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日韓首脳会談で「対話・速度・交流」を強調…日韓関係は修復に向かうか

徐台教ソウル在住ジャーナリスト。『コリア・フォーカス』編集長
24日、中国・成都で安倍晋三首相と握手する文在寅大統領。写真は青瓦台提供。

中国・成都で24日、昨年9月以来となる日韓首脳会談が開かれた。日韓双方によると、当初の予定を超えて行われた会談を通じ日韓首脳は率直な意見をぶつけ合ったという。非難の応酬という長い峠を超えた感がある。

●冒頭発言

この日午後2時(現地時間)から開かれた会談の冒頭で、安倍晋三首相は以下のように述べた。

「日韓両国はお互いにとって重要な隣国同士であり、北朝鮮問題を始めとする安全保障に関わる問題について、日韓・日米韓の連携は極めて重要だ。私としては重要な日韓関係を改善したいと考えており、今日は率直に意見交換したい」

一方、文在寅大統領は少し長めに発言した。

「日本における任期最長の総理になったことと、令和時代のはじめての総理として、元年を成功裏に率いていることをお祝いする。年号の意味と同じく、美しい調和で日本の発展と繁栄が続くことを期待する。

今日の総理との会談が国内外で多くの関心を集めている。バンコクでの会合(筆者注:11月4日)もそれ自体だけで、日韓両国の国民と国際社会の多くの関心を集めた。私達はその期待が何か知っている。

両国間の懸案を解決するためには、直接会って正直な対話を交わすことが最も大きな力だと思う。

先のバンコクでの会合で、総理と私は日韓両国関係の懸案は対話を通じ解決すべきという原則を再確認し、それに従い現在の両国の外交当局と輸出管理当局の間で懸案解決のための協議が進んでいる。両国が膝を突き合わせ賢い解決法案を早く導き出すことを期待する。

日本と韓国は地理的にも歴史的、文化的にも最も近い隣人であり、交易と人的交流においてもとても重要な相生(共生)繁栄の同伴者だ。一時の不便があっても決して遠ざかることのない関係だ。

経済、文化、人的交流をはじめとする協力を続け、東北アジアの平和と繁栄において共にすることを願う。今日、総理と(の会談が)両国間の希望のきっかけになることを願う。

●韓国大統領府の発表

首脳会談は約50分にわたって行われた。韓国・青瓦台は会談後に行った会見で会談を以下のように振り返った。

まず、輸出規制措置(韓国ではこう表現。日本では輸出管理強化)に関し、文大統領が「7月1日以前の水準に早い内に回復するべき」とし「安倍首相の格別な関心を決断を促した」と明かした。

これに対し安倍首相は「3年半ぶりの輸出管理政策対話(筆者注:12月16日)は有益だったと聞いた。今後も輸出当局対話を通じ問題を解いていければ」と語ったとのことだ。

また、日韓最大の懸案事項となっているいわゆる徴用工問題については、「両首脳は互いの立場の違いを確認したが、対話のあいだ、問題解決の必要性に共感していた。特にこの問題が早くに解決し、両首脳間の会合が頻繁に行われなければならない点で一致した」と説明した。

話は朝鮮半島情勢にも及んだ。青瓦台側はによると「両首脳は、最近の朝鮮半島の厳重な情勢に対し意見を交換し、日韓・日米韓の間に緊密な共調(協調)と疎通の重要性を強調した」という。

安倍首相はさらに「拉致被害者問題に対する韓国側の継続した支持と支援を要請し、文大統領は日本側の努力をこれからも支持する」と答えたとのことだ。

来年の東京五輪については、「五輪を通じたスポーツと人的交流の重要性に共感し、より多くの国民が互いに対する心を開けるようにしよう」と語ったと伝えた。

そして最後に、「私達は隣人であり、互いの関係がとても重要だ」という安倍首相の発言を引用し、文大統領の「実務協議を円滑に速度感を持って進められるよう、安倍首相と共に督励しよう」という返答を伝えた。

その上で、「今回の会談が対話を通じた問題解決という希望を、両国の国民に与えるきっかけになればよい」という文大統領の発言で結んだ。

●韓国側は具体的な内容は明言せず

会見後の質疑応答で、韓国政府関係者は「貿易当局間の対話の期限」や「徴用工問題の解決策」、「GSOMIAの行方」などについて具体的な回答を避けた。

唯一、はっきりと答えたのが、先日20日に日本側が輸出管理強化品目の一つ「レジスト」を元来の「特定包括許可」に戻した点への解釈についてだ。

これに対し「日本が自発的に措置をとったことはそれなりの進展であり、対話による解決に対する誠意を見せてくれたもの」という文大統領による評価を伝えた。

●日本側の反応は

他方、日本政府側の発表も韓国のものと大きく差はなかった。これはここ最近の、日韓の色々なチャンネル間での会談内容が、発表レベルでは「ズレ」を見せてきた「悪い慣例」を止めるもので、肯定的だ。

やはり大原則として「対話を重ねることでの解決」を強調した。だが、徴用工問題においては「国が国家として日韓関係を健全な関係に戻していくきっかけを作るよう求める。韓国側の責任において解決策を示して欲しい」という立場を崩さなかった。

文大統領はこれに対し「早期に問題解決を図りたい」旨の発言をしたという。

その上で日本政府は「外交当局間の協議を続けることで一致した」と発表した。なお、韓国国会で発議されたいわゆる「文喜相案」についての言及はこの日の会談で無かったとのことだ。

一方、韓国政府側にない内容も含まれた。

特に「議員間、経済界、地域間、国民間とくに若者同士の交流が重要だ」という安倍首相の発言が紹介された。これに対し、文大統領は「全面的に賛同した」とのことだ。

さらに、福島第一原発の処理水管理状況に不信を募らせる韓国に対する理解を求める内容もあった。

●信頼関係作る努力

ここまで、日韓双方の公式な発表内容を元に紹介してきた。少し冗長だが、実際にどんな内容が話し合われたかをまず理解することが肝要との思いによる。

その上で、会談について筆者は「日韓政府の葛藤は峠を超えた」という印象を受けた点を明かしておきたい。

互いの問題意識を熟知してきた中、今回の会談を通じ、首脳同士が互いの問題点や「メンツ」について率直に語りあった。

日本政府側は会談について「はりつめた空気があった」と表現し、時間が当初の30分の予定がら延びた点についても「安倍首相が相当率直に各種問題に対し指摘をし解決を求め、両首脳から率直な意見交換があった」と明かした。

こうした点は、メディアや演説を通じ、一方的に強い言葉の応酬を続けてきた両首脳が、歩み寄って信頼関係を作る努力を始めたものと理解できる。

この努力は遅すぎた感もあるが、かといって歓迎しない訳にもいかない。

この日の首脳会談には元々、合意文は存在しない。だが、双方の発表で強調された「対話・速度・交流」を軸に、今後は実務当局の協議に一層の弾みがつくものと思われる。

ソウル在住ジャーナリスト。『コリア・フォーカス』編集長

群馬県生まれの在日コリアン3世。1999年からソウルに住み人権NGO代表や日本メディアの記者として朝鮮半島問題に関わる。2015年韓国に「永住帰国」すると同時に独立。16年10月から半年以上「ろうそくデモ」と朴槿恵大統領弾劾に伴う大統領選挙を密着取材。17年5月に韓国政治、南北関係など朝鮮半島情勢を扱う『コリアン・ポリティクス』を創刊。20年2月に朝鮮半島と日本の社会問題を解決するメディア『ニュースタンス』への転換を経て、23年9月から再び朝鮮半島情勢に焦点を当てる『コリア・フォーカス』にリニューアル。ソウル外国人特派員協会(SFCC)正会員。22年「第7回鶴峰賞言論部門優秀賞」受賞。

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