2018年ドイツの街ランキング 古都ヴュルツブルクがトップ10入りした理由
11月初旬、「2018年ドイツの街ランキング」が発表された。この調査は、コンサルタント企業IW ケルン、経済誌WirtschaftsWoche、不動産情報サイト大手Immobilien Scout24の3社による大都市での生活や職場事情をまとめたもの。経済力、デジタル化、不動産、将来性などを項目に挙げ、国内71都市を対象に行った。総合1位はミュンヘンだった。トップ10は以下の通り。
1位ミュンヘン
2位インゴルシュタット
3位ツュトゥットガルト
4位エアランゲン
5位ヴォルフスブルク
6位フランクフルト(ヘッセン州)
7位レーゲンスブルク
8位ウルム
9位ダームシュタット
10位ヴュルツブルク
上位4位は2017年と同じ街だった。昨年7位だったヴォルフスブルクと11位のヴュルツブルクは、順位を上げた。なかでも特に注目したいのはトップ10入りしたヴュルツブルクだ。
ロマンチック街道北端の歴史と文化の街
バイエルン州フランケン地方のヴュルツブルクは、マイン川両岸に広がる人口12万7千人ほどの街。中世より司教領として繁栄した街並みは、当時の面影を色濃く残す。現在は大学の街としてモダンで活気にあふれている。
ヴュルツブルクをイメージするなら、ロマンチック街道、世界遺産「レジデンツと庭園」、フランケンワインの地、シーボルト博物館などのキーワードを思い浮かべるだろう。
あるいは古城ホテル「シュタインブルク」に宿泊して、テラスから眺めるマイン川や街の景観に魅了された人もいるに違いない。
華麗なユネスコ世界遺産レジデンツ
世界遺産のレジデンツとマリエンベルク要塞、そして12人の聖人像が立つ全長180メートルのアルテ・マイン橋 (旧マイン橋) や旧市街の聖キリアン大聖堂、マリエンカペレなどもヴュルツブルクの象徴として人気のスポットだ。
レジデンツの建築プロジェクトの総指揮を執ったのは、ヴュルツブルクの宮廷建築家バルタザール・ノイマン。バロック及びロココ建築の大御所。レジデンツはヴェルサイユ宮殿をモデルとして建設されたそうだ。
日独文化のかけ橋シーボルト博物館
ヴュルツブルク生まれのフィリップフランツ・フォン・シーボルト(1796年2月17日―1866年10月18日)は、説明するまでもなく日本でも知られている人物だろう。ヴュルツブルク大学で医学を学んだシーボルトは、オランダの軍医として長崎入りをした。
江戸参府に同行し、医師として貢献した。日本についての研究書や植物や動物を紹介する本も出版しており、私生活では日本人女性との間に娘を授かった。
日独文化の架け橋かけ橋として存在感のあるシーボルト博物館は、1985年にシーボルトのライフワークと日本とのつながりを保存するために設立された。同館の1階(日本式)にはシーボルト家の歴史記録を展示、2階には、日本の歴史の紹介や特別展の展示など、日本の芸術と文化を紹介している。
ここでは定期的に講演会や演奏会も行われている。シーボルト協会長のウド・バイライス氏は、ヴュルツブルク大学時代に留学中の日本人学生と知り合いになり、今もその友人とは親交を深めているそうだ。そんな背景から、同協会長をボランティアで務めている。
フランケンワインの中心地
ヴュルツブルクはフランケンワインの中心地。最古のブドウ畑「シュタイン」が有名で、シュタインワインとも呼ばれている。街を代表するワイナリーはユリウス・シュピタール(教会所有)とビュルガー・シュピタール(市民所有)と州立ホーフケラー・ヴュルツブルク(バーデン・ヴュルテンベルク州所有)の3つ。これらのワイナリーではワイン試飲やショップでの購入、レストランも併設されており、ワインを満喫できる。
この地で栽培・醸造されるワインは、フランケンワインのトレードマークの平べったい形のボックスボイテルと呼ばれるボトルで知られる。このボトルの形状は、山羊の陰嚢(いんのう)や昔の水筒が由来という諸説があるようだ。
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今回見学したユリウス・シュピタールは、病院と介護施設を兼ねている。庭には古い立木や噴水もあり、市の中心地とは思えないほどの静寂さ。ここの病院で治癒する患者にも人気の散歩スポットだ。自家製ワインのレストランもある。
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2018年ドイツの街ランキングで、トップ10入りしたヴュルツブルク。その大きな理由として、まず注目されるのは若者の失業率の低さだ。世界最大の印刷機メーカーを筆頭に、自動車技術企業、大学と大学病院、あるいは個人企業や公共サービス業など安定した雇用先も充実しており、街を活性化させているようだ。
また、近年大都市でうなぎのぼりの不動産販売価格や家賃もここヴュルツブルクでは安定している。住宅不足はそれほど深刻ではないため住みやすい街としても高い人気を誇る。
ロマンチック街道ツアー中に立ち寄るヴュルツブルクという位置づけでなく、次回この街を訪れる時は、一味違った視点で見学すると街の印象も変わり、さらに面白くなるのではないだろうか。