湖岸に氷の壁が出現 北米エリー湖で「アイス津波」発生
週末、アメリカとカナダの国境に位置するエリー湖の湖岸に、突如として氷の壁が出現しました。下の動画がその様子ですが、次から次に氷片が積み重なって、その高さが増していくのがわかります。
この影響で、住民に自主避難が呼びかけられたり、湖周辺の道路が閉鎖されたりしたようです。
こうした湖や海の氷片が、陸地に積み重なって押し寄せることを「アイス津波(Ice tsunami)」または「アイスシャブ(Ice shove)」と呼びます。アイス津波は氷なのでなかなか解けないために、被害が洪水よりも長期にわたることがあります。
アイス津波の起きる条件
アイス津波の起きる条件には、以下の3つが挙げられます。
まず1つ目は、湖岸や海岸が緩やかな傾斜を伴っていることです。緩やかであるほど、多くの氷片が陸の上を移動します。
そして2つ目は、氷が融解し始める時期であることです。
今冬エリー湖周辺は記録的な大寒波に見舞われ、今月1日時点では湖の90%以上が凍結していました。氷が最も張る時期の例年の平均は70.5%なので、普段の年よりも2割も氷が多かったことになります。
この例年を上回る量の氷が、このところの比較的穏やかな気温で割れはじめ、多くの氷片が湖に浮かんでいたのです。
最後に3つ目は、湖から陸へと向かう強風の存在です。
この天気図は24日(日)のものですが、発達中の低気圧に伴う寒冷前線がアメリカ北東部を移動していたことがわかります。最大瞬間風速30m/sの強風が観測され、車両横転、倒木、停電なども発生しました。
氷に覆われた民家
アイス津波は、時に陸の上を数百メートルも移動し、家屋を破壊したりすることもあります。轟音を立てながら民家に忍び寄るさまは、まるでホラー映画のワンシーンのようです。
下の動画は2013年5月カナダ・マニトバ州のドーフィン湖で起きたアイス津波の映像です。湖から吹く強風の影響で氷片が民家に押し寄せ、複数の家屋が高さ9メートルの氷で埋め尽くされました。住民によると、家はたった数分間のうちに壊されてしまったそうです。幸いケガ人は出ませんでしたが、その被害は甚大なものとなりました。
アイス津波はこれからの春先に多く発生する現象です。さらに先述したように、今冬は大寒波の影響で例年よりも湖の氷が多くなっているために、この先被害の拡大が心配されます。