クリエイターを搾取しているのはSpotifyではなくレコード会社だった
テイラー・スウィフトなどのアーティストがSpotifyはアーティストに正当な支払をしていないとして、楽曲を引き上げてるというニュースが聞かれます。
しかし、米ブログメディアTechDirtの記事"Yes, Major Record Labels Are Keeping Nearly All The Money They Get From Spotify, Rather Than Giving It To Artists"によると、Spotifyの有料会員売上の大部分がレコード会社に回っているようです。アーティスト(実演家)の取り分は7%以下にすぎません。作詞家・作曲家の取り分(日本でいうとJASRACに相当)も10%です。税金とSpotify自身の取り分を抜いて考えると、残りの73%をレコード会社が、16%を作詞家・作曲家が、10%を実演家がという計算になるようです。
この調査結果は監査法人のErnst & Youngがフランスの音楽業界団体SNEPのために作成したものだそうなので、内容的には一応の信頼がおけるといってよいでしょう。
レコード会社がある程度の金を取らないといけないのは理解できます。音楽を売るためには宣伝費等にそれなりの経費がかかりますし、音楽に限らずショービズの世界は当たり外れが激しいので、投資リスクを回避するにはある程度の資金をプールしておかなければなりません。レコード会社に資金があることで、すぐには売れそうもないアーティストも活動を続けることができ、文化としての音楽産業に幅が生まれるとも言えます。
問題は、このような状況が、当事者が納得済みの市場原理で決まったものなのか、過去のレコードの製造(音楽制作ではなくレコードやCDを作ること)や流通に多大なコストがかかっていた時代に生まれた既得権がそのまま硬直化しているものなのかということです。
最終的には、メジャーなアーティストは自分のコントロール下にレコードレーベルやエージェントを持ち、マイナーだがコアなファンを持つアーティストはクラウドファンディングなどでファンとより直接的に結びついていくという方向になっていくと思いますが、そのような「バリューチェーン」の変革が起こるには思ったより長い時間がかかるかのかもしれません。