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NHKか日テレか、柄本佑の出演ドラマが同時間帯に2作重なる異例の「裏かぶり」に悩まなくていい理由

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
引っ張りだこの柄本佑さん(写真:2018 TIFF/アフロ)

珍しいことが起きている。

土曜日、夜10時のドラマ、土曜ドラマ「空白を満たしなさい」(NHK)と「初恋の悪魔」(日本テレビ)のどちらにも柄本佑さんが出演しているのだ。

結論からいって、これは異例ではあるがルール違反ではない。後述するが事務所のマネージャーに確認をとった。

2作のドラマは、かたや、一度死んだ、悩める男(「空白〜」)、かたや、警察嫌いの警察関係者(「初恋〜」)、どちらも全然違う役で、表情も仕草も髪型も別人ですごい!と感心しつつ、リアルタイムで視聴する場合、どっちを選ぶべきか迷ってしまう。

「空白〜」は平野啓一郎さんの小説のドラマ化でサスペンス性が強い作品、「初恋〜」は坂元裕二さんのオリジナルの軽妙なミステリードラマ、どちらも良質のドラマだ。

ドラマ好きならどちらも抑えておきたい。ザッピングや倍速視聴じゃもったいない。どちらもじっくり見る良さがある。

時間帯が重なっているドラマのどちらをリアタイするか選ぶとしたら、モチベーションは内容のみならず、俳優の魅力も大きい。つまり、柄本佑さんが見たいからドラマを見る視聴者もいる。

お目当ての柄本さんがどっちにも出ているのだから、どうしたらいいのか贅沢な悩みに毎週、柄本佑ファンの視聴者は悩んでいる。

そもそも、テレビ番組の「かぶり」はありなの? 

柄本佑さんの事務所の担当マネージャーさんに聞いてみた。すると「NGではない」と教えてくれた。

「異例ではあります。柄本にかぎったことではなく、滅多にかぶることはないです。どちらを見たらいいの?と混乱する視聴者のかたもいらっしゃるでしょうから、できれば避けたいとは思います。今回はたまたま重なってしまって……。どちらも魅力的なドラマだったので、こちらとしてはどちらも出演したいと思い、双方に確認したところ、結果的にかぶっても構わないと言っていただきました」

そう言うマネージャーさん。

NHKはかぶりを気にしないそうだ。

「一度は辞退しようかとも考えたが、日テレのプロデューサーには『かぶったとしても出演してほしい』と強く言われました」

たとえ重なっても柄本佑さんに出てほしいと各局から欲される俳優・柄本佑さん。

そして、俳優がどちらも出たいと思うようなおもしろいドラマが土曜のよるに2本もある幸せ。

「最近は、配信もありますから、いつでもどこでもどちらも見ていただけますし」とマネージャーさん。

テレビ視聴のスタイルの変化に即して、柔軟に対応している。

マネージャーさんはこうも語った。

「『空白』は主演のうえ、自分の内面に向き合う物語で、現場でも精神的にしんどい作品でしたが楽しくやっていたようです、『初恋』はコメディ要素もあり軽快な群像劇なので、共演者と和気藹々とやっているようです」

2作が同じような作品でないことも良かったのだろう。

「空白〜」は7月30日で最終回。柄本さん演じる一度死んで蘇った復生者である主人公がどうなってしまうのか、見逃せない。

「初恋〜」は目下、撮影中、登場人物たちの行く先は出演者すら知らされないまま進行しているそうだ。それも俳優にとって楽しみのひとつでもあるだろうとマネージャーさん。

柄本佑さん出演作を2作同時に見ることができるのも7月30日のみ。

「空白を満たしなさい」の最終回をリアタイで見るか、最終回はあとでじっくり、配信や録画で見るか。ぎりぎりまで悩むことを楽しみたい。

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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