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180試合連続先発出場記録が途絶えた“鉄人”岡田優介が狙うシーズン後半戦での究極の美味しいところ取り

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
まだ体調は万全ではないものの開幕から試合に出続ける岡田優介選手(筆者撮影)

【開幕5試合目で今季初シュートに成功!?】

 京都ハンナリーズの岡田優介選手が16日の大阪エヴェッサ戦で、今シーズン初めてシュートを決めた。岡田選手といえば、Bリーグでも屈指のシューターとして知られる存在。そんな彼がなぜ開幕5試合目までシュートを決められなかったか。

 答えは、至極簡単だ。エヴェッサ戦を戦う前の4試合で、岡田選手が放ったシュートはたった1本だけだったからだ。シュートを打たなければ、どんな素晴らしいシューターでもシュートを決めることはできない。

 そして彼が開幕からシュートを控えていたことも、大きな理由があってのことだ。

【左肩手術で180試合連続先発出場記録が途絶える】

 また岡田選手は、“鉄人”としても知られている。Bリーグ発足以来、一度も休むことなく先発出場を続け、昨シーズン終了時点でただ1人180試合連続先発出場を続けていた。だが今シーズンの開幕戦で彼は先発出場から外れ、遂に記録に終止符を打つことになった。

 実は昨シーズンの岡田選手は、左肩が思うように動かない状態でプレーを続けていた。シーズン終了後に診察を受け「左肩腱板断裂」と判明。5月終わりに修復手術を受けていたのだ。

 医療系サイトをチェックしたところ、肩腱板断裂修復手術を受けた場合、一般人でも通常のスポーツに完全復帰するまでに4~6ヶ月を要する大変な手術だ。ましてやプロのアスリートともなれば、シーズン開幕に間に合うかも微妙な状況だった。

【術後はバスケット生活から遠ざかる日々】

 岡田選手自身もバスケットどころか左肩の可動域が戻らない状態が続き、シーズン開幕に間に合うかどうか疑心暗鬼に陥っていたようだ。

 「つい1ヶ月半前までは本当に(開幕に合わせてプレーが)できるのかなと思ってました。手もほとんど上がらないし、まだ日常生活もままならない状態だったので半信半疑の生活ですごくじれったいし、なかなか良くならなかったです」

 術後当初はチーム練習に加われるような状態でもなく、1人黙々と先の見えないリハビリ生活を送っていた。ところが徐々に自身の中で光明が見え始めるようになっていった。

 「ちょっと見えてきたというか、何か行けるかもっていう兆しが出てきて、(シーズン開幕を)目指してみようかなと、1ヶ月くらい前にチームに合流した頃から思い始めました」

【ギリギリ間に合ったシーズン開幕戦】

 そして迎えた10月5日のシーズン開幕戦。岡田選手は先発から外れたものの、6分13秒の出場時間を得た。

 だが彼が実戦復帰したのは、開幕1週間前のシーホース三河との練習試合。その出場時間から窺い知れるように、左肩の状態だけでなく、選手としてのコンディションもまだまだ万全ではないのだ。浜口炎HCも、岡田選手に出場を確認しながら起用している状況だ。

 「学生時代から含めて、これほどバスケットをしなかったことはなかった。そういうシーズンを迎えるのは初めてだし、すべてが初めての挑戦です。

 (リハビリ生活中に)体重が少し増えて、身体の中に変化が起こって筋力が弱ったりだとか…。肩が少し良くなって動こうとなった時に、急に動いたために膝が痛くなったりだとか、いろんなところが痛くなってきちゃうんですよ。

 なので身体を絞って食事を全部変えて、身体を凄く変えているんです。それも初めての経験ですね」

 岡田選手は現在、パワーよりスピードを重視してベスト体重より体重を落とし、そこから実戦やトレーニングを積みながら筋力を上げていき、ベストコンディションに仕上げようとしている。

【先発よりも試合に出続ける大切さ】

 残念ながら前述通り、180試合連続先発出場という偉大な記録は途絶えてしまったが、岡田選手はまったく意に介していない。先発に関係なく試合に出続けることに大きな意味を感じているからだ。

 「出ることが大事であって、スタートかそうじゃないかはそんなに気にしていなくて…。そこは炎さん(浜口HC)が使ってくれたので、自分だけじゃできないことです。

 そこは信頼して使ってくれたことが有り難いですし、ケガなくちゃんと出たことに意味がありますし、僕自身180試合休まず出たことが大事なので、4シーズン目もそれが続いているというのは誇らしいことです。

 Bリーグ以前から自分のキャリアの中で、ケガで試合を休んだことが一度もなかったので、それを自分の中では続けていきたいなと思います」

 現在の岡田選手の体調を考えれば、無理に試合に出る必要はないのかもしれない。それでも岡田選手をコートに立たせるのは、浜口HCの岡田選手に対する敬意の表れであり、また体調万全ではないながらも起用したい信頼できる選手だということなのだろう。

【虎視眈々と狙う後半戦の美味しいところ取り】

 そうした状態の中、エヴェッサ戦で、岡田選手は今シーズン最長の14分49秒に出場し、計5本のシュートを放ち、2本の3点シュートを決めたのだ。彼にとって大きな前進といっていいだろう。

 「だいぶみんなが頑張ってくれたから、リードを保ったままプレーができたので、自分にとってはある意味いい調整になったというか、あまりプレッシャーを感じず自分が試合の流れの中でちゃんとアップダウンできました。

 こうした試合の感覚って試合でコートに入らないと戻ってこないのですごく良かったと思います。ただ最後はバテバテで(笑)、今は10分出たら結構息が上がっちゃうので、でも今日やったことで少し戻ってきたかなと思います。まだまだですけど…」

 まだ状態は「10%」と話す岡田選手だが、年明けには100%の状態でプレーできるようになればと考えている。それはシーズン後半戦で自分が必要とされる状況になると確信しているからだ。

 「前の3シーズンは後半戦で僕もチームも疲れてしまったので、後半戦で仕上げていくのもいいのかなと思っています」

 チームは開幕5連勝を飾り、今シーズンもチャンピオンシップを争う存在になるのは間違いない。

 チームにとって重要なシーズン後半戦で完全復帰し、シューターとして大事な局面でシュートを決め、チームをチャンピオンシップに導く。そんな究極の美味しいところ取りを、岡田選手は虎視眈々と狙っているのだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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