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新型コロナ軽症者向けセンターが全国で一斉に稼働 療養証明書や入院給付金にも大きな変更

倉原優呼吸器内科医
(提供:イメージマート)

これまでは保健所が主体的になって陽性者の健康観察をおこなっていましたが、軽症者が自宅療養する場合のサポートとして、各自治体が「陽性者登録センター」を含めた「健康フォローアップセンター」を9月26日から一斉に稼働させます。この概要と、療養証明書や入院給付金がどうなるかについても解説します。

軽症者向けセンター

9月26日から新型コロナ感染者の全数把握を見直し、全国一律で届け出を簡略化することが決定されています。具体的には、①65歳以上の方、②重症化リスクがあり治療薬の投与等が必要と医師が判断する方、③入院を要する方、④妊婦、の4類型に届け出が限定されます。

「陽性者登録センター」を含めた「健康フォローアップセンター」は、届け出対象外となるリスクの低い陽性者を支援する仕組みです(図1)。自治体に1つ設置されます。名称は統一されていないので、各自治体で「陽性になった場合」というページを見ていただくと分かるかと思います。

以下の厚労省のウェブサイトにも各自治体のセンターのリンクが貼られています。

■厚生労働省ウェブサイト「新型コロナウイルス感染症について」(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

※「Withコロナの新たな段階への移行に向けた見直しについて(令和4年9月26日~)」の「コロナ陽性の場合は」にエクセルのリンクが貼られています(9月28日追記)。

図1. 軽症者向けセンターの対象者(筆者作成)
図1. 軽症者向けセンターの対象者(筆者作成)

さて、当該センターには、医師が配置されています。また酸素飽和度を測定するパルスオキシメーターの貸し出しや、外出ができない人のための配食などの生活支援が行われます。これまで行ってきた保健所や自治体の支援を、ここにパッケージしている自治体が多いようです。

具体的なフローは自治体によって異なりますが、おおむね図2のようになります。コロナ禍初期とは異なり、国民に自主的な健康観察をお願いする流れになりつつあります。

図2. 軽症者向けセンターの概要(参考資料1をもとに筆者作成)
図2. 軽症者向けセンターの概要(参考資料1をもとに筆者作成)

療養証明書はどうなる?

上記4類型に該当しない陽性者のほとんどは、9月26日以降、療養証明書が原則発行されなくなります。

My HER-SYS(マイハーシス)についても元来「新型コロナ陽性の診断を受け、医療機関から発生届が保健所に提出されている人」が対象でしたから、軽症者は電子証明ができなくなります。

入院給付金はどうなる?

これまでは、新型コロナと診断され、宿泊施設や自宅で療養をされた場合は、約款上の「入院」として取り扱い(みなし入院)、特別に入院給付金等が支払われていました。

重要なことですが、9月26日以降、多くの保険会社は、上記4類型に該当しない陽性者のほとんどを入院給付金の支払いの対象外とします(図3)(2~5)。9月25日までに陽性となった人については、9月26日以降に請求したとしても、給付金を支払ってくれる保険会社が多いようです。

図3. 2022年9月26日以降の入院給付金支払対象(大手保険会社例)
図3. 2022年9月26日以降の入院給付金支払対象(大手保険会社例)

医療機関の逼迫を避けるために始まった取り組みなので、書類発行を求めて新たに医療機関に負担がかかることは避けてほしいのですが、新型コロナに罹患したことが確認できる代替書類は以下の通りとなっています(6,7)。

・My HER-SYSの療養証明書(電子的証明) ※みなし陽性者を除く届出対象者のみ発行可能

・保健所から陽性者に出された案内文(医療機関で配布された患者説明用シート等)

・診療明細書(医学管理料に「二類感染症患者入院診療加算」(外来診療・診療報酬上臨時的取扱を含む)が記載されたもの)

・医療機関等で実施されたPCR検査や抗原検査の結果がわかるもの

・コロナ治療薬が記載された処方箋・服用説明書 ・陽性者サポートセンターへの登録結果(SMS等)

・PCR検査や抗原検査を実施する検査センター(医療機関以外でも可)の検査結果(市販の検査キットは除く)など

こうした書類の提出を学校・企業・保険会社等が求めないよう通達が出されていますし、届け出対象者以外はもう給付金の支払い対象外ですので、医療機関に代替書類を求める人が増えないことを祈るばかりです。

まとめ

以前のように新型コロナが陽性になっても、保健所や医療機関が対応する時代ではなくなりました。このような過渡期を経て、新型コロナがありふれた感染症になっていくのかもしれません。

現場が混乱しないように、上手に「引き算」していってほしいと思います。

(参考)

(1) With コロナの新たな段階への移行に向けた療養の考え方の見直しについて (確認依頼)(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000986408.pdf

(2) アフラック生命保険株式会社. 新型コロナウイルス感染症による「みなし入院」の取扱いとお手続き書類について. (URL:https://www.aflac.co.jp/info/covid19_20220916.pdf

(3) 日本生命. 新型コロナウイルス感染症に関するお知らせ(URL:https://www.nissay.co.jp/coronavirusoshirase/

(4) 損保ジャパン. 新型コロナウイルス感染症における「みなし入院」の取扱いおよび 療養証明書(書面)の取扱方法の変更について(URL:https://www.sompo-japan.co.jp/-/media/SJNK/files/news/2022/20220909_1.pdf?la=ja-JP

(5) 住友生命. 新型コロナウイルス感染症 宿泊療養・自宅療養による入院給付金のお取扱いについて(URL:https://www.sumitomolife.co.jp/infolist/coronavirus9_002.html

(6) 一般社団法人生命保険協会. 新型コロナウイルス感染症による宿泊施設・自宅等療養者に係る療養証明書の取扱い等について(URL:https://www.seiho.or.jp/info/news/2022/20220901.html

(7) 一般社団法人日本損害保険協会. 新型コロナウイルス感染症による宿泊施設・自宅等療養者に係る 療養証明書の取扱い等について 【No.22-10】(URL:https://www.sonpo.or.jp/news/release/2022/2209_01.html

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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