から景気が転機を迎えたとの見方を強め、利下げ期待で買われるのではなく、景気悪化が意識され売られたのである。当たり前だと思われるかもしれないが、それまでの米株式市場は多少の経済指標の悪化でも利下げ期待で買われる場面も多かったのである。
もうひとつ日本への投資については、日銀は簡単には利上げできないとの読みが働いたポジションの調整が加わった可能性がある。7月31日に日銀は政策金利を0.25%引き上げた。さらに追加利上げについても植田総裁は言及した。市場参加者の多くは現状維持を見込んでいたことで、これはサプライズともなったようだ。
このため、FRBの利下げ観測の強まりもあり、日米金利差が想定以上に縮小する可能性も意識され、円売りドル買いポジションの解消に走ったとみられる。この円高も東京株式市場には売り要因となった。
ただ、ひとつ解せないのが円債の動きである。債券先物をみると31日に日銀の利上げを受けて142円60銭まで下落した。ところがその後、8月1日には143円台を回復し引けは142円96銭、2日には143円80銭で引け、ナイトセッションでは144円81銭と急騰しているのである。
日銀が利上げしたにも関わらず、さらに追加利上げも示唆されたにもかかわらず、円債についても買い戻しの動きが強まったのである。
動きからみてこちらもショートカバーのような動きにみえる。日銀の利上げによってそれを予測して売っていた向きの買い戻しが入った、という単純なポジション調整だけとも思えない。
米債が買われていたこと、東京株式市場の大幅な下落によるリスク回避のによる安全資産としての債券買いなども入っていたとみられる。
それとともに買い控えていた国内投資家が慌てて買いを入れてきた可能性などもあるかもしれない。
そういえば前回のゼロ金利解除の際、2006年7月14日のことだが、この日の債券先物はいったん売られた後買い戻されていた。これも投資家の買いによるものとみられた(ただし翌日から売りも入っていたのだが)。