2020年時点で87万人…「ニート」数の推移と現状をさぐる(2021年公開版)
「ニート」の概念とその実数推移
先日発表された労働力調査の結果を基に、いわゆる「ニート」に該当する「若年無業者」の動向を分析する。日本ではどれほどの人数なのだろうか。
「ニート」は「NEET(Not in Employment、Education or Training)」の日本語読みをしたもの。そのまま直訳すると「就業、就学、職業訓練のいずれもしていない人」となる。内閣府が毎年発表している子供・若者白書では類似概念の「若年無業者」と表現しているが、その定義は「15~39歳の非労働力人口(状況をかんがみて求職活動をしていない人など)のうち、家事も通学もしていない人」(値算出の一次ソースとなる労働力調査でも「若年無業者」に関する精査は行われているが、そちらでは15~34歳が対象となっている。ただし同条件で35~44歳の人に対して「35~44歳無業者」との定義を行い、「若年無業者」と同じ項目で取り扱いをしている)。求職活動と職業訓練はまったくの同一ではないが、当事者の意志としてはほぼ同じであり、「若年無業者」と「ニート」は大体同列のものと見なしてよい。
その「若年無業者」の推移は次の通り。
直近2020年ではニート数は87万人で記録のある1995年以降では最大の人数。前年からの動きを見るに、15~24歳の層での大幅増が全体数の増加に影響している。特に15-19歳の前年比10万人増が極めて大きい。この動きは飲食業などのパート・アルバイト先が新型コロナウイルス流行によって時間短縮営業や休業となり、職を失った若年層が、ニートとなったことによるものと考えられる。新型コロナウイルスの流行がニートの増加を生み出すという流れは、注目に値すべきものだろう。
2001年から2002年にかけて有意に値が増加しているが、この原因は不明。タイミングも含め、2002年度から開始された学校完全週5日制との関連を指摘する論文も見受けられるが、因果関係までは分からない。
2017年発表の子供・若者白書までは参考値としてのみ提示され、「高齢ニート」との暫定的な定義をしていた35~39歳だが、2002年に全体数が大きく増加したのとほぼ同じタイミングで大きく増加し、2009年・2010年・2012年には最大値の21万人に。2013年以降にようやく減少に転じた雰囲気を示している。
ニート状態となる・ならざるを得ない理由
子供・若者白書では「若年無業者」について、「仕事につきたいけれども求職活動をしていない(就業意欲はある)」「仕事につきたくない・つけない(就業意欲が無い)」それぞれの立場において、その理由を提示している。大本のデータは「就業構造基本調査」からのもので、5年おきの調査のため、最新値は2017年調査分。原典となる「平成29年就業構造基本調査」から詳しい値を抽出し、グラフを作成する。
「就業希望者のうち非求職者」の場合、現在病気やけがで求職がかなわない事例がもっとも多く33.6%。次いで「知識・能力に自信が無い」が11.9%、「急いで仕事につく必要が無い」が7.3%と続く。一方、就業そのものを望んでいない人(非就業希望者)も病気やけがによるものが最多で33.4%。次いで仕事そのものへの自信が無いとする人が6.9%。さらに学校以外で進学や資格取得などの勉強中だから就業を希望していないとの人が6.6%。他方、「特に理由は無い」を考察に加えると、病気やけがによるものに続く第2位の理由となっている。
内容を項目別に精査すると、
・「病気・けが」などは仕方が無く、回復すれば容易にニート状態から脱せられる可能性は”比較的”高い。
・「学校以外で勉強をしている」などは先を見据えた上で自らその立場についている「若年無業者」であり、問題視されている「ニート」とは本質的な意味合いが異なる。
・「急いで仕事につく必要が無い」「特に理由は無い」は、世間一般的に語られる「ニート」の筆頭に挙げられる。
・「探したが見つからない」「希望する仕事がありそうに無い」「知識・能力に自信が無い」は、「個人の問題(努力不足、現状認識不足など)」「雇用環境の問題」双方の可能性、あるいは両方の複合的な結果による場合があり、一概に振り分けるのは難しい。
などとなり、ひとくくりで全部を「ニート」とまとめるのには問題があることが分かる。また、両パターンで「その他」の回答が多いことから、さらに提示項目だけでは説明しきれない、個々の多様な事情も考えられる。
今件の「若年無業者(ニート)」問題は「ニートの状態とは、そもそも何が問題なのか」といった根本部分から考察し直す必要があり、そして解決は一筋縄ではいかない。その実態が、今回のデータからあらためて想像できよう。新型コロナウイルス流行によるものと思われるニート数の大幅な増加が、今後も継続することになるのか、注意深く見守りたいところだ。
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