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ブラピも、ブラッドリー・クーパーも。アルコール依存を克服したセレブたち

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ブラッド・ピットは子供たちとの面会、親権獲得のために酒をやめた(写真:ロイター/アフロ)

 元TOKIOの山口達也が、酒気帯び運転で事故を起こし、逮捕された。幸いけが人は出ていないとのことだが、2年前、女子高生にわいせつ行為をした時に「酒を飲んでいて覚えていない」と言ったことなどもあり、依存症が疑われているようだ。これを受けて、メディアには、依存症治療の必要性を訴える記事が見受けられる。

 飲酒運転や依存症についてのニュースは、ハリウッドでも昔からよく聞かれてきた。パリス・ヒルトンやミシェル・ロドリゲスは刑務所生活も体験することになったし、逮捕時に運転していたのは夫ながら、酔っ払ったまま警官にはむかったリース・ウィザスプーンは、人生最大の恥をかくことになっている。メル・ギブソンも、逮捕時に警官に向かってユダヤ人差別発言をし、その後しばらくハリウッドから追放された。

 そんな中にはまた、自分の意思で、あるいは強制的に、問題を克服して新たな人生をつかんだというポジティブな話もある。最近では、ブラッド・ピットがそうだ。

 大学を出た頃から、タバコ、酒、マリファナなど、「常に何かに頼っていた」と認める彼は、子供をもったことをきっかけに、酒以外はすべてやめた。それでも、アンジェリーナ・ジョリーから見れば飲み過ぎだったようで、それが理由のひとつとなって彼女から離婚を申請される。子供との面会条件にもランダムな検査が義務付けられ、親権争いで共同親権を勝ち取るためにも酒をやめることは必須だったことから、すっぱり断念。アメリカ版「GQ」で、彼は、「僕はワインが大好き。自分のワイナリーももっている。でもそこからちょっと離れないと」「僕はプロの酒飲みだったが、もうあんなふうには生きたくない」と語っている。

 断酒を考えたピットがアドバイスを求めたのは、経験者であるブラッドリー・クーパーだ。20代の頃のクーパーは、プレッシャーや不安、自信のなさから、相当に酒を飲んでいた。飲み会で酔っ払いすぎてしまい、コンクリートに頭を打ち付けて病院に運ばれたこともあったという。友達からも「もう少し控えれば」と心配されたが、「それを信じる気持ちもあったし、信じたくない気持ちもあった」そうだ。だが、29歳にしてついに決意し、以後、酒とはまったく無縁である。

更生施設を出て、また戻ることも

「ハイスクール・ミュージカル」でティーンのアイドルになったザック・エフロンも、そのイメージから脱却しようと立て続けに映画に出演する中で燃え尽き、酒とドラッグを多用するようになっていった。それが仕事に支障をきたすようになった時、彼は自ら更生施設に入所し、治療を受けている。カントリー歌手キース・アーバンも、2度更生施設に入ったが、2度とも、また元の鞘に戻ることになってしまった。完全にやめることができたのは、ニコール・キッドマンの支えのおかげが大きかったようだ。キッドマンは、アーバンと結婚するにあたり、婚前契約書に、彼の依存症が理由で離婚になった場合、彼があまりお金を受け取れないという条件を入れたとも報道されている。

 ベン・アフレックも、何度か更生施設のお世話になった。アフレックは祖父母が4人ともアルコール依存症で、祖母のひとりと叔父はそのせいで自殺をしている。父も依存症で、アフレックもまだ青年の時に一度、更生施設入所を考えたそうだ。実際に初めて入所したのは、2001年。出てきた後は、「普通の人程度に」飲むようになったが、そのうちまたどんどん増えていき、「カウチで寝てしまうまで」飲んでは潰れるようになった。そして2017年に再び更生施設に入所、一度出たが、2018年にまた入所している。そんな彼は、今年、依存症のためにすべてを失った男性が主人公の映画「The Way Back」に主演した。彼の弟ケイシーもかつて同じ問題に悩み、今は酒をやめている。

 ナオミ・キャンベルも90年代から2005年頃にかけてアルコールとドラッグの依存症に悩み、断酒会グループAA(Alcoholics Anonymous)のミーティングに参加するようになった。2017年、「Fortune」の「最もパワフルな女性」のひとりに選ばれたキャンベルは、そのサミットで、「アルコールとドラッグの依存症は差別をしない。どんな人生を送っている人にも危険はある」と述べている。

 ほかにも、トビー・マグワイア、ユアン・マグレガー、ジョン・グッドマン、ロブ・ロウ、ジェラルド・バトラーらが克服を果たした。かなり前に酒をやめたバトラーは、近年、処方薬に走りそうになったが、先回りして自ら更生施設に入っている。新型コロナのロックダウン中にも、「飲みたいと感じたこともあったが、手を出さないですんだ」と、彼は語っている。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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