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松山市での土砂崩れ、原因究明と責任追及の行方は? #専門家のまとめ

関口威人ジャーナリスト
松山城と松山市街(写真:イメージマート)

 松山市で大雨の影響による土砂崩れが発生してから19日で一週間。中心市街地にある松山城の城山の斜面が崩れ、大量の土砂が木造家屋を直撃して3人が亡くなるという惨事になりました。城山の頂上付近では市が緊急車両用道路の修復工事をしていたことも波紋を広げています。土木や地質などの各専門家が調査に入っていますが、広島や伊豆大島などの土砂災害現場を取材した筆者の経験から、現地の報道のポイントを整理してみます。

ココがポイント

▼愛媛大学の調査グループは「表層崩壊」を中心に複数のメカニズムを検証中

松山城の城山土砂崩れは「表層崩壊」愛媛大学調査グループが調査速報「始まりは上部か中腹か検討」(テレビ愛媛)

▼道路の亀裂は6年前の西日本豪雨時にも確認されており、昨年夏に広がったおそれも

頂上付近の道路に6年前も亀裂 専門家「住民にも共有すべき」(NHK NEWS WEB)

▼工事の緊急性や許可手続きを巡り、市と文化庁の認識のずれが浮き彫りに

松山の城山で土砂崩れ 市と文化庁の認識にずれ 市は「国の史跡なので文化庁の許可が必要」 文化庁は「緊急時は相談だけで工事認める」(あいテレビ)

▼愛媛県と松山市は月内に対策技術検討委員会を開き、原因究明や再発防止策について協議する方針

・避難生活 長期化か 松山・城山土砂崩れ1週間 県と市 対策委で原因究明へ(愛媛新聞ONLINE)

エキスパートの補足・見解

 学問的な原因究明には一定の時間がかかることでしょう。一方で、今後の台風シーズンなどに備えて一刻も早い再発防止策が望まれます。

 頂上付近の工事との関係も簡単に結論は出ないでしょうが、当初は関連を否定していた市に対し、西日本豪雨の頃から亀裂が広がっていたのではないか、城山を巡るさまざまな管理計画で危険性が認識されていたのではないかといった指摘が突き付けられています。熱海の土石流災害のような行政の責任を問う訴訟も想定されていくでしょう。

 同じようなリスクを抱える地域は、全国に無数にあるはずです。そのリスクをいかに早く見つけ出し、住民と情報共有して適切な対策に結び付けられるか。今年もまた水害の季節に浮き彫りになった教訓の一つと言えそうです。

ジャーナリスト

1973年横浜市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学)修了。中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で社会問題をはじめ環境や防災、科学技術などの諸問題を追い掛ける。東日本大震災発生前後の4年間は災害救援NPOの非常勤スタッフを経験。2012年からは環境専門紙の編集長を10年間務めた。2018年に名古屋エリアのライターやカメラマン、編集者らと一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」を立ち上げて代表理事に就任。

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