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オートバイのあれこれ『角Zの第一号・Z1-R』

Rotti.モトエンスー(moto enthusiast)

全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。

今日は『角Zの第一号・Z1-R』をテーマにお話ししようと思います。

現在も高い人気を誇る、カワサキの空冷Zシリーズ。

『Z1』に始まり、『GPz1100』に至るまで様々なZが現れてきたわけですが、今回は『Z1000Mk.Ⅱ』や『Z400FX』等で有名な「角Z」の初号機となった『Z1-R』にフォーカスしてみます。

◆「角Z」のはじまり

▲Z1-R〈1978/画像引用元:川崎重工〉
▲Z1-R〈1978/画像引用元:川崎重工〉

Z1-R最大の見どころは、なんといってもその外観でしょう。

画像のとおり、ポリゴンチックな角形デザインとなっていますね。

カワサキは1972年にZ1(900SUPER4)をリリースして以降、Z900、Z1000と丸みを帯びたデザインのままモデルチェンジを行ってきましたが、デビュー8年目にして大胆な「イメチェン」を敢行。

▲Zの歴史は流線型デザインから始まった
▲Zの歴史は流線型デザインから始まった

従来の曲線デザインを自らで否定するかのごとく、直線基調のフォルムが新たに採用されることになります。

そしてこの直線フォルムを最初にまとったZが、Z1-Rでした。

開発途上では「棺桶みたい」とからかわれ、カワサキ社内ではあまり良い評価を得られなかったデザインだったものの、いざ世に出してみると、アメリカを中心に大ウケ。

Z1の流麗なスタイルも厚い支持を集めましたが、Z1-Rのこの「角」スタイルもまた、多数のZファンを生むこととなりました。

◆デザインばかりを追いすぎた…

その独特のスタイリングから人気を集めたZ1-Rでしたが、実はこのZ1-Rには、デザインを優先しすぎたがゆえのウィークポイントもいくつかありました。

分かりやすいのが、燃料タンク容量。

▲容量よりも細身のシルエットを重視したタンク
▲容量よりも細身のシルエットを重視したタンク

Z1-Rのタンクは、シャープな形状を優先したことにより、なんと13ℓしか容量がありません(初期型Z1は18ℓ)。

ホンダ『CB400FOUR』でさえ14ℓのタンク容量がありましたから、Z1-Rのタンクは中型バイクよりもミニサイズだったことになります。

また、Z1-Rは走行時の直進安定性と操舵性(ハンドリング)にも問題を抱えていました。

その原因は18インチのフロントホイール。

Z1-Rの車体は、76年登場の『Z1000』がベースとなっています。

▲Z1000〈1976/画像引用元:川崎重工〉
▲Z1000〈1976/画像引用元:川崎重工〉

Z1000は前輪19&後輪18インチで、車体設計も当然これに合わせたものになっていました。

カワサキはZ1-Rの開発時、ルックスを重視して前輪に18インチを採用するのですが、車体設計の見直し・調整をほとんどしないまま(=19インチに合う設定のまま)この小径化を行ってしまいます。

すると当然車体のトータルバランスは崩れ、結果的にZ1-Rは走行時に不安定な挙動(ハンドルが急に切れ込む等)を示すようになってしまったのでした。

「実用性や操安性を多少犠牲にしてでも、スタイルを優先したい」という当時のカワサキの強いこだわりが伝わってくるようですね。

◆カッコよさは、あらゆるネガを凌駕する

実用性や乗り味にやや難があり、また価格もZ1000より30%ほど高かったZ1-Rですが、先ほどもお伝えしたように、Z1-Rはよく売れました。

やはりその唯一無二のスタイリングが、バイクファンたちのハートを射抜いたということなのでしょう。

タンク容量の少なさや不安定なハンドリングを埋め合わせてしまうほどのカッコよさが、Z1-Rにはあったといえそうです。

▲1980年にはZ1-RⅡへモデルチェンジ〈画像引用元:川崎重工〉
▲1980年にはZ1-RⅡへモデルチェンジ〈画像引用元:川崎重工〉

モトエンスー(moto enthusiast)

バイクを楽しむライター。バイク歴15年で乗り継いだ愛車は10台以上。ツーリング/モータースポーツ、オンロード/オフロード、最新バイク/絶版バイク問わず、バイクにまつわることは全部好き。

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