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大学サッカー「原石」たちの躍動。三笘薫や伊東純也らが育った大学サッカーの挑戦と変革〜九州産業大学編〜

上野直彦AGI Creative Labo CEO / TOYOTA
九州産業大学サッカー部 森寧樹(2年)。最高の環境と最新の設備がサポートしている

なぜ、今、大学サッカーが注目されているのか?

 FIFAワールドカップ(以下、W杯)アジア最終予選、11月19日に日本代表は中国代表との試合で3-1と勝利した。3月に開催予定の第7節バーレーン戦で勝利すれば、最速に近いレベルでW杯への出場権獲得となる。

 「史上最強」という日本代表への評価もあるなか、にわかに注目を浴びているのが「大学卒」の選手たちだ。三笘薫(筑波大)や伊東純也(神奈川大)など近年大学サッカーを経由している選手が増加している。

 大学進学へはアスリートそれぞれの事情や価値観があるだろうが、こういった背景から大学サッカーの全国大会にはプロのスカウトマンの姿が絶えない。約20年前と比べても明らかにその数は増えている。

 Yahoo!では大学サッカーに注目していくが、3年ぶりの新人戦の九州制覇を達成して創部初の日本一を目指す大学がある、九州産業大学だ。過去にYahoo!では津上賢治理事長がインタビューに登場している。

(*写真は特に表記がないものは吉田陽氏による撮影)

新しい体制、新しいチーム、新しい歴史の始まり

チームを支える藤井善治監督代行(左端)と、今村匠実コーチ(右端)。
チームを支える藤井善治監督代行(左端)と、今村匠実コーチ(右端)。

 2024年8月14日に行われた九州大学サッカー新人戦決勝、九州産業大学は昨年度全国準優勝校の福岡大学を1-0で下し、3年ぶりの全国大会出場権を獲得した。

 「監督とコーチがモチベーターとしてチームを支え、個性豊かなメンバーが何でも言い合える関係を築いてます。例年を超える結束と圧倒的なチーム力を生み出して、互いに刺激し合いながら日々サッカーを進化させる力を持っていると思います」

 本大会のキャプテンを務めるCMF森寧樹(2年=富士市立高出身)は、今年のチームについてこう語った。今シーズン、九州産業大学は2023年度よりトップチームコーチに就任した今村匠実氏と、2020年度に主将を務めた藤井善治氏が監督代行に就任し、新体制でスタートを切った。

 新体制1年目ながら、九州大学サッカートーナメント準優勝、新人戦九州大会優勝、九州大学サッカーリーグ準優勝という成績を収め、創部初となる全国3大会出場を果たしている。


注目の3選手にフォーカス

左から平古智也(2年=興国高)、森寧樹、中山大耀(2年=清水東高)
左から平古智也(2年=興国高)、森寧樹、中山大耀(2年=清水東高)


 今回のYahoo!ニュースでは、新人戦にフォーカスを当て注目の選手3名が考えるチームの現状と大会へ向けた意気込みを聞いた。

新人戦最後の年でもあります。今年の新人戦チームの方向性やフィロソフィーを教えてください。

森 寧樹(以下、森) とにかくボールを大事にします。攻撃時はDFも一緒に全員で攻撃する、逆に守備時はFWも一緒にチーム全員で守ります。ボールをチーム全体で大事にしているんです。

中山大耀(以下、中山) パターンに縛られないことです。だからこそ、相手に対してサッカーを変えられるし、どんな状況でも自分たちのサッカーを展開できていることだと思います。

平古智也(以下、平古) 僕は2人と同じですね。ボールを大事にして、パターンに縛られずにサッカーをすること、これをチームで大事にしています。

中山 でも、最終的には「ボールを大事にする」「パターンに縛られない」のも、常に自分たちのサッカーを展開するために徹底していることです。

FWである中山選手(中央)、福岡大学との大一番の試合でも得点を決めた。
FWである中山選手(中央)、福岡大学との大一番の試合でも得点を決めた。


実際に新人戦のチームを指揮しているのは今村コーチですが、選手たちにとってどのような存在なのでしょうか。

中山 いい意味で監督らしさを感じさせず、積極的にコミュニケーションを取ってくれるので気軽に何でも相談できます。また、個々の考えも最大限に尊重してくれるのでプレーしやすく、圧倒的なチーム力を生み出してくれる指針のような存在です。

藤井監督代行はどのような存在なのでしょうか?

平古 一言で表すと、チームのモチベーターですね。誰よりも「勝ち」へのこだわりがあり、試合前にいつもベンチで全員に声をかけ士気を高めてくれます。上手くいかない時はモチベーションを上げるために声をかけてくれ、チームの結束力を強化してくれる存在です。

― 森選手が考えるチームのキーパーソンは誰でしょうか?

森 平古(智也)選手です。誰にも止められないドリブル突破とカットインからのクロス精度は九州だけでなく全国でも勝利の鍵になるかと思います。

― 平古選手のドリブルは九州サッカーリーグで大会優秀選手賞を受賞した菊池雄太(4年=東海大星翔高)も期待を寄せるに足ると伺いました。中山選手は誰ですか。

中山 小林永和(2年=福岡大若葉高)選手です。GKとして卓越した身体能力とキック精度を誇り、ビルドアップにも積極的に絡みチームに貢献する選手です。

― ビルドアップにも積極的に絡むプレーは、私も印象的です。平古選手は誰でしょうか?

平古 藤吉春翔(2年=サガン鳥栖U-18)です。守備だけでなく、攻撃でも起点となる力強いCBです。何より、ここ1年で着実に力をつけたうちの自慢の選手です。

新人戦の舞台は千葉など関東となる。
新人戦の舞台は千葉など関東となる。


― 最後にうかがいます。今シーズントップチームでキャプテンを務める飯星明良(4年=ロアッソ熊本内定)選手から「今年掲げた目標である新人戦全国優勝を達成できるよう、チーム一丸となって全力で頑張ってください!」と応援メッセージをいただいています。

森 目に見えない部分でもチームを牽引し、優勝を掴むために全力を尽くします!そして、憧れである明良くんを超越するキャプテンになります。

中山 最初で最後の新人戦全国大会、優勝しかありません。敵はと聞かれたら自分自身ですと答えます。

平古 後悔がないようにまず大会を楽しみます!自分の得点でチームを勝たせます!

ー 皆さん、ありがとうございました。応援しています!

*記事内にある新人戦はLIVE配信されます。

<インタビューを終えて>

短時間で新体制の構築を成したことを感じさせないチームの結束力がある。
選手のみならず、指導者とともに戦う一体感があるのが現在の九州産業大学サッカー部の強みではないだろうか。

九産大への取材は今回初ではあるが、大学サッカーそのものを含めて深掘りしていき「未来の原石」たちを発掘していきたい。今後も注目していく。

【インタビュイー】
平古 智也
興国高校で磨かれた華麗なドリブルで、観客の心とゴールを奪うドリブラー。本大会では10番を背負い、高校時には、プリンスリーグ関西1部を経験し、現在は元興国高校監督 内野智章氏(奈良クラブTD)が監修したUTINO METHODコーチも務める。

森 寧樹
高いサッカーIQと質の高いボールコントロールで中盤を支える九産大のキーマン。本大会では、キャプテンを務め、持ち前の高度な判断力は、選手だけでなく監督も信頼を寄せる。

中山 大耀
2年生ながらトップチームでエースナンバーを背負う期待のストライカー。九州大学サッカーリーグでは、18得点を挙げる活躍でチームに貢献し、得点ランキング2位に輝くなど日々成長している。

【取材構成】
上野 直彦
【取材構成協力】
吉田 陽(AGICL所属)

(了)

AGI Creative Labo CEO / TOYOTA

兵庫県生まれ/スポーツジャーナリスト/ブロックチェーンビジネス/小学生の時に故・水島新司先生の影響を受け南海時代からの根っからホークスファン/野村克也/居酒屋あぶさん/マンチェスターシティ/漫画原作/早稲田大学スポーツビジネス研究所 招聘研究員/トヨタブロックチェーンラボ/SBI VC Trade・Gaudiyクリエイティブディレクター/日銀CBDC/漫画『アオアシ』取材・原案協力/『スポーツビジネスの未来 2021ー2030』(日経BP)異例の重版/NewsPicks「ビジネスはJリーグを救えるか?」連載/趣味 フルマラソン、ゴルフ、NYのBAR巡り /Twitter @Nao_Ueno

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