今秋大発生中というカメムシ。自分が死ぬほどの悪臭の正体は?#カメムシ大発生
今秋、日本各地から大発生のニュースが伝えられているカメムシ。彼らが嫌われる最大の理由は悪臭だろう。カメムシが自分の悪臭で死ぬというのは本当だ。実際に何度か経験している。
この悪臭の主な成分は、トランス-2-ヘキセナール(浅学の昆虫記者にはチンプンカンプン)というアルデヒド系の物質。アルデヒドと言えば、お酒を飲んだ後、アルコールが体内で分解されてできるアセトアルデヒドが有名だ。この物資の毒性が、悪酔いや頭痛の元になるという。
つまりアルデヒドには、悪臭と同時に毒性もあるのだ。だから、狭い容器に閉じ込められたカメムシは、自分が出した悪臭物質にやられて死ぬことがある。
昆虫記者がカメムシを撮るときは、たいてい自然の中で暮らしている姿を撮る。捕まえてきて、自宅でじっくり撮影することはめったにない。臭いからだ。
しかし、珍しいカメムシや、きれいなカメムシだと、つい持ち帰りたくなる。台湾で見つけたライチカメムシは、非常に大型で魅力的だった。しかも、その幼虫は、頑強な鎧(よろい)を身に着けているような姿で格好いい。
つい捕まえて、小さなプラケースに入れて、宿泊先のホテルに持ち帰った。そしてケースの蓋を開けると、すさまじい悪臭。中のカメムシは、既に死んでいた。自分の出した悪臭の中で死んでいくのは、苦しいに違いない。かわいそうなことをした。以前オオキンカメムシを、同じような経緯で瀕死の状態にしてしまったこともある。
多くの種類のカメムシは、脚の付け根付近の臭腺から悪臭物質を出す。この悪臭は天敵を追い払うための武器なので、毒性があって当然だ(このほか警戒、集合、異性へのアピールなどの役割もあるらしい)。この毒性のため、誤ってカメムシを握りつぶしたりすると、炎症を起こすこともあるというから注意したい。
ただし、普通にカメムシに触れてしまって「うわー、臭い」となる程度の状況では、人体に健康被害が及ぶことはないという。
日本で物置や人家に入り込んだり、洗濯物にへばり付いたりして嫌がられるカメムシの代表は、ツヤアオカメムシ、クサギカメムシ、マルカメムシなどだ(いずれもかなり臭い)。
しかし、カメムシの出すにおいの中には「よい香り」と感じるものもあるので、今年の大発生を機に、カメムシのにおいをかぎ分けられるカメムシソムリエを目指すのもいいかもしれない(そんなことを考えるのは、よほどの虫好きだけ)。ただし、芳香系のカメムシのにおいも、接近しすぎると刺激が強いので要注意だ。
(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)