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五輪便乗商法はどこまで許されるのか

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
(写真:アフロ)

クラウドワークス社による、五輪エンブレムをクラウドソーシングでつくるというネタ企画があっという間に中止になるという事件がありました(参照記事)。理由は明らかになっていませんが、五輪組織委側からのクレームがあったと考えるのが妥当でしょう。

その前には、セブンイレブンの一店舗が佐野エンブレムに類似したおでんポスターを作成して組織委に使用の可否について問い合わせたところ、許可されなかったという事件もありました(参照記事)(ただし、これは許可を取ろうとして断られることまで含めてのネタという気もします)。

一般に、オリンピックの便乗商法(アンブッシュマーケティングとも呼ばれます)は厳しく規制されます。商標権や著作権の侵害、あるいは、不正競争防止法違反のケースが禁じられるのは当然です。たとえば、TOKYO 2020という文字や五輪マークは既に広範囲の商品を指定して商標登録されていますので、これを無断で商売に使うことはできません。一方で、法的根拠が怪しい規制もあります。冒頭の例でも確固たる法的根拠があるかは微妙です。もちろん、組織委側が「お願い」をして、それに自主的に応じることは勝手です。

組織委側としては、少しでもオリンピックを連想させるような言葉の使用や行為は慎んでもらいたいでしょう。これは、公式スポンサーの利益を守るためです。以前も書きましたが、スポンサー収入により税金を節約できるという要素もあるのでこれは一概に否定できません。

しかし、法的根拠もないのに、たとえば、「日本応援セール開催中」、「xxxラーメンは味の金メダル」というような五輪を連想させるだけの言葉の使用を禁止できる権原があるのでしょうか?今はありません。しかし、ロンドン五輪の例を見ると、特別法の制定によって五輪便乗商法の厳しい規制が行なわれる可能性があります。

これに関連して2年前に弊所ブログで記事を書いていますので、以下に一部引用します。

ロンドンオリンピックでは、London Olympic Games and Paralympic Games Act 2006という特別法を立法しており、そこでは五輪マークの無断使用禁止やダフ屋行為の禁止に加えて、London Olympics Association Right(いわば「ロンドンオリンピックを連想させる言葉使用権」)という権利を定めて、オリンピックを連想させる言葉自体の商用使用を制限するようになっていたのです。

たとえば、オリンピック会場の近くで、公式スポンサー以外が、game、2012、gold、silver、bronze, London, medal、sponsor、summer等の表現の特定の組み合わせを宣伝で使うと罰金を課される規定になっていたようです。

公式スポンサーの利益を守ることは重要です。ただ、あまりに過剰な規制が行なわれてしまうと、たとえ法律的には根拠があったとしても、特に佐野エンブレムでのごたごたを考えれば、国民感情的に納得できないケースもでてくるのではないかと思います。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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