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沖縄県知事、政権側や忖度メディアの負け惜しみをバッサリ!「他の基地にも波及」と県民投票の会代表も警告

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
玉城デニー・沖縄県知事(左)と、「辺野古」県民投票の会の元山仁士郎代表 筆者撮影

 先週金曜の1日、沖縄県の玉城デニー知事と「辺野古」県民投票の会の元山仁士郎代表が、日本外国特派員協会(東京都・千代田区)にて会見。先月行われた、辺野古米軍新基地建設をめぐる沖縄県県民投票について語った。会見では、投票者の7割以上が「反対」の明確な意思を示した県民投票の結果を過小評価しようとする政権側や一部報道について、玉城知事と元山さんが批判。また筆者の取材に対し、元山さんは「沖縄の民意を無視するなら、辺野古だけではなく、他の在沖基地にも抗議運動が波及していくだろう」と語った。

◯政権側や忖度メディアの負け惜しみ

 先月24日に投開票された沖縄県民投票では、同県名護市の辺野古に、米軍の新基地を建設することについて、「反対」が43万4273票(72.1%)と圧倒的多数を占めた。これに対し、「賛成」は11万4933票(19%)にとどまり、「どちらでもない」も5万2682票(8.7%)という結果だった。

 だが、安倍政権側や一部のメディアは、負け惜しみするかのように、沖縄県民投票について過小評価する言動をしている。公明党の山口那津男代表は、先月26日の会見で「(得票数を、全有権者数で割った)絶対得票率で『反対』は38%程度にとどまった」「その他の思いというものがかなりあるという結果であった」と発言。産経新聞にいたっては県民投票の結果を伝える記事(先月26日朝刊)で「有権者6割が『反対せず』」「47.52%が棄権」との見出しを打った。読売新聞も「投票率52% 広がり欠く」と報じた(先月25日付けウェブ版)。NHKも、県民投票での「反対」の割合について、投票総数における72.1%よりも、絶対投票率での37.6%を強調した。

◯玉城知事、元山さんが反論

 これらの政治家、メディアの主張に対し、元山さんは「すごく不公平だな、と感じます」と語った。「絶対得票率ということであれば、自民党はどうなのかなとか、或いは安倍首相自身はどうなのかなとか、そういうところにも疑問が出てくると思います」(同)。

 なお、2017年衆院選での投票率は53.68%。比例代表における有権者総数は約1億609万人で、自民党の得票は約1856万票。絶対得票率では、17.49%だ。公明党の得票数は約678万票で、絶対得票数では6.57%に過ぎない。つまり、政権与党を合計しても、絶対得票数では24.06%。沖縄県民投票での「反対」の絶対得票率である約38%に遠く及ばない。県民投票を絶対投票率で過小評価するならば、政権側や忖度メディアにとっては「自ら投げたブーメランが自分に突き刺さる」ということであろう。

玉城デニー・沖縄県知事 筆者撮影
玉城デニー・沖縄県知事 筆者撮影

 玉城・沖縄県知事も「名護市長選が昨年2月にありましたが、その時の選挙結果について、菅義偉・官房長官は『選挙結果が全て』とはっきりおっしゃいました。(辺野古反対を掲げ昨年9月に知事選で勝利した)私の選挙も県民投票も、結果が全てです」と語った。さらに玉城知事は「今回の県民投票条例では投票資格者の4分の1を超えた結果について、県知事は尊重しないといけないと条文に書かれています。4分の1といえば25%ですね。(絶対得票率に基づいた「辺野古埋め立て反対」の得票率についての)NHK報道の37%という数字は、その4分の1も超えていることを明確に示しています」と強調。「(県民投票を呼びかけた)元山さん達の勝ちです」と微笑んだ。

◯在沖米軍の最重要基地への抗議に波及

 昨秋の県知事選、先月の県民投票と、辺野古埋め立て反対の民意ははっきりと示されたにもかかわらず、安倍政権は現在も辺野古埋め立てを強行し続けている。あからさまに民意を踏みにじることは、それこそ、沖縄の人々の国への帰属意識や、日米同盟そのものにも影響を及ぼすことになるのではないか。

 会見終了後、声をかけた筆者に元山さんは「県民投票に対する政府の対応によっては、この国のままでいいのか、と感じざるを得ない状況は生まれてくると思いますね」と語った。「それがどういうかたちになるかは、まだわからないですけども、辺野古新基地だけでなく、嘉手納基地に対してもプレッシャーをかけていく、ということになるかもしれませんし、私以外に大勢、そのようなことを言っている人々がいます」(元山さん)。

「辺野古」県民投票の会代表の元山仁士郎さん 筆者撮影
「辺野古」県民投票の会代表の元山仁士郎さん 筆者撮影

 「普天間米軍基地の移設先」としての辺野古新基地の建設については、滑走路の短さや海兵隊を沖縄に置くこと自体に必要性が低いとして、実は米軍関係者や米国の政治家・専門家達からも不要論があがっている。また在沖海兵隊も既にその大部分がグアムに移転し、残る第31海兵遠征部隊も、常に移動し、年間の約半分は沖縄にいないのだ。だから、辺野古新基地が日本への攻撃に対する「抑止力」になるかも疑わしい。だが、沖縄本島中部の嘉手納町、沖縄市、北谷町にまたがる米空軍嘉手納基地は、東アジア最大規模を誇る、在日米軍にとって最も重要な基地の一つだ。米国側からすれば、辺野古・普天間ごときで、嘉手納基地にまで地元からのプレッシャーが強まることは避けたいであろう。

◯民意無視が「沖縄独立」を招く?!

 また、玉城知事と元山さんの会見とは別の日、ある沖縄県の有力者は筆者に「我々の民意を国が無視し続けるのであれば、自治州としての立場あるいは日本からの独立ということを求めていくこともあり得る」と語った。「既に独立のみが我々の希望となるのでは、という声が広がりつつある」(同)。沖縄が日本から独立することになれば、あるいは独立に向けた動きだけでも、日本の周辺をめぐる地政学上の多大な変化を招くことは想像に難くない。

 安倍政権も、またいわゆる「本土」の人々も、沖縄の民意を決して軽く見るべきではないのだろう。

(了)

*本記事は「志葉玲タイムス」掲載記事を転載したもの。

https://www.reishiva.net/entry/2019/03/06/110319

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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