「道端の餓死こそ多くないが…」深刻さを増す北朝鮮の危機
親に捨てられたり、食べ物を求めて家を出てストリート・チルドレンとなってしまった子どもたち。北朝鮮では「コチェビ」と呼ばれるが、そんな子どもたちが急増したのは1990年代後半の未曾有の食糧危機「苦難の行軍」のころのことだった。
それから20数年。苦難の行軍の当時ほどではないとは言われるが、コロナ鎖国による深刻な不況、食糧難に陥っている北朝鮮では、再びコチェビが急増している。
咸鏡南道(ハムギョンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、最近になって、工業都市であり鉱業も盛んな端川(タンチョン)市内で、コチェビが増加していると伝えた。ほとんどが10代で、駅前、市場周辺、道端をうろついているという。自分が食べるだけで精一杯の一般市民は、助けの手を差し伸べることすらできない。
「最近は誰も彼もが1日3回の食事を調達するのに戦争を繰り広げている。子どもたちがまともに食事にありつけず、寝るところもなく、空腹と寒さにふるえているが、人々は同情するだけで何もしてあげられない」(情報筋)
コチェビたちは1日1食にもありつけない状況のようだ。以前なら市場などで物乞いをしていたが、それでは何も得られなくなったため、市場周辺の家に忍び込んで空き巣を働いている。
「道端で餓死する人が多くないだけで、コチェビが増え(1990年代後半の大飢饉の)苦難の行軍を彷彿とさせる」(情報筋)
(参考記事:「街は生気を失い、人々はゾンビのように徘徊した」…北朝鮮「大量餓死」の記憶)
助けの手を差し伸べるべきは、朝鮮労働党端川市委員会や端川市人民委員会(市役所)だが、手をこまねいて見ているだけだ。中央からはコチェビ対策に関する指示が下されているが、中等学院(コチェビ収容施設)に収容しても、面倒を見るだけの財政的余裕がなく、放置しているのだろう。
市民はこんな状況について「本来なら親に守られて何の心配もなく遊んで成長すべき年頃の子どもたちが、コチェビに転落し放浪生活をして、泥棒までしているのは、国が放置しているからだ」と当局を批判する声が上がっていると情報筋は伝えた。
そんなコチェビたちを見た端川市民は、国の未来と家族の明日を心配し、ため息をつくばかりだという。