好中球性皮膚症って何?症状や治療法をわかりやすく解説
今回は、好中球性皮膚症(好中球性皮膚疾患)について詳しく解説していきます。聞き慣れない病名かもしれませんが、少しずつ理解を深めていきましょう。
好中球性皮膚疾患とは、好中球という白血球の一種が皮膚に大量に集まることで起こる一連の病気のグループです。皮膚に現れる症状は様々で、赤いぶつぶつ、吹き出物、膿を持った湿疹、結節、潰瘍など多岐にわたります。皮膚の症状だけでなく、発熱などの全身症状を伴うこともあるのが特徴です。
この病気グループの原因はまだ完全にはわかっていませんが、自己炎症性疾患という別の病気グループとの関連が深いことがわかってきました。また最近では、TNF-αやIL-1、IL-12/23、IL-17といった炎症を引き起こす物質が、好中球性皮膚疾患で重要な役割を果たしていることが明らかになっています。
【自己炎症性疾患との関係 - 好中球性皮膚疾患を理解するためのカギ】
好中球性皮膚疾患と自己炎症性疾患は、症状や原因となるメカニズムに多くの共通点があります。自己炎症性疾患では、インフラマソームと呼ばれる炎症を引き起こすタンパク質の複合体に異常が見られ、IL-1やIL-36といった炎症を促進する物質が過剰に作られてしまいます。これらの物質は、好中球性皮膚疾患でも重要な役割を担っているのです。
例えば、DIRA症候群やDITRA症候群という自己炎症性疾患では、全身に膿疱ができるのが特徴ですが、これは好中球性皮膚疾患に似ています。また、壊疽性膿皮症はPAPA症候群やPASH症候群といった自己炎症性疾患の一部として現れることがあります。興味深いことに、これらの症候群に伴う壊疽性膿皮症と、単独で現れる壊疽性膿皮症では、皮膚の組織で見られる炎症の特徴に違いがないことがわかっています。このことから、異なる原因が同じような炎症状態を引き起こしている可能性が示唆されています。
【最新の治療法 - 病気のメカニズムから生まれた新しい選択肢】
昔は、好中球性皮膚疾患の治療といえば、免疫を全体的に抑える治療法が中心でした。しかし、病気のメカニズムが少しずつわかってくるにつれ、より狙いを絞った治療法が登場しつつあります。
TNF-α、IL-12/23、IL-1、IL-17など、炎症を引き起こす物質を標的とした生物学的製剤と呼ばれる薬が、各疾患で効果を示しています。中でも注目すべきは、2022年に全身性膿疱性乾癬の治療薬として承認されたspesolimabという薬です。これは、IL-36受容体というこの病気に関わる重要な物質を狙い撃ちにする世界初の治療法であり、希少ながら重篤なこの病気の治療に新たな光をもたらしました。
さらに、JAK/STATという炎症の信号伝達に関わる経路や、インフラマソームそのものを直接抑える治療法など、より上流の仕組みを標的とするアプローチも、好中球性皮膚疾患の将来有望な治療コンセプトとして期待されています。
【各疾患の診断と治療の現状 - 課題と展望】
好中球性皮膚疾患は、症状が多様で診断基準がはっきりしていないため、特に壊疽性膿皮症やSweet症候群では診断が遅れがちです。現在は、皮膚の組織検査や症状から総合的に診断していますが、もっと客観的な診断基準の確立が求められています。
治療面では、膿疱性乾癬以外の疾患では、まだ専用の治療薬が承認されていないのが現状です。このため、臨床現場では試行錯誤しながら治療法を選んでいるのが実情です。各疾患のメカニズムを解明し、臨床試験で治療効果を確かめていくことが急務だと言えるでしょう。
参考文献:
- Bonnekoh H, Erpenbeck L. Neutrophilic dermatoses – Pathomechanistic concepts and therapeutic developments. JDDG: Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft. 2023;21:374–380. (https://doi.org/10.1111/ddg.15055)