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藤井八冠の勝率と天気予報の適中率、午前「コーヒー」の確率すべて84%

森田正光気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長
将棋王将戦開始前の様子(筆者撮影)と天気予報の適中率(気象庁HP)スタッフ加工

藤井八冠 通算勝率 84% 天気予報の当たる確率(関東)84%

 11月19日、東京ビッグサイトで、第44回将棋日本シリーズが行われました。「藤井聡太八冠 対 糸谷哲郎八段」の対決は藤井聡太八冠が勝って、これで今期30勝5敗となりました。

 では通算成績はどうかというと、2016年に加藤一二三九段から鮮烈な初勝利を得て以来、416局を戦い348勝68敗。勝率はなんと83.7%です。(11月22日現在・次回は11月25日銀河戦)

 そしてこの84%というのが、夕方発表の翌日天気予報の適中率とほぼ同じだとしたら、ちょっと驚きませんか。

「降水の有無」の予報精度の例年値 関東甲信は84% (気象庁HP)スタッフ加工
「降水の有無」の予報精度の例年値 関東甲信は84% (気象庁HP)スタッフ加工

 実は天気予報の適中率を決めるというのは、そう簡単なことではありません。昔は「晴れ」という予報に対して実際に「晴れ」なら100点、雨が降ったら0点というように、天気を点数化していました。しかしこれだと、「晴れ」という予報で「曇り」ならどうするのかという厄介な問題が発生します。0点でもないし100点でもないから、曇る割合に対して30点とか50点とか点数が配分されました。ところがこれだと、「晴れ時々曇り」とか、「所により雨」などのあいまいな予報表現が増えて評判が良くありませんでした。

 そこで気象庁では、1990年ごろから、降水の「有る」「無し」だけに注目して、現在の評価基準になっていったわけです。

 ただ将棋の勝率84%は100回の対局があれば84回勝つことを意味しますが、天気予報の場合は「雨が降る」という予報と「降らない」という予報がありますので(捕捉率・一致率という)現在でも人の感覚とずれることがあり、単純に当たったかどうかを判定するのは難しいです。

 表を見ると、全国の年平均は83%、関東は84%なので藤井八冠の勝率とほぼ同じです。さらによく見ると、冬の関東甲信は90%とよく当たり、一方、北海道や沖縄は天気予報が難しい地域であることが分かります。

藤井八冠の、もう一つの84%

第72期王将戦第5局「将棋メシ」左:猪肉そば 藤井聡太王将 右:わさび飯 羽生善治九段(2023年2月26日筆者撮影)
第72期王将戦第5局「将棋メシ」左:猪肉そば 藤井聡太王将 右:わさび飯 羽生善治九段(2023年2月26日筆者撮影)

 藤井八冠は、伊藤園のCMキャラクターということもあってか、対局を始める前に最初にお茶を飲むことが多く、ファンの間では「初手・お茶」として有名です。逆に11月19日に行われた将棋日本シリーズ決勝戦では、初手(2六歩)を指した後にお茶を飲んだため、記者からお茶を飲まなかった理由を問われるほどでした。対して藤井八冠は「持ち時間が少ない将棋だから」と答えていました。

 かくのごとく、藤井八冠の一挙手一投足が記事になりますが、11月11日Number Web配信の「藤井聡太は八冠になるまで何を食べてきたのか タイトル戦全85局から見えた「コーヒーはアイスのみ」「うなぎを食べない」傾向」という記事を読んでびっくりしました。

 記事によると、藤井八冠はタイトル戦の午前中にコーヒー類を頼む確率が高いとのことです。カフェオレなども含めて、117回中98回。83.7%の確率で藤井八冠はコーヒー類を午前中に口にしているとのことです。

 なんと83.7%というのは藤井八冠の11月22日現在の通算勝率と同じ、そして天気予報の当たる確率ともほぼ同じです。

 もちろんこれらは単なる偶然かもしれませんが、偶然にしても三桁の数字が一致することはなかなか無いことでしょう。

 ちなみに、天気の出現率というものがあります。東京では11月23日、勤労感謝の日は文化の日とともに11月の晴れになりやすい日として有名でした。しかし、過去30年の晴天になる確率は70%です。

 比較には無理があるかもしれませんが、84%の確率はとても高いということだけは分かります。

参考

天気予報の精度の例年値とその特徴 気象庁HP

公益社団法人日本将棋連盟HP

11月11日掲載記事「藤井聡太は八冠になるまで何を食べてきたのか タイトル戦全85局から見えた「コーヒーはアイスのみ」「うなぎを食べない」傾向」 Number Web

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長

1950年名古屋市生まれ。日本気象協会に入り、東海本部、東京本部勤務を経て41歳で独立、フリーのお天気キャスターとなる。1992年、民間気象会社ウェザーマップを設立。テレビやラジオでの気象解説のほか講演活動、執筆などを行っている。天気と社会現象の関わりについて、見聞きしたこと、思うことを述べていきたい。2017年8月『天気のしくみ ―雲のでき方からオーロラの正体まで― 』(共立出版)という本を出版しました。

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