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西山朋佳(24)女流王座戦五番勝負を制して女流三冠に 里見香奈(27)は四冠に後退

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 12月4日。東京・将棋会館において第9期リコー杯女流王座戦五番勝負第4局▲西山朋佳挑戦者(24歳)-里見香奈女流王座(27歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は17時12分に終局。結果は144手で西山挑戦者の勝ちとなりました。

 西山挑戦者は五番勝負を3勝1敗で制して、新女流王座となりました。これまで女王・女流王将と併せて、三冠を同時に保持することになりました。

 西山女流王座は現在、奨励会三段。現在の女流七大タイトル戦のうち、女性奨励会員が参加できる3つのタイトルを全て制したことになります。

 一方の里見前女流王座は清麗・女流名人・女流王位・倉敷藤花の四冠に後退しました。

里見、西山の2強時代に

 基本的に振り飛車党である両者。西山挑戦者は振り飛車で通したのに対して、里見女流王座は4局ともに居飛車で受けて立ちました。

 第1局は三間飛車で西山勝ち。

 第2局は三間飛車で里見勝ち。

 第3局は中飛車で西山勝ち。

 第4局は西山挑戦者が後手で、三間飛車を採用しました。対して里見女流王座は、本局では左美濃から銀冠に組み替える構えを見せました。

 昼食休憩前に里見女流王座が歩を突き捨て、軽く仕掛けてから戦いが始まりました。ほぼ互角の形勢が続いた後、戦場は次第に両者の玉近くへと移っていきます。西山挑戦者は飛車を切って銀を取り、いち早く里見玉に迫る態勢を作りました。

 里見女流王座は苦しい終盤戦を迎えます。しかし女流棋界の第一人者らしく、そう簡単に崩れません。辛抱強く粘っているうちに差が詰まって、形勢不明となりました。

 西山挑戦者の攻めが一段落したかというところで、里見女流王座はどうするか。こうした時の判断は難しいものです。里見王座はなお受け続ける順を選びました。

 西山挑戦者は里見女流王座の飛を追いながら急所に駒を据えていきます。ここで再び、形勢が西山よしに傾いたようです。

 里見女流王座は西山陣に龍(成り飛車)を置き、縦横と攻める態勢を築きます。しかし西山女王の寄せが一足速い。

 17時12分。里見女流王座は攻防ともに見込みなしと見て投了。総手数144手の熱戦に終止符が打たれました。

 これで女流棋界の七大タイトルは西山三冠、里見四冠にほぼ二分されることになりました。

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 西山新女流王座は現在奨励会三段で、参加できる女流棋戦が限られているため、この三冠保持がマックスとなります。

 西山新女流王座は初の女性棋士を目指しています。

 2019年度後期三段リーグは現在5勝1敗で2位グループに属しています。全18回戦の長丁場のリーグはまだ先が長いですが、西山三段が上位2人に入る成績をあげ、初の女性棋士となる可能性は相当に高まっていると言えるでしょう。

 一時は史上初の七冠全制覇が期待されていた里見四冠ですが、少し後退の形となりました。しかし依然、現女流棋界の第一人者であることに変わりはありません。来年1月からは谷口由紀女流二段を挑戦者に迎えて、女流名人戦五番勝負の防衛戦が始まります。

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将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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