現役夫婦世帯の負債額と住宅ローンの負担の実情をさぐる(2024年公開版)
就業者がいる夫婦世帯の負債額や住宅ローンの負担はどのような状況なのだろうか。世帯主の年齢でどこまで違いが生じているのか。その実情を総務省統計局の調査の一つ「家計調査」の貯蓄・負債編における公開結果から確認する。
今件における「勤労者世帯」とは、世帯主が就業者の世帯を意味する。ただし社長などの役員は「勤労者以外」と定義されている。例えば世帯主が会社役員、個人営業、無職(年金生活を営み、世帯主が働いていない場合も含む)などの世帯は今件では勘案されていない。
次に示すのは世帯単位での負債額。2007年において複数の年齢階層、特に29歳以下・30代が負債を大きく増やしているのが確認できる。
2007年の全体的な貯蓄の減少・負債の増加は、景気の急激な悪化(いわゆる「金融危機」)に対する影響が一端にある。そして2010年においては再び似たような状況が生じている。2011年には40代でやや改善されたが、2012年には30代とともに再び跳ねる形で上昇。これが全体平均値をも底上げしている。さらに2013年に入ると元々高い額を維持していた40代以外で有意な上昇の動きが確認できる。
これは主に住宅ローンによるもの。2013年は消費税率の引上げが2014年4月に開始されるため、それをひかえて住宅の駆け込み需要が発生している。その影響で住宅をローンで購入する人が増え、結果として平均的な負債も増えた次第。
2014年に限ると29歳以下で急激な負債額の増加が確認できる。これは調査対象母集団における29歳以下の持家率が1年で約1.5倍に増加したのに伴い、住宅ローンによる負債額が増えたのが主要因。2013年と2014年における、年齢階層別持家率を比較すると、その実態がよくわかる。また30代も持家率が漸増の動きにあり、負債額を増加させている主要因であることが確認できる。
2019年では29歳以下の値が急増しているが、これもまた持家率の増加によるところが大きい。もっとも2020年では29歳以下の値は急落しているが、持家率は逆に増加しており、単に金銭的に余裕が出てきたものと思われる。そして直近2023年では29歳以下・30代・40代での急増が確認できるが、これもまた持家率の増加によるものだと考えられる。
30代の長期的な、そして20代でも2014年以降に見られる持家率の増加傾向は、住宅取得願望の高まりによるものだろう。
その住宅ローンに該当する、住宅・土地のための負債額動向を示したのが次のグラフ。
額こそ異なるものの負債額と住宅・土地のための負債額は、各年齢層毎の挙動がほぼ一致している(2011~2013年の30代~40代、2013~2014年の29歳以下、そして直近2023年の動きが顕著)。これらの動きから、29歳以下・40代の層が2006~2007年に、少々背伸びをして住宅を購入したのが推測できる。2013~2014年の29歳以下、2023年の動きもまた、住宅購入によるものと考えるのが道理である。
見方を変えると、各世帯における負債の大部分は住宅ローンで占められていると考えても間違いではない。グラフ化は省略するが、実際その通りの値が調査結果から示されている。例えば年齢的にほとんど住宅ローンを返済し終えた(あるいはいるはずの)60歳以上の世帯は、負債をあまり抱えていないのが実情ではある。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
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