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クレイトン・カーショーが人種差別問題に声を上げる覚悟を決めた日

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
人種差別問題に声を上げていく声明を発表したクレイトン・カーショー投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【カーショーが投稿した声明の中身】

 ドジャースのエース左腕クレイトン・カーショー投手が現地時間の6月18日、ツイッター上に以下の内容の声明を投稿した。全文を紹介する。

 「“どこかで起こった不公平は、あらゆる地域の公平を脅かす”──MLK(マーティン・ルーサー・キング牧師の略)

 明日はJuneteenth(Juneとnineteenthの合成語)で、1865年に(テキサス州で)奴隷制度の廃止が宣言された日(テキサス州では自由の日として公式の休日)です。しかし今日に至っても、我々の黒人の兄弟、姉妹たちは、日々不公平と向き合っています。我が国の歴史で続いている現実です。我々は立ち上がり、声を上げなければなりません。変化は対話から始まります。黒人の兄弟、姉妹と白人の兄弟、姉妹が一緒になって、進んで声に耳を傾け、そこから学び、時には難しい話題も話し合っていくしかありません。サイレンスでは(現状を)打開できないでしょう。我々は声を上げることを開始し、黒人の兄弟、姉妹のために立ち上がらなければなりません。自分は彼らの声を聞きたいし、そこから学びたいし、より良い行動をしたい、そして変わりたいと思っています。また自分の子どもたちも変わって欲しいと願っています。

 Black Lives Matter(黒人の生命は大切です)。自分は変化を促すため立ち上がることを約束し、自分から始めていきます」

【MLB界に広がる人種差別撲滅の動き】

 ミネソタ州で起こった白人警察官による黒人男性暴行死事件に端を発し、今も米国内では人種差別に対する激しい抗議活動が続き、今や新型コロナウイルスを上回る社会問題になっている。

 そうした声はスポーツ界にも広がり、多くのアスリートが声を上げ始めている。NBAのカイリー・アービング選手などは、今はこの問題に従事することが重要だとし、7月30日から再開予定のリーグに不参加の意向を明らかにしている。

 そうした動きはMLBも例外ではなく、トリイ・ハンター氏が現役時代にボストンを中心に人種差別的な中傷を受けていたことを明らかにし、オリックスのアダム・ジョーンズ選手も加わり黒人の現役選手、OBが集まり、人種差別に抗議するビデオメッセージを作成し、SNS上に投稿している。

【MLBを代表する白人選手の覚悟】

 これまでは被害者の立場である黒人選手たちが中心に声を上げてきたが、今回はMLBを代表する白人選手の1人である、カーショー投手がこうした声明を発表したことで、さらに大きな流れになっていきそうだ。

 カーショー投手はどちらかといえば大人しいタイプで、これまでオピニオンリーダー的に積極的に声を発するようなことはしてこなかった。そんな彼が憂いているほど、現在の米国の社会状況は深刻になっているという裏返しなのだろう。

 カーショー投手の今後の活動が、MLB、さらには社会にどんな影響をもたらしていくのだろうか。黒人選手が多数活躍するスポーツ界だからこそ、真っ先に変化を示していく必要があるのかもしれない。

 カーショー投手が人種問題で、先頭に立つ覚悟を決めたことだけは間違いない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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