ヤクルト山中、年俸倍増でも背番号は変えない「68番を良い番号と言われるように」
防御率、QS率はいずれもヤクルト先発陣でNO.1
「予想以上の金額だったので、正直ビックリしてます。倍ぐらい…っていうことで」
契約更改を終え、会見で来季の年俸を問われた東京ヤクルトスワローズの山中浩史(31歳)の顔が、思わずほころんだ。
現在のプロ野球では貴重なアンダースローの「燕のサブマリン」は、今シーズンはほぼシーズンを通して先発ローテーションを守り、自己最多の22試合に登板。勝ち星は昨年と同じく6つ、負けの数はセ・リーグ最多タイの12を数えたが、それでも年俸は2000万円増の4100万(金額はいずれも推定)までアップした。それは会見で山中自身が「負けた試合でも、それなりにしっかり試合をつくったっていう部分を評価してもらいました」と話したように、その中身が濃かったからだ。
今季は初の規定投球回にあと3イニング足りなかったものの、防御率3.54はチームで1試合でも先発した15人の投手の中でNO.1。先発が6回以上投げて自責点3以下に抑えた試合、いわゆるクオリティー・スタート(QS)の割合を示すQS率は、こちらもチームトップの59.1%と、先発陣が両リーグワーストの防御率4.96と苦しむ中で奮闘した。
2012年のドラフト会議で福岡ソフトバンクホークスに6位で指名され、27歳でプロの世界に飛び込んだ山中が投手として花開いたのは、2014年のシーズン途中で新垣渚(今季限りでの引退を表明)と共にヤクルトへトレードされてからだ。
移籍2年目の2015年6月12日の埼玉西武ライオンズ戦(西武プリンスドーム)でプロ初勝利を挙げると、そこから6連勝。チームの14年ぶりリーグ優勝の立役者の1人となった。
「森岡さんも着けた68番は出世番号」
ソフトバンク時代に39だった背番号は、ヤクルトでは移籍時に空き番号の1つだった「68」に変わった。昨年、今年と先発ローテーションの一角を担う存在となり、球団からは背番号の変更を打診されたものの、これを辞退。今季はチームの支配下登録投手で3番目に大きかった番号を、今後も背負い続けていくという。
「68は良い番号だって思ってるんで。出世番号ですよね、森岡さんも着けてましたし」
山中の前に68番を着けていた森岡良介も、ヤクルトで花開いた選手の1人だ。2008年に中日ドラゴンズを自由契約となり、12球団合同トライアウトを経てヤクルトに入団。時にレギュラー、時に内野の控え、またある時は左の代打として活躍し、2014年から2年間は選手会長も務めた。そして今季限りで惜しまれつつ現役を引退し、新たに一軍野手コーチ補佐に就任。そんな森岡の着けた番号は「出世番号」というわけだ。
もっとも森岡は選手会長に就任した2014年から背番号を「10」に変えたが、山中には変えるつもりはまったくない。
「そこは肥後もっこす的な一本気です。(68番は)良い番号って言われるようにしたいですね」
日本では通常、10番台、20番台の背番号が投手にとって「良い番号」とされるが、そこは熊本生まれの「肥後もっこす」。山中は己の右腕で、68番を“一流”の背番号に育てていくつもりだ。