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ツイッターで虚偽の事実を振りまく自民党議員。そうまでして派遣法案を通したいのだろうか?

佐々木亮弁護士・日本労働弁護団幹事長

現在、国会は重要法案などをめぐり攻防が激化しています。

派遣法案もその一つとなっております。

そんな中、ある自民党の衆議院議員がツイッターでびっくりする内容のツイートをしていたので、批判を込めて、少し説明したいと思います。

まず、次の画像をご覧下さい。

画像

これは井林たつのり議員(自民・衆院)のツイッターの画像です。

*批判されたからか、現在は何らの説明もなく削除されていますので、画像となります。

このツイートは嶋崎弁護士の下記記事から端を発したやり取りの一つのようです。

「同一労働・同一賃金」推進?~派遣法のどさくさ紛れに解雇自由化へ(定額¥クビ切り放題法)~(嶋崎量) - Y!ニュース

民主党を批判するためなのでしょうが、「自分たちが作ったんだから」と述べています。

そして、民主党を「オゾイ」(=「粗悪」という意味の静岡の方言らしいですね。井林議員は静岡の選挙区選出の国会議員です。)と罵っています。

次に、次の画像をご覧下さい。

画像

ここで目につくのは、

「民主党の法律ですから、ザルダラけ」

というところです。

おそらく井林たつのり議員がいう「民主党の法律」とは現行派遣法のことを指しているものと思います。

なぜなら、現行の派遣法は平成24年改正が直近の改正です。

このときの与党は民主党でした。

なので、「民主党の法律」と言っており、「ザル」だらけだと罵っているものと思います。

しかし、平成24年改正法は自民党も賛成して成立しています。

当時の報道でネットで確認できるものが、「しんぶん赤旗」の記事しかなったのですが、以下に引用します。

“使い捨て労働”を規制するまともな条項がない労働者派遣法改定案が28日の参院本会議で、民主、自民、公明などの賛成多数で可決、成立しました。日本共産党は反対しました。

出典:2012年3月29日(木)「しんぶん赤旗」

井林議員が口汚く罵っている「民主党の法律」は、たったの3年前に、現在の与党も賛成して成立していたのです。

従いまして、井林議員が指摘する「民主党の法律」というのは虚偽事実ということになります。

また、井林議員は、

「今のは、三年経ったら、正社員にする事が義務付け。ダメなら、派遣止めです。」

と記載しています。

これは現行法における派遣期間経過後の直接雇用申込義務(40条の3)を指しているものと思われます。

もしくは26業務の場合を指している可能性もあります(40条の5)。

いずれにしても、現行法のこれらの制度を批判していることがわかります。

しかし、これが導入されたのは小泉内閣の時(平成15年改正法の時)です(平成16年3月施行)。

当時の厚労省の説明が→改正労働者派遣法の概要 ~平成16年3月1日から 労働者派遣法が変わります~

その意味においても、先のツイートは全然トンチンカンな内容だということがわかります。

このような自民党の国会議員である方が、ツイッターという場であっても、多くの国民が目にする場(むしろ世界に開かれた場)において、明らかに虚偽である事実を垂れ流して、現行の派遣法を罵り、改正法の正当性を主張しているのですが、許される限度を超えたものと言っていいでしょう。

ちなみに、先の直接雇用義務はほとんど直雇用には役立ちませんでしたが、一応、正社員の道を開く制度でした。

当時の小泉内閣が期間制限の緩和をするのと引き替えに導入した制度です。

ところが、今回の派遣法案では、これさえも削除する法案となっています。

いずれにしても、こうした虚偽の宣伝を重ねて派遣法案を通そうというのは、アンフェアにもほどがあります。

今回の派遣法案は廃案とすべき

このように今回の派遣法は細い糸のような正社員への道(直接雇用義務)をも断ってしまう内容になっています。

その意味でも、明日(19日)の採決はすべきではありませんし、同日に本会議を通すなんてもってのほかと思います。

廃案とすべきです。

あと、民主党は言われ無き罵倒を浴びたのですから、怒った方がいいでしょうね。

では!

弁護士・日本労働弁護団幹事長

弁護士(東京弁護士会)。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団幹事長(2022年11月に就任しました)。ブラック企業被害対策弁護団顧問(2021年11月に代表退任しました)。民事事件を中心に仕事をしています。労働事件は労働者側のみ。労働組合の顧問もやってますので、気軽にご相談ください! ここでは、労働問題に絡んだニュースや、一番身近な法律問題である「労働」について、できるだけ分かりやすく解説していきます!2021年3月、KADOKAWAから「武器としての労働法」を出版しました。

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