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「『詐欺師の娘』と言われた」LUNAが語る父・Mr.マリックへの思い

中西正男芸能記者
父・Mr.マリックへの思いを語るLUNA

 超魔術で一世を風靡したMr.マリックさんを父に持つラッパー・ミュージシャンのLUNAさん(38)。大みそかに放送された日本テレビ系「絶対に笑ってはいけないトレジャーハンター24時!」でもマリックさんと共演し仲良し父娘の顔を見せていましたが、ここまでの道のりは平坦ではありませんでした。「同じ家には住んでいますけど、中学に入るまでしゃべったことがなかった」という関係を経ての今。小学生の時には同級生から「詐欺師の娘」などという言葉も浴びせられましたが、同じエンターテインメントの世界に身を置くようになり「心から偉大だと思うし、素直にそう言える」気持ちになったと言います。

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一言もしゃべらない父娘

 ずっと同じ家には住んでいるんです。ただ、小さい頃から会話は全くないし、お父さんというよりも家にMr.マリックがいるという感じでした。抱っこをしてもらった記憶もないですし。

 確かに、私が小さな頃は一番忙しいというか、マジシャンとして世に出るための勝負どころの時期で、地方の仕事やテレビの仕事で家を空けることも多かったんです。そして家にいる時は、マジック部屋というか、自分の部屋にずっとこもってマジックの研究と練習をしている。

 挨拶もないし、その部屋には私も、ママも入れないし、家の中でマリックさんに顔を合わせても話すことはないので、気まずくて、パパが帰ってきたら会わないように、こちらも部屋に入って隠れるような感じになってましたね。

詐欺師の娘

 ただ、小学校くらいになると、いわゆる超魔術でパパがたくさんテレビに出るようになりまして。私には5歳上の兄がいるので、その兄が小学校にいた頃から、父親がマリックというのは学校の人たちは知っていたんです。

 なので、私が小学校に入ると、周りの子たちはパパの話を私に聞いてくるんです。一番、超魔術が話題になっていたころで、漫画にもなっていましたし、小学生からしたら、すごく興味のある対象だった。ただ、本当に家でも接点はないし「この前、パパとこんな話をしたの」とかいう事実が全くないので、答えようもない。

 また、当時はマジックというよりも、超魔術といって超能力的なイメージもあったので、私にも「超能力を使ってみろよ!」みたいなことも頻繁にありました。もっと直接的に「詐欺師の娘!」とか「ペテン師!」と言われることもあったし。

 これが、マギー司郎さんとか面白くて楽しいマジシャンの方の娘だったら、また違ったのかもしれません。だけど、パパの場合はマジックなのか、超能力なのか、そのボーダーを見せない感じでやっていた。それが周りの子から娘である私への風当たりを強くしたのかもしれませんね。

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認められるために

 そういった中で、友達と仲良くなるための策というか、自分もみんなと一緒で全然特別じゃないよと。それを示すために「こっちとしたら、やんちゃをするのも先頭切って行くよ!」という感じになって。悪さをするのも率先してやることで、周りから「お前、なかなかやるな」という感覚を持ってもらいたかったというか。それによって、コミュニティーに入るみたいな。

 それが中学生になると完全に覚醒して、いい感じの素行の悪さになってましたね(笑)。中学1年からからセンター街でたむろしてましたし、年間350日は家に帰ってなかったと思います。ケンカも頻繁にやってましたし。ま、それを続けていたら当然と言えば当然なのですが、通っていた中学も退学になりました。

 退学が決まった日、パパが初めて学校に来ました。そこで先生方の説明を聞いて家に戻り、初めてパパの部屋に入りました。そして、初めて会話らしい会話をしました。

やりたいことを見つけろ

 「行きつくところ、学校なんてどうでもいい。それよりも、お前は何がやりたいんだ。やりたいことを見つけないと幸せではない。もったいない。何か一つ、やりたいことを見つけて突き進みなさい。それがパパはマジックだった。それを見つけるようにしなさい」

 パパの部屋で言われたのが、こんな話でした。だいたい20分くらいだったと思いますけど、これまで話したこともないし、2人だけでそれだけの時間いたこともなかった。その中で言われた言葉はとても重たかったですね。

 もちろん、パパの思いを知ることができたところも純粋に心に響きましたし、自分の中の変化としては“鎧”みたいなのが一気に取れた感じもしたんです。これまで、ツッパっていたのは周りと仲間になるためというのと、マリックの娘ということで馬鹿にされたり、妙に近寄ってこられることを跳ねのけるための手段だった。

 それがこの日の言葉で不思議と取れたんです。「あ、好きなことをやっていいんだ」と思えたんですよね。それまでも歌が好きだったし、歌の方面のことをやれたらなとは思っていたけど、それよりも、ツッパって周りを跳ねのける方に力を使っていたというか。この日から少しずつパパとの関係性が変わっていきましたね。

 そこから高校には行かずにボイストレーニングをしたり、父のツテでニューヨークに音楽修行に行ったりとか、歌の世界に本格的に進んでいくんですけど、そうやって道を歩み始めると、分かってくることもたくさんありました。

父の凄み

 例えば、ずっと「家でマリックさんと同居している感じ」というのには理由があって、仕事が終わっても、あの格好のまま家に戻ってくるんです。だから、より一層、パパの感じがしないというか、距離が遠かった部分もあるんですけど、それもよく聞いてみると、とにかく一秒でも時間が惜しいから、仕事の衣装のままで帰宅して、そのまま自分の部屋でマジックの研究と練習に入るためだったんです。

 そして、子どもの頃は、朝の4時、5時まで私の部屋の横のマジック部屋からコインの音なんかが鳴っていても「まだやってるんだ」くらいにしか思わなかったんですけど、今、自分もプロの道を歩んでいると、マジックにしても何にしても、その道のトップに立つにはそれくらい努力をしないといけないんだということをひしひしと感じています。

 本当に24時間マジックのことを考えてますし、何気なく、打ち合わせでジュースを出してもらったとしても、そのジュースをジーッと見てるんです。ジュースで何かマジックができないかと。そして、実際に次の番組で本当にやっていたりもする。

 それと、私もステージで自分の出番の15分の構成を考えたりするんですけど、よく考えたら、パパはずっとテレビで2時間番組の構成を全部一人で考えてやっていたんだなと。ネタから見せ方からカメラワークまで全部パパが考える。そして、生放送で何一つミスがないように最後まで当たり前のようにやりきる。これは、今の感覚からすると、信じられない。15分の出番の構成でも考えるのが大変なのに、その何倍も大変なことをずっとやっている。すさまじいの一言だと思います。

プロとしての助言

 今から10年ほど前ですけど、テレビ局からオファーがあって、初めてパパと一緒に番組に出ることになったんです。パパのところに打診があったようなんですけど、パパはイヤとは一切言わずに「出演させていただきます」と答えたみたいで…。私も音楽活動をしていたので、頑張ってほしいと思ってくれたのか、ちょっとでも娘がやっている活動の助けになればと思ってくれたみたいで。

 一緒にテレビに出たりするようになってからは、共通の話題もできたので、さらに関係性が変わったというか、昔に比べると、圧倒的にしゃべるようにもなったし、近くなりましたね。

 今は心の底から偉大だと分かるし、素直に偉大だと言える。昔は、決して今のような感情ではなかったですけどね。フツーに「『ナポレオンズ』さんの方が面白いし」って言ってましたしね(笑)。

 細かいことかもしれませんけど「楽屋は最初に入った時と同じ状態にして帰りなさい」というのも教えてもらいました。ものすごくシンプルなことなんですけど、そういうのって、なかなか教えてくれる人もいない。仕事をちゃんとやるのは当たり前。それ以外のところで、ちゃんとしている思われないと次につながらないんだと。

 父の場合はずっとマリックでなければならないとい思いも強かったから、例えば、楽屋を汚したまま出たりしたら「マリックって、楽屋の使い方はだらしないんだよね」と言われやすいタイプの人でもあると思うんです。だからこそ、余計にそこを感じたんでしょうし、そこを私にも教えようと思ったんだろうなと。

 親孝行できることがあるとすると、私のライブに出てもらうことかなとも思っています。それがパパが一番喜んでくれることなのかなと。もしくは、逆に、こちらのステージでのイリュージョン的なことを考えてもらうか。松任谷由実さんとか、自分以外のステージのプロデュース的なこともやっているので、それをお願いするのも実は喜んでくれるのかなとも思っています。

 ただ、この前「笑ってはいけない―」で父のイリュージョンを体験したんですけど、イリュージョンの箱がかなり狭くて、それがとにかく大変で(笑)。あんなところにまた入るのは相当難しいし、最近、新しいイリュージョンを考えているようで、それがナイフを刺しても傷ついていないというようなものらしくて…。そうなると、それはまたいろいろ大変そうだし、私のライブでイリュージョンをやってもらうパターンは、もう少し考えてからにしたいと思います(笑)。

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(撮影・中西正男)

■LUNA(ルナ)

1980年5月24日生まれ。東京都出身。米・アポロシアターへの出演、ニューヨークでの音楽修行などを経てアーティストとしての活動をスタート。2008年には個人レーベル「LIL BOOTY RECORDINGS」を立ち上げ、15年にはオリジナルブランド「ViiDA」を設立する。昨年12月31日に放送された日本テレビ系「絶対に笑ってはいけないトレジャーハンター24時!」では父のイリュージョンで瞬間移動する役で登場。アマゾンプライムビデオで配信中のドラマ「東京BTH」(稲垣吾郎主演)にMr.マリックと父娘で出演している。また、約7年ぶりとなるニューアルバムも製作中。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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