【昭和と平成、あなたはどっち派?】仮面ライダー同士が仲間割れを起こした史上最大の世代間対決とは?
みなさま、こんにちは!
文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。
早いもので1月ももうすぐ終わりに近づきつつありますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
さて、今回のテーマは「ディケイド(Decade)」です。
「どういうこと?」という方のために、意味をご説明しますと・・・
この「ディケイド(Decade)」ですが、英語で「10年間」や「10個から成る1組」などを指す言葉であり、包括的に10を意味しているのだそうです(出典:リーダーズ英和辞典)。
実は、この「ディケイド」という言葉を冠した国民的特撮ヒーローが存在していることをご存知でしょうか?
彼の名は仮面ライダーディケイド。
今や半世紀以上に渡り展開され、親子3世代に渡って支持される、東映制作の特撮ヒーロー番組『仮面ライダー(1971)』シリーズにおいて登場した、歴史ある仮面ライダーのひとりです。
そんな仮面ライダーディケイドが登場したのは、2009年1月25日から同年8月30日まで放送された特撮ヒーロー番組『仮面ライダーディケイド』。
2000年に放送が開始された『仮面ライダークウガ』を起点とする「平成仮面ライダーシリーズ」第10作というアニバーサリー作品であり、本作の主人公としてディケイドは初登場しました。
そんな『仮面ライダーディケイド』も、今年(2024年)1月25日をもって、放送15周年という節目の年を迎えました。
そこで本記事では、この『仮面ライダーディケイド(2009)』に焦点を当て、彼がどんな仮面ライダーで、現在までどんな活躍をし続けたのかについて、少し概観をしていきたいと思います。
※本記事は「私、ヒーローものにくわしくないわ」という皆様にも気軽に読んで頂けますよう、概要的にお話をして参ります。お好きなものを片手に、ゆっくり本記事をお楽しみ頂けますと幸いです。
また本記事における各原作者の表記ですが、敬意を表し「先生」という呼称で統一をしております。本記事を通じてはじめてアニメ・特撮ヒーロー番組に触れる方もいらっしゃいますので、ご配慮を頂けますと幸いです。
【通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!】その正体はショッカー大首領!?俺様キャラの仮面ライダー、ディケイドとは何者か?
さてさて、本記事の主役となるのが、仮面ライダーディケイド。
彼のことをお話しする前に、少しだけ仮面ライダーシリーズについてご紹介をさせて下さい。
仮面ライダーは、漫画家・石ノ森章太郎先生の原作で生み出された特撮ヒーローのことです。1971年にシリーズ第1作『仮面ライダー(1971)』の放送が開始され、主人公が悪の秘密結社ショッカーによって改造手術を施されて、バッタの能力を持った大自然の使者・仮面ライダーとなり、毎週ショッカーが送り込む恐ろしい怪人と戦う物語が展開されました。
その結果、『仮面ライダー(1971)』は国内で社会現象的な大ヒットを巻き起こすことになりました。その後、次回作『仮面ライダーV3(1973)』や『仮面ライダーBLACK RX(1988)』等の昭和の仮面ライダーシリーズを経て、『仮面ライダークウガ(2000)』から『仮面ライダージオウ(2019)』までの平成仮面ライダーシリーズ等、世代を跨ぎながらテレビシリーズは継続され、現在は『仮面ライダーガッチャード(2023)』が放送されています。
さて、今回ご紹介する『仮面ライダーディケイド(2009)』は、上述した『仮面ライダークウガ(2000)』を起点とする平成仮面ライダーシリーズの第10作目。節目かつ記念碑的な作品としての役割を担った作品であり、本作に登場した仮面ライダーディケイドは過去9作品に登場した平成仮面ライダー達を総括する役割が与えられました。
『仮面ライダーディケイド(2009)』は、記憶喪失の主人公・門矢士(仮面ライダーディケイド)が『仮面ライダークウガ(2000)』から『仮面ライダーキバ(2008)』までの9つの平成仮面ライダーシリーズの各世界を渡り、それぞれの世界の仮面ライダー達と出会い、共闘することによって、9つの世界を崩壊から救う物語。「通りすがりの仮面ライダー」を名乗る仮面ライダーディケイドは、平成仮面ライダーシリーズの節目的な作品であり、歴代の仮面ライダーシリーズに登場した仮面ライダーや怪人達も登場する等、豪華絢爛な番組内容でした。
本作のチーフプロデューサーを務めた白倉伸一郎氏によれば、『仮面ライダーディケイド(2009)』の役割のひとつに「仮面ライダーのブランディング」を挙げていました。10作目という節目の作品であることを生かし、これまでの仮面ライダーをカタログ化して回収することで、もう一度仮面ライダーというもののブランド価値を内外に知らしめることを考案されていたそうです。そこから、9つの歴代の仮面ライダーの世界を渡り歩くという物語が構築されていくことになりました。
しかしこの『仮面ライダーディケイド(2009)』の物語は終盤に向けて作品の振り幅を広げ、その展開は平成仮面ライダーシリーズだけでなく、初代『仮面ライダー(1971)』から始まった昭和仮面ライダーシリーズさえも巻き込むことになります。そして物語の進行に連れ、記憶を失った主人公・門矢士(仮面ライダーディケイド)が何者であるかが、次第に明らかになっていきました。
門矢士の正体は、仮面ライダーシリーズに登場した全ての悪が大同団結した秘密結社「大ショッカー」の大首領でした。士が変身時に使用する変身ベルト「ディケイドライバー」は大ショッカーが開発したものであり、ディケイドが9つの世界を旅したのは、彼が各世界を渡り歩くことで、それぞれの世界を繋げる「橋(足跡)」を完成させ、全世界の征服を企む大ショッカーが侵攻する道標とするためでした。
唐突にショッカーが出てきたことで、さらに作品の内容が華やか、かつ親しみやすくなったのですが、この衝撃の事実が明らかになったことで士の過去の記憶が蘇り、冷酷無悲だった大ショッカー大首領時代の人格が再興します。仮面ライダー同士を互いに戦わせて同士討ちを企むことを視野に、最強の仮面ライダーを決める「ライダーバトル」への参加を歴代仮面ライダーに呼びかけ、士自身もバトルに参加して歴代仮面ライダーを次々に倒していきます。その中には、仮面ライダーV3や仮面ライダーBLACKといった昭和の仮面ライダー達も含まれていました。
全ての仮面ライダーを倒し、「ライダーバトル」の頂点に立った士は大ショッカー大首領の座に戻りますが、密かに大首領の座を狙っていた幹部のシャドームーンの策にはまり、組織を追放されてしまいます。なにもかも失い孤独の身となった士は、悪の組織の大首領だったことに失望した仲間達からも見放され、全てを失ってしまいました。
士の失意をよそに、大ショッカーは世界征服のための進出を開始し、人間狩りを開始します。人々が怪人達に次々に襲われ、老若男女問わず血が流され、悲鳴がとどろく地獄絵図・・・。
そんな士を立ち直らせたのは、かつて大ショッカーを裏切った科学者であり、ライダーマンとなった結城丈二(演・GACKT)でした。当初は自分の右腕を奪った士に激しい憎悪を向け、復讐を実行しようとした結城ですが、失意の士を見て「殺す価値がない」と一蹴。
「罪は消せない・・・背負って生きてくしかないんだ。例え孤独でも・・・命ある限り戦う。それが・・・仮面ライダーだろ。」(結城丈二)
人間狩りを行なってきた怪人軍団と戦う結城丈二の姿を見て、士は大ショッカーを潰す決意を固めます。正しき心を取り戻した士(仮面ライダーディケイド)の姿を見て、再び仲間達も集結します。しかし、多勢である大ショッカーの戦力は圧倒的。苦戦を強いられる仮面ライダーディケイド達の前に現れたのは、不滅の魂を胸に集った、『仮面ライダー(1971)』から『仮面ライダーキバ(2008)』までの歴代の仮面ライダー達でした。
「貴様らは死んだのではなかったのか?」(大ショッカー大幹部:ガラガランダ)
「ライダーの力が必要とされる限り、俺達は不死身だ!」(仮面ライダー1号)
「そしてライダーがいる限り、大ショッカーの野望は遂げさせん!」(仮面ライダー2号)
大ショッカーの攻撃を合図に、歴代仮面ライダーと怪人軍団の激闘が開始されます。歴代悪の組織の混成部隊となった大ショッカー相手に勇猛果敢に戦う仮面ライダー達。1号が指揮をとり、V3が怪人達にキック、RXと龍騎は敵を切り倒し、アマゾンは敵を崖から落とし鋭い爪で切り裂きます。戦う仮面ライダー達の中には、もちろんライダーマンも含まれていました。
大ショッカーを率いていた大幹部のガラガランダ(地獄大使)は仮面ライダー1号・2号のダブルキックで退治され、イカデビル(死神博士)はディケイド達に倒されました。
2人の大幹部を失い、追い詰められたシャドームーンはディケイドを窮地に追い込みますが、仮面ライダーWを名乗る新たな仮面ライダー(声の出演:桐山漣、菅田将暉)の登場によって形成は逆転、全仮面ライダーの一斉キックを食らい、大ショッカーのアジトごと粉砕されました。
平和が戻り、今回の戦いに集まった歴代仮面ライダー達は、ディケイドとその仲間達に別れを告げます。
「士、ここからが君の本当の旅だ。」(仮面ライダーアギト)
「お前には、俺達がついている。」(仮面ライダーBLACK RX)
「もう呼ぶんじゃねぇぞ!俺はちょー忙しいんだ!」(仮面ライダー電王/モモタロス)
9つの世界を旅を終え、仮面ライダーディケイドを誕生させた悪の根源である大ショッカーを滅ぼした士達は、世界をまわる旅を再開します。
ディケイドの旅は続き、彼はその後いくつもの世界を渡り歩き、数多くの新たな仮面ライダー達と出会っていきます。しかし、まさか彼が仮面ライダー同士の大きな内部騒乱に巻き込まれることになるとは、大ショッカーを壊滅させたばかりの彼は知るよしもなかったのです・・・。
【昭和ライダーが平成ライダーを叩き潰す!?】あなたはどっちを応援する?仮面ライダー同士の仲間割れはなぜ起こった?
『仮面ライダーディケイド(2009)』は、上述した映画『オールライダー対大ショッカー』公開期間中の同年8月30日に、テレビ放送は最終回を迎えました。しかし『ディケイド』は番組放送終了後も高い人気を堅持し続け、以降に発信された仮面ライダーシリーズの映画やテレビシリーズでも、後輩仮面ライダーのピンチにディケイドは度々駆けつけることもありました。
ある時は大ショッカーが強化された新たな組織「スーパーショッカー」を相手に戦い、またある時は、同じく東映制作の特撮ヒーロー番組である「スーパー戦隊」と共闘し、全仮面ライダーと全スーパー戦隊を結束させ、悪の連合部隊の侵攻を阻止したりと、ディケイドは番組放送終了後もその存在感を発揮し続けたのです。
時が流れ、『仮面ライダーディケイド』を輩出した平成仮面ライダーシリーズは誕生15周年を迎えます。そんな節目の年に公開された映画『平成仮面ライダー対昭和仮面ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』の物語でも、ディケイドは登場しました。
しかし、彼が踏み込んだのは昭和仮面ライダーシリーズの昭和ライダー達と、平成仮面ライダーシリーズの平成ライダー達が、あろうことか仲間割れを起こした世界でした。
この機に乗じ、新たな悪の秘密結社「地下帝国バダン」が暗躍。かつて仮面ライダー達に倒され亡者となった怪人達によって構成された当組織・・生者の世界と死者の世界をひっくり返し、よみがえって地上に侵攻しようとする計画を企てます。
悪の組織が着々と計画を進めんとするこの状況ー。
はっきり言ってしまえば、正義の仮面ライダー同士が仲間割れしている場合ではありません。
なぜこんなことになってしまったのかー。
昭和ライダー達を率いている仮面ライダー1号の主張をまとめると、「平成ライダー達の持つ死んでしまった者達への未練が、バダンが地上へ侵攻する道を造ってしまった。よってバダンを地下に封じ込めるためには、平成ライダーを叩き潰すしかない。」と力説します。
早い話が、「バダンの侵攻を許したのは平成ライダーのせいだ」と主張しているわけですが、確かに平成ライダーはそれぞれ大切な友人や仲間、師匠、恋人等を過去に亡くしており、彼らにも思い当たる節がありました。しかし平成ライダー達も、だからといって引き下がるわけにはいきません。
「ディケイド・・・お前とて死に場所を捜す旅をしていたんじゃないのか?」と、ディケイドに主張する仮面ライダー1号に対し・・・
「確かに俺は世界を旅し、多くの仲間と出会ってきた。その中には既に死んだ者もいた。だが俺はそいつらのことは忘れない。この胸に・・・永遠に刻みこんでおく!」(仮面ライダーディケイド)
「人類の平和を守るためには、優しさを捨てる覚悟も必要だ!」(仮面ライダー1号)
やはりわかり合えず、昭和と平成の仮面ライダー達は激しくぶつかりますが・・。
・・・実はこの仲間割れ、仮面ライダー1号と、同じく昭和ライダーである仮面ライダーZX(ゼクロス)が、バダンを油断させるために事前に立てていた作戦でした。
仲間割れを好機とみて、地上へ大侵攻を試みようとするバダンですが、彼らの前に立ち塞がったのは、1号とゼクロスの計画の意図を知り、団結した総勢30人の平成・昭和ライダー達でした。昭和ライダーは平成ライダーに力を貸し、さらに「スーパー戦隊」も仮面ライダー達に加勢したことで、バダンは首領もろとも壊滅してしまったのでしたー。
バダン壊滅後、昭和仮面ライダー達は平成仮面ライダー達に、浜辺を舞台に再び戦いを挑みます。それは仮面ライダー1号が、改めて平成仮面ライダー達を仮面ライダーとして認めるための「けじめ」でした。
仮面ライダー1号は、最新の仮面ライダーである仮面ライダー鎧武(ガイム)と一騎打ちし、1号は自ら負けを認めます。その理由は、1号のライダーキックから鎧武が浜辺に咲いた一輪の小さな花を守ったことでした。本来ならば、かわせたはずのライダーキックを鎧武が花の前で盾となったことで、花が戦いに巻き込まれずに済んだのです。
「たとえ・・・己を犠牲にしようとも、花一輪のために命をかける。その優しさを貫く強さこそ、本当の強さかもしれん。それを気付かせてくれたのはお前だ。仮面ライダー鎧武。」(仮面ライダー1号)
1号は鎧武に手を差し伸べます。
「志は違えど、世代の壁を乗り越え、未来を創っていくのは若者だ。良いな!未来はお前達に任せたぞ!」(仮面ライダー1号)
昭和の仮面ライダー達と平成の仮面ライダー達はそれぞれ固い握手を交わします。
平成10番目の仮面ライダーであるディケイドが握手を交わしたのは、同じく10番目の昭和ライダーであるゼクロスでした。
「お前の旅は、ここで終わるのか?」(仮面ライダーゼクロス)
「死に場所を捜す旅が、俺の生きる場所だと分かった。だから・・・俺の旅は終わらない。」
昭和と平成といった世代の壁を乗り越え、歴代仮面ライダー達は再団結するのでした。
その後も歴代仮面ライダー達の活躍が続いていき、時代は「令和」へと突入。昭和、平成へと受け継がれていった仮面ライダー達の魂は「令和」へと継承され、現在も令和仮面ライダー達は平和のために戦い続けています。
仮面ライダーディケイドは平成仮面ライダーシリーズ10周年という節目の年に誕生し、その後も当シリーズの節目節目に姿を現わし続けてきました。現在放送中の令和仮面ライダーシリーズも5作品目という節目を迎えていますが・・・。
近い将来・・・彼が私達の前に再び、通りすがる日を心待ちにしております。
最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。
(参考文献)
・吉田伸浩、『てれびくんデラックス愛蔵版 仮面ライダー鎧武』、小学館
・菅家洋也、『講談社シリーズMOOK 仮面ライダー Official Mook 仮面ライダー平成 vol.10 仮面ライダーディケイド』、講談社