水原希子さん「日本のiPhoneだけシャッター音が鳴る」は誤り。「盗撮が多いから」は根拠不明
10月8日にAbemaTVで放送されたバラエティ番組『BAZOOKA!!! #17』にて、モデルの水原希子さんが「盗撮が多いから日本のiPhoneだけシャッター音が鳴る」といった趣旨の発言をしたことが「デマだ」と話題になっているため、調べてみました。
先に結論から述べると、「日本のiPhoneだけシャッター音が鳴る」は誤りです。「盗撮が多いから」は比較が難しいことから根拠不明としました。
iPhoneのシャッター音が鳴るのは日本だけじゃない。韓国も
まず、「日本のiPhoneだけシャッター音が鳴る」についてですが、多くの国ではシャッター音が鳴らない仕様ですが、日本と韓国ではシャッター音が鳴る仕組みです。
そのため、こちらは明確に誤りと言えます。
この「マナーモードでもシャッター音が鳴る」仕組みは日本では2000年に発売されたJ-PHONEの『J-SH04』からメーカー側の自主規制として始まり、韓国では2004年から65デシベル以上の音が鳴るように韓国情報通信部により定められたことから始まりました。
「盗撮が多いから」は検証できるデータがない
続いて「盗撮が多いから」についてですが、こちらは国別に比較するための検証に使えるデータがないためなんとも言えません。「その通り」とも「違う」とも言えないのです。
ひとまず、調べた情報をまとめておきます。
導入年の「盗撮」の件数がわからない問題
まず、日本で「マナーモードでもシャッター音」が始まったのは2000年(平成12年)からですが、警視庁のデータによるとこの年の迷惑防止条例違反での検挙件数は4,836件でした(平成17年発表のデータから過去の数値として参照)。
しかし、この迷惑防止条例違反には盗撮以外の検挙も含まれており、盗撮のみの件数とは言えません。
では、実際に「盗撮のみ」の検挙件数がどれくらいなのかと言うと、確認できる古いデータでは2010年(平成22年)の1,741件でした。
2000年のデータがわかれば良かったのですが、いまのところ筆者は見つけられていません。
導入は田代まさしさんの盗撮がきっかけ
ただ、「マナーモードでもシャッター音」の導入に盗撮が関係なかったわけではありません。
じつは『J-SH04』の開発に携わった方が、「きっかけは田代まさしさんが盗撮で捕まったこと」だとBuzzFeedNewsの取材で明かしています。
田代まさしさんの事例はビデオカメラでの盗撮でしたが、これからカメラ付きケータイ(ガラケー)が増えることを考えると、ケータイのカメラを使った盗撮の防止のために導入を決めたとのことです。
データがわからないのに「盗撮が多い」とは言えない
こうしたきっかけを知ると、「盗撮が多いからだ」と考える人もいることでしょうが、「多い」か「少ない」かを判断するための件数は、上記の通り不明です。
そしてiPhoneのシャッター音が鳴るのはメーカーが2000年に始めた自主規制を引き継いでいるからであり、「盗撮が多い」ことを理由に「iPhoneのシャッター音が鳴る」わけではありません。
このことから、「盗撮が多いから」は肯定も否定もできない根拠不明と結論付けました。
スマホの普及により盗撮の件数は増えているが……
その一方で、スマートフォンと盗撮に関係性がないわけではないことも取り上げておきます。
スマホが普及したことにより盗撮の検挙件数は右肩上がりに増えており、2011年は1,930件だったのに対し、2021年は5,019件と2倍以上になっています(参考:東京新聞)。
こうした背景を考えると、「盗撮が多いからシャッター音が鳴る」と思ってしまうのは仕方がないとも言えます。
しかし、繰り返しになりますがデータに基づかず自身の考えや体験だけでそのようなことを言うのは危うい行為です。
問題の発言は、AbemaTVの番組で出演されている女優が「日本で痴漢された」、「日本だけだと思います。痴漢って」と話すなか、スタッフが「盗撮って言うのも日本独特?」と質問した流れから出た言葉です。
日本にやってきて痴漢をされたという話のなかで、自身のそうした体験や日本のiPhoneはシャッター音が鳴ることに基づいて問題の発言が出たのでしょうが、スタッフが聞いて始まった話なのであれば番組側も事実かどうか検証してから放送するべきだったのではないかと思います。
11月1日23時57分修正
韓国の法律義務化の年度を2003年から2004年に、「法律の義務化」部分を情報通信部による規定に修正しました。