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チームづくりの核を失った滋賀レイクスが今最も必要としている「勝利」の2文字

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
滋賀レイクスから契約を解除されたルイス・ギルHC(筆者撮影)

【レイクスがまさかのルイス・ギルHCの契約を解除】

 BリーグのB1に所属する滋賀レイクスが11月16日、ルイス・ギルHCの契約解除を発表した。今シーズンのレイクスを知っている人物なら、小見出しにあるように「まさか」という思いを抱いているのではなかろうか。

 今シーズンに賭けるレイクスの本気度、思いは間違いなく本物だった。シーズン開幕前から早々にリブランディング及び新体制発表会を実施し、将来的に「日本一のクラブ」になることを目指していくことを高々と宣言していた。

 その過程としてBリーグが2026-27シーズンからスタート予定の新B1入りを果たすため、2024年10月から実施予定の新B1初回審査をクリアすべく、全力で邁進する姿勢をみせていた。

 そんなチームづくりの核にあったのが、昨シーズンから招聘しているギルHCによる3カ年計画だった。その柱と袂を分かつ決断を下したのだから、やはり驚きが大きかった。

【釜淵社長「解消しえない方向性の違いが生じたため」】

 もちろんギルHCの契約解除は、前述通りチームづくりの核を失うことになるわけで、まさにレイクスにとって苦渋の選択だったはずだ。

 前述の新体制発表会でも、ギルHCの下でチームは正しい方向に向かっており、今シーズンは更に歩を進めチャンピオンシップ(いわゆるプレーオフ)進出を目指すことを目標に掲げていた。

 釜淵俊彦代表取締役社長兼GMは、今回の決定について以下のようなコメントを発表している。

 「ルイス・ギル氏には、2012-22シーズンからここまで率いてくれたこと、そして、滋賀レイクスの土台となる『Team Identity First』、その上に立つ『Passion』、『Respect』、『Unite』というチームフィロソフィーに共感し、3年で優勝を争うクラブを作りあげる『3カ年計画』を共に歩んでくれたことに感謝いたします。

 しかしながら、この計画2年目である今季の目標『クラブ初のチャンピオンシップ出場』を成し遂げるべくチーム立て直しを図る過程において、チームフィロソフィーを実践する上で解消しえない方向性の違いが生じたため、契約を解除する決断をいたしました」

 釜淵社長の説明だけでは、ギルHCとの間に何が起こったのかまでは知り得ないところだが、レイクスとしては受け入れがたい事態が生じてしまったことだけは間違いなさそうだ。

【順調な滑り出しをしていたシーズン序盤】

 シーズン開幕してからのレイクスは本当に良い雰囲気を作り上げていただけに、今回のギルHCとの決別は本当に残念でならない。

 前述の新B1入りを目指す上で、レイクスのような低予算チームにとっては様々な高い壁ばかりが揃っている状態にもかかわらず、本気でそれに立ち向かおうとしていた。

 改めて説明しておくと、新B1加入への基準は主に3つあり、「平均入場者数4000名」、「シーズン売り上げ12億円」、「5000人規模の新アリーナの建設」と、新アリーナもさることながら、それ以外もこれまでレイクスが達成したことがない数字をクリアすることが求められていた。

 だが今シーズンのレイクスは、開幕から違っていた。

 会場に足を運んだ人々に質の高いエンターテインメントを提供すべくアリーナ内の会場演出を大幅に変更するとともに、新体制発表会に応援に駆けつけた西川貴教氏がホーム開幕戦のハーフタイムショーに登場するなど、様々な企画も用意していた。

ホーム開幕戦のハーフタイムショーに滋賀出身の西川貴教氏が登場(筆者撮影)
ホーム開幕戦のハーフタイムショーに滋賀出身の西川貴教氏が登場(筆者撮影)

 それを物語るように、バイウィークに入る前に実施されたホーム4試合の平均観客数は2689人に達し、昨シーズンの平均観客数(1501人)を大幅に上回ることに成功している。

 ちなみにここまで使用してきたウカルちゃんアリーナは3000人ほどで満員状態だったので、ほぼ9割近くの観客動員を続けていたことになる。まさに大成功といっていいだろう。

 この良い流れを継続していくためにも、あとは開幕スタートに失敗したチームが勝てるようになればと期待していたのだが…。

【さらにレイクスが盛り上がるためにもチームの勝利が必須】

 今後は保田尭之ACがHC代行を務め、チームを率いていくことになる。今レイクスに求められているのは、HCが代わってもチームの勝利しかない。

 釜淵社長によれば、今シーズンはチーム史上最高額の予算を投じチームを編成しているという。あとはコーチ、選手たちが経営陣の熱い思いにどれだけ応えられるかどうかにかかっている。

 開幕から作り出せた盛り上がりを継続させるためにも、バイウィーク明けのチームの巻き返しに期待したいところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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