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現役夫婦世帯における純貯蓄額の実情をさぐる(2024年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
就業者がいる夫婦世帯における、貯蓄額から負債額を引いた純貯蓄額を算出(写真:イメージマート)

就業者がいる夫婦世帯のお財布事情はどのような状況なのだろうか。総務省統計局の調査の一つ「家計調査」の貯蓄・負債編における公開調査結果を用い、貯蓄額から負債額を引いた純貯蓄額で実情を確認する。

今件精査の対象となる「勤労者世帯」とは、世帯主が就業者の世帯を意味する。ただし社長などの役員は「勤労者以外」と定義されている。例えば世帯主が会社役員、個人営業、無職(年金生活を営み、世帯主が働いていない場合も含む)などの世帯は今件では勘案されていない。

二人以上世帯のうち勤労者世帯、つまり原則的に就業者がいる夫婦世帯においては、全体で4割近くが住宅ローンを支払い中の持家世帯となっている。年齢が上になるに連れローンを完済した状態の人の割合が高くなる。

↑ 持家率(二人以上世帯のうち勤労者世帯、世帯主年齢階層別・住宅ローン状況別)(2023年)
↑ 持家率(二人以上世帯のうち勤労者世帯、世帯主年齢階層別・住宅ローン状況別)(2023年)

住宅ローンの金額を考えれば、世帯による負債の大部分が住宅ローンには違いない。そこで純貯蓄額を算出すると、負債の負担が小さい、そして経年による蓄財の大きい高齢層の方が高い値を示すことになる。

↑ 純貯蓄額(貯蓄額-負債額)(二人以上世帯のうち勤労者世帯、世帯主年齢階層別、万円)(2023年)
↑ 純貯蓄額(貯蓄額-負債額)(二人以上世帯のうち勤労者世帯、世帯主年齢階層別、万円)(2023年)

↑ 純貯蓄額(貯蓄額-負債額)(二人以上世帯のうち勤労者世帯、世帯主年齢階層別、万円)
↑ 純貯蓄額(貯蓄額-負債額)(二人以上世帯のうち勤労者世帯、世帯主年齢階層別、万円)

特に「背伸びで住宅を購入した29歳以下・30代」は2006年ぐらいを境に、純貯蓄額がマイナスに落ち込んでいるのが目立つ。住宅ローンは表現を変えれば「住宅に形を変化させた蓄財の証」で、一概に「負債だから悪しきもの」との評価には違和感もあるが、それでも毎年一定額をローン返済に回されるのは、精神的・金銭的なプレッシャーとなるのには違いない。

2014年では29歳以下が大きく下がっているが、これは住宅ローンの負担が増えた結果によるものである。

↑ 持家率(二人以上世帯のうち勤労者世帯、世帯主年齢階層別)
↑ 持家率(二人以上世帯のうち勤労者世帯、世帯主年齢階層別)

また、2014年以降は40代もマイナス圏の仲間入りとなっている。40代においても住宅ローンによる負荷が増してきた結果の動きに違いはない。

各種値の動向でやや気になるのが、29歳以下の若年層における傾向。そこで「二人以上の世帯のうち負債保有の勤労者世帯」(≒住宅ローン保有世帯)から、若年層のみを抽出したのが次のグラフ。

↑ 住宅・土地のための負債額(二人以上世帯のうち負債保有の勤労者世帯、世帯主年齢階層別(一部)、万円)
↑ 住宅・土地のための負債額(二人以上世帯のうち負債保有の勤労者世帯、世帯主年齢階層別(一部)、万円)

↑ 純貯蓄額(貯蓄額-負債額)(二人以上世帯のうち負債保有の勤労者世帯、世帯主年齢階層別(一部)、万円)
↑ 純貯蓄額(貯蓄額-負債額)(二人以上世帯のうち負債保有の勤労者世帯、世帯主年齢階層別(一部)、万円)

2014年における29歳以下の動向のように一部イレギュラー的な流れはあるものの、「29歳以下…2007~2008年以降は住宅取得の負債、純貯蓄額は横ばい。2014年で住宅取得の負債は大きく増加し、それ以降もさらに増える傾向」「30代…住宅取得の負債は漸増、純貯蓄額はさらにマイナス化」の動きを示している。また直近2023年では、29歳以下が相当無理をしているようすがうかがえる。若年層の住宅取得において、ますます懐への負担が大きくなっているようではある。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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