アメリカのライブハウスと著作権管理団体事情について
前回の記事でJASRACとライブハウスの関係について書きました。アメリカも基本的に同じ仕組みです。違いは、アメリカでは、演奏権に関してはBMI、ASCAP、SESACと言う3つの団体があるという点です。うちはBMIの管理曲しか演奏できませんという運用は困難なので、ライブハウスは3つの団体と契約しなければなりません。
そして、日本と同様、アメリカでも著作権利用料を払う、払わないでもめることはあるようです(参照記事"ASCAP, BMI and SESAC Force Local Coffee Shop To Shut Down Live Music")。ミズーリ州のコーヒーショップが、月一のチャリティコンサートを行なっていたことを発見したASCAPの担当者が訴訟をちらつかせて年間600ドルの利用料を請求。それに応じると、BMIとSESACからも請求が来て、3団体合計で年間1,800ドルの支払いになってしまったそうです。月一のコンサートですので1回あたり150ドルということになります。席数が96席のコーヒーショップとしてはちょっと厳しいですね。結局、このコーヒーショップはコンサートを中止せざるを得なくなったようです。
ということで、この辺の事情は日本もアメリカも大同小異です。記事のコメントを見ても150ドルは高いというひともいれば、妥当と言う人もおり、トップ100のソングライター以外に利用料が還元されてないのが問題と言う人もいて、日本の掲示板とそっくりです。
ところで、この店はBGMを衛星ラジオで行なっている(著作権権利処理はラジオ側で行なわれます)ので、月一ペースのコンサート(しかもオリジナル中心)であれば包括契約ではなく楽曲ごとの支払にした方が安上がりになると思うのですが、どうもASCAP、BMI、SESACでは飲食店向けにはそのような仕組みがないようですね。
この記事と同じ条件(月1回演奏、席数96)で計算(客単価がわからないので仮に2,000円とします)ですと、JASRACの料金表の別表4で、「月間演奏時間が10時間までの場合の使用料は、該当する別表に定める月間 30 時間までの演奏の使用料の50/100 の額とする」の特例が適用されると思うので、包括契約で月11,000円となります。JASRACの方が安いです。さらに、前述のとおり、曲単位で料金を払えばはるかに安くなります。アメリカにおいては(ライブハウスではない)レストラン系の比較的広い店で月一だけコンサートというような形態が一番高くつくのかもしれません。
一般に、JASRACの利用料は米国と比較して高い(実際、毎日演奏するライブハウスの場合だと3団体合わせてもJASRACより安いです)と言われていますが、常に高いというわけではないようです。