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夏川りみ こんな「涙そうそう」は初めて――冨田恵一の一夜限りのアレンジで極上セッション

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/BS-TBS

夏川りみが名曲を3人のアレンジャー、凄腕ミュージシャンが揃ったスーパーバンドとセッション

アーティストと3人のアレンジャー、スーパーバンドが一夜限りのアレンジでセッション。それぞれの感性が交差し、新しい音楽が生まれる瞬間を捉える音楽番組『Sound Inn S』(BS-TBS)。4月15 日(土)放送回には、夏川りみが登場。代表曲「涙そうそう」を始め3曲を披露。3人のアレンジャーがこの日だけのために用意したアレンジで、夏川のボーカルはさらに輝きを増し、素晴らしいパフォーマンスになった。

冨田恵一のアレンジで名曲「涙そうそう」が生まれ変わる

冨田恵一
冨田恵一

「涙そうそう」は冨田恵一のアレンジで披露。こんな「涙そうそう」は初めて――様々なアーティストがカバーしているスタンダードナンバーだが、このアレンジを聴いたリスナーは誰もがそう感じるはずだ。それはリハーサルで夏川が見せた困惑している姿からも伝わってくる。イントロはホーンもストリングスも抑え目で、原曲とは異なる肌触りのアンビエントな空気が醸成されるアレンジだ。冨田は「琉球音階が使われている曲だけど、全編がそうではない。三線のフレーズにその特徴的な部分があったので、そこをイントロではフィーチャーしたいと思った。霧の中からだんだん具体的に見えてくるようなイメージ」と、アレンジのポイントを教えてくれた。

この特徴的なイントロに、これまでこの曲を数えきれないほど歌ってきた夏川が戸惑い、なかなか曲に入れなくて、演奏を止めてしまうシーンも。スタジオに一瞬緊張が走るが、それでも冨田とチェックした後は、圧巻の表現力で新たな「涙そうそう」を作り上げた。心を揺さぶる歌詞、ノスタルジックなメロディ。夏川の強く、優しく、温かな歌が、より解像度を増して伝わってくるアレンジに仕上がっている。

今や国民的ナンバーともいえるこの曲は、森山良子が作詞、BEGINに作曲を依頼して98年に発表した楽曲だ。夏川は2000年に開催された沖縄サミットで、BEGINがこの曲を歌っているところをテレビで観て衝撃を受けた。すぐにライヴに行って生で聴き、ますます「歌いたい」という思いが強くなった――そんな、この曲にまつわるストーリーも紹介されている。

「憧れだった」中森明菜の「セカンド・ラブ」を河野圭のアレンジで披露

河野圭
河野圭

2曲目は夏川が「小さい頃から憧れていた」中森明菜の「セカンド・ラブ」を、河野圭のアレンジでカバー。「元々テンポが速い曲よりバラードっぽい曲が好き」という夏川の言葉通り、美しいアレンジと相まってこの曲に広がる切なさを、よりドラマティックに立てる繊細な歌は感動的だ。「改めて、色褪せない曲だなって思いながら歌いました」。

「童神~ヤマトグチ~」は十川ともじのアレンジで、「幸せいっぱいの気持ちで歌うことができた」

十川ともじ
十川ともじ

3曲目は古謝美佐子が1997年に発表した「童神」をカバーして2003年に発売し、夏川の代表曲のひとつになっている「童神~ヤマトグチ~」を、十川ともじのアレンジで歌った。古謝にこの曲を歌いたいと伝えに行ったところ「たくさんの人に伝えて欲しいから標準語(=ヤマトグチ)で歌って」と言われたというエピソードも教えてくれている。古謝に孫が生まれた時に作ったというこの曲を十川は「原曲よりも“子供が起きないような”感じのアレンジを心がけました」と語り、夏川は「本当に素敵で、気持ちよく歌わせていただきました」と絶賛。

そんなどこまでも優しく柔らかなアレンジに乗せ、夏川の伸びやかでオーガニックな声が響き渡る。赤ちゃんをあやす仕草で、優しく語りかけるように歌っていた。「子守歌なので、やっぱり自分の子供の顔が思い浮かんできたり、母や兄弟の顔も浮かんできて幸せいっぱいの気持ちで歌うことができました」と語っていた。沖縄の自然と音楽が、夏川りみというシンガーを構成する絶対的なものだということが、歌から伝わってくる。

「みなさんが幸せになれる歌を、これからもたくさん届けたい」

全てのセッションを終えた夏川は「アレンジによって、いつもの曲の表情も雰囲気も変わって新鮮でした。私の声でみなさんを元気にしたいし、みなさんが幸せになれる歌をこれからもたくさん届けたい」と語っていた。そんな思いを胸に夏川は、7月から9月まで『夏川りみ コンサートツアー “たびぐくる”2023』で全国を回り、多くの人に幸せの歌を届ける

夏川りみのパフォーマンスが楽しめる『Sound Inn S』(BS-TBS)は、4月15日(土)18時30分~からオンエアされ、さらに番組放送終了と同時に「Paravi」で未公開映像と共に独占配信される。

BS-TBS『Sound Inn S』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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