Yahoo!ニュース

東京都内に住む単身者20代の食生活 急激な社会変化に対応すべく、食費を削る

池田恵里フードジャーナリスト
平成の食事で検索したのですが、出てこなかったので無機質なという意味合いをこめて(写真:アフロ)

平成生まれの世代、活気のあった日本を知らない

平成生まれのなかには、既に社会に巣立ち、早や数年、経とうとしている人もおり、昭和という時代は、いにしえになりつつある。

平成生まれの彼らは、昭和の高度経済成長の活気にあふれた日本を知る由もなく、その後、1992年まで何とか好景気の雰囲気が漂っていたものの、その経験、記憶さえもあまりない中で育った。男女雇用機会均等法が1986年に施行されて以降、女性の社会進出は以前より加速度的に増し、その女性たちの子供が平成生まれ、つまり20代に属する。

調理家電は、ほぼ出揃い、コンビニは、平成元年、すでに2万店舗に近づいていた。そしてその後、急伸し、中食、惣菜が浸透したことで、昭和に比べると、随分、楽になった。しかし急劇な社会変化に国の政策は、追いつけていない。そんな状況のなか、子育てと仕事の両立は難しく、それがしいては食にも影響を及ぼしたと言われている。既に、家族という形は変容し、一緒に食事をする「だんらん」「集う」と言う言葉さえも薄れ、より孤食へと進み、以前より、随分、一人で食べることが違和感なく受け入れられてきている。

現在、男性の初婚年齢は30.7歳、女性だと29.0歳(厚生労働省引用)。男女平均だと、29.8歳となる。より晩婚化し、なかには生涯結婚しない人も増えている。 20代=独身とも言えるのだ。

質実剛健であり、手に職を・・・

一般に、現在の20代の特徴として

・質実剛健 先行きが不透明ゆえに「節約」を基本としている。

・手に職をつける傾向が強い。

そこで今回は、東京都内に住む25歳のY氏にインタビュー、並びに食日記をお願いした。

東京都内の20代の食費 削りたくない、しかし削らざるを得ない、厳しい現状

その前にまず、東京近郊、男女、独身20代の平均食費(400人)を見ると・・・

月平均で 31,876 円は、6 年前の2008年より4,782 円ダウン(農林中央金庫2014年4月参照)。図は農林中央金庫2014年4月のデーターをもとにグラフにいたしました。

東京近郊の男女、独身20代の食費 2万から3万が最も多い
東京近郊の男女、独身20代の食費 2万から3万が最も多い

東京の物価が高いことは、誰をも容易に想像がつく。

しかしあえて最近の物価を見ると

消費者物価指数、東京都区部、2010年を基準として100%でみると

生鮮食品は2014年102.3% 2015年107.7%となっており、一昨年と比較してみても、1年で急激に上がっている。

生鮮食品を除く食品に関しても、2014年101.3% 2015年103.4%、これもまた上がっているのである。 

外食では、2010年を100%として、2014年102.9% 2015年では105.2%と上昇している。

平成22年基準消費者物価指数参照

食の物価は、明らかに上がっている。その中で、20代の食費は先述したように、月平均で 31,876 円。6 年前の2008年より4,782 円ダウン下がっている状況は、単なる節約ではなく、むしろ削っていると言えるのではないだろうか。

25歳 Y氏 前職IT フリーランス 年収300万 食費1万から2万

Y氏は、前職IT企業と言えば、一見、はなやかなイメージがある。

しかし、その一方で、徹夜はごく当たり前で、その上、付き合いもあり、身体を壊す、うつ病になっていった先輩を多く目の当たりにしたという。それもあって、Y氏は、まったく徹夜をしなくなった。

当時、住んでいたところも決して賃料は、安くなかったという。

「ITの会社はおおよそ良い場所に会社があり、そして残業も多いことから、どうしても賃料の高いところに住むことが余儀なくされるんです」

たしかに、IT企業に勤めている友人に聞くと、夜中に帰宅することも多く、タクシーを利用すると結構、お金がかかる。だとすれば、家賃が多少高くても近くに住むというという人が多い。

Y氏は、IT企業をやめ、今はフリーランス。将来は、資格を取りたいために勉強中だとか。しかし資格をとるには、3万から10万ほどかかり、本代も5000円と言った高額なものが多く、やむなく食費に回せないという。

平日のY氏の朝食 マックですます
平日のY氏の朝食 マックですます

「食生活は悪いと思う。やっぱりITは、勉強が命というか、そういう世界ですので、そこはなかなか削れないんですよね、コンビニ、マクド、吉野家、これが僕のローテーション、果物、野菜は親から送ってもらって食べています」

このほかにプロテインを飲むと言う。

吉野家の牛丼で夕食 とある土曜日
吉野家の牛丼で夕食 とある土曜日

このように、朝、昼、夜は自ら作るのではなく、ついついもっぱら外食に頼ってしまう。今回、食日記でも登場した果物は朝のみであった。

「今のままではちょっとダメなので、頑張って、もうちょっと評価していただいて、お金を稼いで、食費にあてたい・・・」

生き抜くためにも勉強は怠らない、その一方で

大都会、東京は地方に比べ、セミナー、勉強会など圧倒的に機会に恵まれ、勿論、情報も溢れており、次に来る時代の流れもつかみやすい。しかしその一方で、大都会に住むことは、極めて厳しい。Y氏のインタビューを通し、これは決して特異なケースではないと思えた。真面目に日々、懸命に生活しても、社会の変化はあまりにも速く、次の時代に立ち遅れないためにも、勉強は怠れないし、その結果、食事を削らざるを得ない。仕事を選択するから、起こると言われるかもしれない。しかし、Y氏の話を聞き、彼ら若い世代の未来を考えると、社会の変化はあまりにも早く、それによって食生活にひずみが生じ、健康にも後々及ぼさないかと暗澹たる気持ちになった。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

池田恵里の最近の記事