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世界一周クルーズが遂に再開!平和の願いを込めた出発に涙とまらず…心と心を繋ぎなおす旅【神戸市】

Hinata J.Yoshioka旅するフォト&ライター(神戸市)

先日、ポートターミナルから豪華客船が「世界一周」に出航するというので見に行って来ました。ここ最近のできごとの中でもかなり興味深いニュースかもしれません、何と3年ぶりだという世界一周クルーズの出航です。

今回、世界一周へ出発する客船は「パシフィックワールド」という、77,441トンの大型船です。7日に横浜を出発して、8日の昼過ぎに神戸のポートターミナルへと到着、夜には世界へ向けて出発という予定。

送迎デッキで船が来るのをのんびり待っていたのですが、どうやら反対側のデッキに到着することが判明、慌てて外に出るともうだいぶ近くまで来ていました。まるで大型のホテルが移動しているかのような驚きの大きさです!

船体には大きな2つのシンボルマークが描かれていて、その横には「PEACE BOAT」の文字が。世界一周の船を出している国際NGO「ピースボート」の船です、この船のポスターを街やお店などで見かけたことがある人も多いのではないでしょうか。

神戸に住む私たちにとって、ピースボートは実は関係の深い団体なんです。世界一周の寄港地として今までも頻繁に神戸に出入りしていたということもありますが、それだけではありません。

阪神淡路大震災の時にはいち早く長田区に入って、全国からの人や物資を取りまとめながらボランティア活動を開始。現在は別団体となっている「ピースボート災害支援センター」の原点となっているのだそう。

そんなピースボートが3年ぶりの世界一周を再開、そして今年が船を出して40周年目で、今回はウクライナのビクター・アリモフさんが名誉船長として乗船するということもあり少しお話を伺いました。

左側:吉岡共同代表 中央:ビクター・アリモフ船長 右側:畠山共同代表
左側:吉岡共同代表 中央:ビクター・アリモフ船長 右側:畠山共同代表

アリモフ船長「私はウクライナのオデッサ出身です。2009年からピースボートの船長を務めてきましたが、今回は3年ぶりの来日です。これまで皆さんと同じようにコロナ、さらに戦争と続いてとても大変でした。今は家族とルーマニアに避難して、小さなコミュニティーを作って身を寄せ合っています」

「ピースボート船内では、数週間経つと大きなファミリーのような一体感ができるのが素晴らしいと思います。実際に私がウクライナで大変なことを知って、メッセージを下さった過去乗船客の方が本当に沢山いたんです。スタッフさんたちからもそうですし、吉岡共同代表には避難時のサポートでもとても助けて頂きました」

「素晴らしいのは、彼らがコロナ禍においても海外支援の手を止めなかったこと。日本の皆さんは意識がとても高いと思いますし、ウクライナへの支援も心から感謝しています。ピースボートのミッション、平和と友好を提供する船としてこれからも旅を続けて欲しいと思います」

アリモフ船長を含め、船の中で働く人たちが様々な国籍だったり、乗客も7割は日本人なのだそうですが他はアジア中心に国際色豊かというのも面白いですね。

船を出せなかったこの3年間も、海外の各寄港地の担当者さんたちと繋がり続け、激励の声を受けながら心を支えられてきたのだと共同代表の畠山さんは語ります。

「40年間たえず船旅をやってきたその結果として、小さな信頼関係の積み重ねがすごくありました。コロナ禍で物理的に交流が途切れても、各国の人たちとのやり取りは途切れなかった」

「だから今回の出航は本当に感無量で。今でも平和じゃない状況が続いている中で、自分たちができることはほんの微々たるものではありますが、分断を繋ぎ直すようなことを船旅を出してやりたいなとずっと思っていました。今だからこそ、船を出していろんな人たちに会いに行こうと」

「クルーズでひとりでも多くの人に世界を見て欲しいし、世界の人たちと友達になってもらいたいんです。とても単純ではありますけどそこが重要だと。世界を知ったその先にニュースなどを見ると、それを自分と無関係とは捉えず、感じ方も全然変わっていたりすると思うので」

また、SDG’sの公式キャンペーン船として長年、国連と協力してやってきているのもピースボートならでは。過去N.Y.などでも国連の公式イベントを船上で開催してきたそう。日本ではあまり知られてはいませんが、豪華クルーズ船のもう一つの顔としても世界では知られているようです。

国連には「特別協議資格」を持っている市民団体として意見を言える立場なので、世界中をまわって問題を拾い集め、オブザーバーとして国連で報告をするというミッションもあるということですよ。とても重要な役割ですね。

こうやって再び、多くのクルーズ船が世界と私たちを繋ぎ、希望をもたらすものとして存在できることの素晴らしさ。もしかしたらもう、二度と海外には行けないのかもしれないという恐れを過去数年間は密かに感じていただけに、今回のニュースはとても喜ばしいものでした。

世界との繋がりを絶たれ、心の繋がりさえも危ういような状況だったことがリアルに思い返されます。コロナが収まりつつある中で、今度は戦争が始まり今も緊迫した状況が続いています。ただひとつそこに光を見いだせるとしたら、人々がまた再び「繋がろうとしている」ことなのかもしれません。

クルーズの関係者が、横浜での出航式の際にはスタッフ同士で男泣きしたと言っていたのがとても印象的でした。皆さん、苦しかった3年間の想いがあふれて涙を流していたそうです。「ようやく…ようやくです」という一言が深く心に響きます。

この船では物資やお金での人道支援、世界各地で出会った上での対話や楽しい交流も行われるそうです。もちろんゆったり旅してみるだけでも、世界の姿を見て感じることで充分に人や国と繋がれます。大切なのは「世界と出会うこと!」いたってシンプルですね。

夜には、次の寄港地フィリピンに向けていよいよ出航したピースボート。これからも年に3度ほど、神戸の港で見られるチャンスがありそうですよ!

神戸・客船入港予定

旅するフォト&ライター(神戸市)

旅なしに人生は語れない、ノマド系フォトライター。国内から世界各国まであちこち歩きまわって取材する、体当たりレポートを得意とする。趣味は美味しいもの食べ歩き、料理、音楽、ダンス、ものづくり、イベント企画などなど、気になる物には何でも手を出してしまう。南国気質で、とにかくマイペースな自由人。

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