新型コロナワクチンの副反応を抑えるため、予防的に解熱鎮痛薬を服用しても大丈夫?
ワクチンを接種した後、倦怠感や熱などの副反応が出現して、次はもう接種したくないと思った人もいるでしょう。あらかじめ解熱鎮痛薬を服用することが許容されるかどうか、私見もふまえて書きたいと思います。
3回目接種をしない理由の第1位
東京iCDCリスコミチームによる都民アンケート調査によると、新型コロナワクチンの3回目接種をしない理由として最も多かったのは、「1回目・2回目の接種後の副反応がつらかったから」(35.2%)と報告されています(図1)。
新型コロナワクチンは接種回数を重ねるほど接種率が下がっていますが、前回経験した副反応に対する懸念が影響している可能性があるかもしれません。
解熱鎮痛薬はワクチンの効果に影響なし
日本の研究によると、ワクチン接種後に熱が出るほど抗体価が高くなることが示されています(2)。
「じゃあ、熱が出ても我慢しなければ」と思うかもしれませんが、いえいえ、我慢しないでください。
実は、熱そのものを抑えても抗体価には影響ありません。解熱鎮痛薬を服用しても、その後得られる抗体価は下がらないことが示されています(図2)。
これまで、「解熱鎮痛薬で副反応を抑えると、抗体価上昇も抑えられる」という都市伝説がありましたが、少なくとも新型コロナワクチンに関しては否定的です。
ワクチンを接種した時点で、その人における抗体価上昇の程度はある程度決定されており、解熱鎮痛薬で副反応を抑え込んでも、そこまで抗体価に影響を与えないと思われます。
日本で用いられる代表的な解熱鎮痛薬は、アセトアミノフェンと非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs:エヌセイズ)です(図3)。
ちなみに、アセトアミノフェンあるいはNSAIDsを服用したワクチン接種者では、得られる抗体価に有意な差はみられていません(3)。
そのため、どちらか慣れている解熱鎮痛薬を使用すればよいと思います。
副反応出現前に予防的に服用してもよい?
さて、こうなると、副反応が出る前に予防的に解熱鎮痛薬を服用したいと思いますよね。
しかし、厚労省のウェブサイトには「症状が出る前に、解熱鎮痛薬を予防的に繰り返し内服することについては、現在のところ推奨されていません」と記載されています(4)。
この見解に異論はありませんが、私自身は1回目接種で高熱が出てつらかったので、2~4回目接種は解熱鎮痛薬を副作用出現前に予防的に服用しました。
ここからは私見です。ワクチンによる熱などの副反応がつらかった経験があり、かつ服用したことがある解熱鎮痛薬を用いるのであれば、副反応が出るまで待たずに予防的に服用してもよいのでは、と思います。
たとえば、午前11時にワクチンを接種したなら、昼食後、夕食後などのように間隔を空けて2回ほどアセトアミノフェンを服用すれば、以前悩まされた副反応はある程度抑えられるでしょう。
もちろん、他の薬を服用している場合、妊娠中、授乳中、高齢者、胃・十二指腸潰瘍、腎臓の病気がある場合など、飲める薬が限られることがあります。また、アナフィラキシーなどの重篤な副反応は解熱鎮痛薬で予防できませんので、ご注意ください。
あくまで「前回までの熱などの副反応がしんどかった人」が、「服用したことがある解熱鎮痛薬を予防内服する」という話です。
まとめ
3回目以降のワクチン接種を受けなかった人の3人に1人が、以前出たワクチンの副反応を懸念しています。
広くワクチン接種をすすめるのであれば、解熱鎮痛薬の使い方をもう少し緩和してもよいのではと考えます。
解熱鎮痛薬を飲んでも抗体価は十分得られますので、追加接種をご検討ください。
(参考)
(1) 第105回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年11月9日)資料3-8-③西塚先生提出資料. (URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001010897.pdf)
(2) Tani N, et al. Vaccine. 2022 Mar 18;40(13):2062-2067.
(3) Lafleur BJ, et al. medRxiv. DOI: 10.1101/2022.10.14.22281103
(4) 厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A ワクチンを受けた後の発熱や痛みに対し、市販の解熱鎮痛薬を飲んでもよいですか。(URL:https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0007.html)