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早くも年俸総額は1.9億ドル超え!積極補強を続けるエンジェルスは更なる補強ができるのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【オフ序盤から積極補強を続けるエンジェルス】

 まだオフシーズンに入ってから2週間ほどしか経過していないが、エンジェルスの積極的な動きが目につく。

 ペリー・ミナシアンGMはGMミーティング開催前日に、今オフでの大谷翔平選手のトレードを完全否定した後で、ドジャースからクォリファイング・オファーを提示されていたタイラー・アンダーソン投手と3年契約で合意。さらにツインズからトレードでジオ・ウルシェラ選手を獲得するなど、順調に戦力を補強している。

 さらに現地時間の11月22日夜になって、1対3のトレードによりブルワーズからハンター・レンフロー選手の獲得が発表された。

 このトレード成立前のエンジェルスの40人枠は投手が24人いる一方で(大谷選手を除く)、外野手が4人しかいなかったので、見事に実績ある外野手を補強することに成功している。

【今後のエンジェルスの補強策を予測】

 また今回のトレードで40人枠に1人分の余裕が生じており、今後もまだまだ補強を続けていくことになりそうだ。

 足りない戦力を順調に補強できているとはいえ、補強ポイントもまだ完全に補充できておらず、そこをしっかり補強していかないとポストシーズンを見据えながらシーズンを戦っていくのは難しいだろう。

 今回も外野手の補強に成功したものの、40人枠にまだ5人しかいないのは明らかに心許ない。しかも若手有望選手の中にもメジャーで起用できるような実績、成績を残している選手もおらず、やはり外部から補強しなくてはならない状況だ。

 そこで今後エンジェルスはどんな選手をしていくことになりそうなのか、そして選手補強にどれだけの予算が残っているのかを考えてみたい。

【更なる補強ポイントは先発投手とクローザー?】

 まずエンジェルスの更なる補強ポイントについて考えてみよう。

 ミナシアンGMは来シーズンも先発ローテーション6人制で臨むことを公言しており、そうなると先発投手がもう1人必要になってくる。ただしチェイス・シルセス投手が先発投手として7試合に起用され、ブレーブスからトレードされたタッカー・デビッドソン投手が8試合に先発登板していることを考慮すると、内部昇格の可能性もゼロではなさそうだ。

 先発投手以上に必要としているのがクローザーだ。昨オフはライセル・イグレシアス投手と4年契約を結びながら、シーズン途中でブレーブスにトレードしてしまった。

 それ以降は残りの中継ぎ投手陣が分業でクローザー役を担ってきたが、やはりシーズンを戦っていくには頼れるクローザーが必要になってくる。ある程度の経験値も必要なポジションだけに内部昇格は難しい(しかもチーム内の若手有望選手上位30人にもほとんどリリーフ投手がいない)。やはりトレードかFA市場で補強していくしかないだろう。

 さらに前述通り、もう少し外野手も補強しておきたいところだ。若手有望選手上位30人の中には外野手が5人しかおらず、しかんもそのほとんどが20歳前後で、2022年シーズンを3Aもしくは2Aに在籍していたのは1人しかいないことを考えると、やはり内部昇格を期待するのは難しいだろう。

【今オフもモレノ・オーナー下で年俸総額は2億ドル前後に】

 そこで注目しなければならないのが、そうした補強にエンジェルスがどれだけの予算を残しているかだ。

 まずシーズン終盤で浮上したチーム売却問題だが、現時点での米報道を見る限り、進展している様子は見られない。ということで今オフの補強については、アルテ・モレノ・オーナーの下で進められることが濃厚だ。

 すでに本欄をはじめ各所で指摘されているように、これまでモレノ・オーナーはぜいたく税の限度額を超えるのをできるだけ回避し続けた人物だ。現行のぜいたく税制度になった2002年以降でも、エンジェルスが限度額を超えたのは1度しかない。

 昨オフのMLBと選手会の労使交渉でも新しい統一労使協約にぜいたく税の限度額アップに反対した数少ないオーナーの1人だと報じられており、2022年シーズンも限度額が2億3000万ドルドルに設定される中、エンジェルスは19億299万61ドルでシーズン開幕を迎えている。

 チーム身売りを表明しているモレノ・オーナーが今オフ大幅に年俸総額を上げるとは想像しがたく、来シーズンの限度額が2億3300万ドルに設定されていることを考え合わせると、やはり最大に見積もっても2億ドル程度になりそうだ。

【現時点のエンジェルスの年俸総額は1億9000万ドル超え】

 といわけで、MLBのデータ専門サイト「FanGraphs」を利用し、現時点でのエンジェルスの年俸総額を調べてみたい。

 来シーズンの契約が保証されている選手は大谷選手を含め8選手おり、彼らの年俸合計は1億4618万8096ドルになる。そこに年俸調停権を有している8選手(今回トレドされたレンフロー選手も含む)の予想年俸を合計した3350万ドルを加えると、1億7968万8096ドルとなる。

 さらにホゼ・スアレス投手、レイド・デトマーズ投手ら年俸調停権取得前の選手たちともメジャー契約を結ばなければならず、来シーズンの最低年俸が72万ドルに設定されていることから、同サイトではこれらの合計額が1240万ドルになると算出しており、現時点の年譜総額は1億9192万8096ドルということになる。

 つまり2022年シーズン開幕時の年俸総額と比較すると、残っているのは106万1965ドル。仮に2億ドルまで年俸総額を上げたとしても、残高は807万ドル1904ドルしかないことになる。

 この残高では、FA市場から実績あるクローザー1人を獲得するのさえ、かなり難しいと考えざるを得ないだろう。

【モレノ・オーナーは決してケチではない】

 ちなみに日本のメディアの中には、大物FA選手の獲得に資金を出そうとしないモレノ・オーナーを“ケチ”と形容しているようだが。それは明らかに間違っている。

 2022年シーズン開幕時の年俸総額はMLB全体で10位であり、MLB平均を上回っている。しかも年俸総額がほとんどエンジェルスと変わらないアストロズ(1億9418万1925ドル)はワールドシリーズを制覇しているのだ。決して年俸総額をケチっているわけではないのだ(資料元「spotrac」)。

 果たしてミナシアンGMは、残りの予算をどのように有効活用していくのだろうか。それとも予算額を増やすため、大胆なトレードを目指していくのだろうか。今後の動向に注目していきたい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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