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森山未來キュレーション!壁を完成させるアート展が北野で開催、世界にひとつだけの作品も貰える【神戸市】

Hinata J.Yoshioka旅するフォト&ライター(神戸市)

神戸の北野と言えば異人館のある観光地といったイメージがあるかと思いますが、今回はその北野の街で面白いアート展が開催されます。

そのタイトルは「山田悠+サム・ワイルド2人展 Walls and Frogs -境界線に見るあわい-」…壁とカエル、そして境界線?どういう意味なのでしょうか。

Artist in Residence KOBE(AiRK)によるAiRK research project vol.2として開催されるこの展覧会。キュレーターは俳優やダンサーとして活躍中、AiRKの一員でもある森山未來さんです。

2人展のうちの1人「サム・ワイルド」さんはイギリス・ロンドンの出身のアーティストです。とても独自性に溢れ、ポップな色使いが特徴的な彼の作品はアップルやブリティッシュ・エアウェイズなどの有名企業にも認められ、コラボ作品なども。

今回、壁を使っての作品にカエルのモチーフを選ぶことにしたサムさん。「カエルは両生類で、水も土もある場所で生きる生物。そこで海と山がある神戸のイメージとマッチした」と言います。

そこには、神戸に住む人たちを視覚化したいという想いがありました。神戸に住む色んな人たちが、壁に自分自身でもあるカエルのシールを貼っていくことで作り上げていく参加型の作品「Equi-」。

会場に来るとまず封筒を手渡されます。そこにはカエルのシールと、同じ模様のカエルが描かれたポストカードが入っています。カエルのシールはこの壁内に貼っていくのですが、どこにどんなふうに貼るかはその人の自由です。

カエルを皆が貼ることで壁一面に世界が現れるのですが、それはまさに神戸の人々が住む世界が視覚化された物であり、サムさんと神戸の皆さんが共同で作るアート作品として完成します。

1000匹のカエルは全て違います。パターンや色、その組み合わせで同じものは一つとして存在しません。それは人々が色んな個性を持っているということを表現しています。

「社会の中では個人主義や集団主義があり、そこにグラデーションがあって、自分がどう参加していたとしてもそのどこかにいます。それが正しい、正しくないでもなく」

カエルをどう貼るかで自分の個性を表現できる。それをそれぞれが貼ることで社会を形成していくことができるとサムさんは考えます。

このカエルたちはAIで生成したパターンではなく、全てサムさんの手作業によって生み出されています。そして、ポストカードの裏にはシリアルナンバーとサムさんのサインが描かれていて、世界にたったひとつの作品として持ち帰ることができるんですよ。これは素敵なギフトですね。

さて。もう1人のアーティストは山田悠さんです。以前にも神戸滞在で街をリサーチ中に、北野の壁がとても面白いというふうに感じていた山田さん。

皆さんは、擁壁(ようへき)という壁をご存知でしょうか。高低差のある土地で、側面の土が崩れるのを防ぐために作られる壁なのですが、山田さんは神戸の擁壁のユニークさに注目。

東京に住んでいると、作って壊してのサイクルが早くて建物がどんどん綺麗にされていってしまうのだけど、神戸の擁壁は違うのだと。

確かに、神戸の擁壁を見るとつぎはぎのように時代を経て様々な素材が組み合わさっている様子が見られ、それはまるでアート作品のようでもあります。

そんな擁壁を、山田さんはフロッタージュという技法で紙に写し取りました。簡単に言うと、デコボコした物の上に紙を置いて鉛筆で擦って写し出すような感じですね。

「ただのフラットな壁があるのではなく、(擁壁によって押さえている土などの)自然がこっちに向かってくるというのを凄く感じたのが擁壁。

それを触ることで自然の力と人間の力との境界を感じるべく、そこに立ち向かうような感覚でフロッタージュをしてみました」と振り返ります。

山田さんが何時間も道でフロッタージュをしていると、色んな人たちに「何してるの?」と声をかけられ続けたそうですが、そんなある日、印象的なことが起こりました。

「壁の声が聞こえるねぇ」と、山田さんの後ろで作業を見ていたおじいさんが言います。同じように感じていた山田さんは、おじいさんがその言葉を発したことに驚いたのだそう。

古い石垣の上に新しい物、赤煉瓦やコンクリートブロックなどが幾層に積み重ねられている姿、そこに読み取れるのはその時代ごとのストーリーなのだと山田さんは感じています。

「不整合」というのが山田作品のメインテーマ。地震学で使われる言葉なのだそうですが、土地の隆起や土砂崩れなど時間の整合性が断絶されているような状態を言います。

地震なども含めて、その度に付け足されていく壁。断絶されてなお流れていく時間のあわいに人間がそっと手を添えた姿がそこにあり、それをフロッタージュで写し取って会場に壁として再現したのが山田さんの作品「不整合の擁壁」です。

その向かいには、「不整合の擁壁」のリサーチ時の写真を一枚のポスターにまとめた作品があるのですが、そちらも皆さん自由に持ち帰っていいのだとか。壁のコラージュ写真をまた壁に貼って壁紙に…という「どこまでも壁」みたいな世界観をおウチでも楽しめます。

他にも「壁面倶楽部」の記録映像が流れていたり、「日時計の面影(Sun of the cityという別プロジェクト)」の紹介もあったりと、山田さんの表現の世界にググッと入り込めますよ。

さて、ここまでご紹介してきました「山田悠、サム・ワイルド2人展 Walls and Frogs -境界線に見るあわい-」ですが、壁をテーマとして、そこから社会性や自然観を含んだメッセージが感じ取れる作品たちでした。

なぜこの展示会を「北野」でやるのか?それは北野がもともと雑居地であること、雑多な文化、国籍など混じり合ったものがあり、北野の土地のあり方の本質がリンクしたからというお話も伺いました。

会場内の作品たちは一見シンプルに見えますが、掘り下げていくとキリがないくらいの内容が詰め込まれています。それは自分がそこに何を見出すかにもあるように思えました。

作品に自分を投影して感じ取れる、過去や未来もあります。2人のアーティストが生み出した「壁」を目の前にして、地層のような擁壁が経てきた地球的時間に同調してみたり、個性を生かしつつこの社会でどんな立ち位置にありたいかを想像してみたり。

それは、変化が大きい今だからこそ必要なことかも知れません。大きな枠に溶け込んで、客観的に自分を見つめられる空間がここにあるように思えました。なぜなら彼らの作品の裏には今この時だけでなく、遥か長い時間が含まれているからです。

この秋、あなたはどう過ごしますか?アートに没入して色々と楽しんでみながら、改めて自分を見つめる時間を持ってみるのもおすすめですよ。

AiRK Instagram(外部リンク)

↑山田悠、サム・ワイルド2人展 Walls and Frogs -境界線に見るあわい-の情報はこちらから

開催場所:神戸ローズガーデン

期間:2024年11月2日(土)〜24日(日)

時間:11時〜18時

休廊日:水曜日

入場料:800円

住所:兵庫県神戸市中央区山本通2丁目8−15

※会期中には参加アーティストによるトークセッション、ワークショップや、街歩きツアーなども実施、詳しくはインスタから

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旅するフォト&ライター(神戸市)

旅なしに人生は語れない、ノマド系フォトライター。国内から世界各国まであちこち歩きまわって取材する、体当たりレポートを得意とする。趣味は美味しいもの食べ歩き、料理、音楽、ダンス、ものづくり、イベント企画などなど、気になる物には何でも手を出してしまう。南国気質で、とにかくマイペースな自由人。

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