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適切なタイミングは東京五輪後。最大の懸念は森保監督の手腕を評価する立場にある技術委員会の問題

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:つのだよしお/アフロ)

決断を下すべきタイミング

 U-23アジア選手権でのグループリーグ敗退によって騒がしくなった森保兼任監督の進退問題は、その後の田嶋会長および関塚技術委員長のコメントから推察すると、続投の方向性が規定路線化しつつある。

 さもありなん。

 このタイミングで解任を決めたとなれば、それこそ任命責任の問題が噴出するからだ。その類の危機管理能力に長けた田嶋会長が、そのような初歩的過ちを犯すはずがない。

 もっとも、森保監督にとってこの世代の代表チームを現場で率いたのが3回目にすぎなかったこと、テスト的な色合いが濃いメンバー編成で臨んだこと、そしてJFA(日本サッカー協会)として事前に今大会におけるノルマを求めた形跡がなかったことなどを考えれば、ここで森保監督に見切りをつけること自体に無理がある。

 何より、森保監督はU-23代表監督であると同時に、A代表監督でもある。期間限定チームにすぎない世代別代表を率いることと、常にその国のトップオブトップであるA代表を率いることの重みの違いは、言わずもがな。

 にもかかわらず、仮に28試合も率いているA代表における森保監督の仕事ぶりを分析、評価するのではなく、まだ5試合しか率いていない東京五輪世代代表での仕事ぶりから解任に踏み切れば、それこそJFAのマネジメント能力が疑われかねない。

 そもそも困難を承知で兼任監督を任せた側として、それでは森保監督に対してあまりにも失礼な話だ。

 仮に横内コーチを昇格させて森保監督をA代表に専念させるにしても、両方の監督の任を解くにしても、その後の舵取りを考えると、ここで下手に動けば手詰まりを起こすことは目に見えている。

 おそらく適切なタイミングは、東京五輪後だろう。

 もはや9月から始まるW杯アジア最終予選を森保監督に任せるかどうかは、それまでにしっかりとA代表での森保監督の仕事ぶりを分析、評価したうえで行うのが現実的だ。もし解任に踏み切るのであれば、それまでに次期監督候補との下交渉を進めておく必要もある。

 すなわち、東京五輪は一か八かの賭けになることは必至。本来なら開催国として頂点を目指してしかるべきビッグイベントではあるが、それは名前だけの兼任監督状態をほぼ放置したまま時間を空費してしまったことの大きな代償として受け止めるしかない。

 残念なことではあるが、あとは2010年南アフリカW杯や2018年ロシアW杯で見せたように、三度その賭けが成功することに望みを託すしかないのが実情だ。

 ただし、開催国が組み合わせに恵まれ、強豪国がそれほど力を入れない傾向にある五輪という舞台を考えれば、その賭けが吉と出る可能性は十分にある。

 逆に、たとえその賭けが成功したとしても、それがそのまま森保監督の評価となってしまわないように注意することが重要になる。あくまでも、森保監督の手腕はそれまでのA代表の仕事ぶりで評価すべきだろう。

機能不全の技術委員会

 それよりも差し迫った問題は、現在の技術委員会が森保監督の手腕を正しく分析、評価できるかどうかという点だ。これは、森保監督の手腕以上に疑わしい根本的な問題である。

 思い出されるのは、2018年7月。森保代表監督の就任が発表される前に行われた関塚技術委員長によるロシアW杯の総括会見だ。

 田嶋会長の口から出た「オールジャパン」、「ジャパンズウェイ」なるフレーズに合わせるかのようなシーンだけを集め、「勇気を持って」、「粘り強く」といった抽象的な言葉だけで西野ジャパンのサッカーを総括した技術委員長の分析解説は説得力ゼロ。この国のサッカー技術部門のトップを務める立場の人物とは思えないような大会総括を目の当たりにして、絶望したことを思い出す。

 以降、会見などで技術委員長の口から森保ジャパンのサッカーの中身について具体的に語られたことはない。結局、カタールに完敗して優勝を逃したアジアカップの分析、総括も公にされず、その後も森保監督の仕事ぶりについて客観的評価を下すようなコメントも聞いたことがない。

 技術委員会は、果たして現在の森保ジャパン(A代表)をどのように評価しているのか?

 結果は誰が見ても明確ゆえ、知りたいのはサッカーの中身や指揮官の采配ぶりを技術委員会としてどのように分析、評価しているかという点であり、たとえばA代表とU-23代表でそれぞれ異なるシステムと戦術で強化を進めることに対するメリット、デメリットをどのように理解しているかという点だ。

 百歩譲って、それらの評価を公の場で語ることを禁じられているからそうしないと好意的に解釈するとしても、兼任監督に対するサポート体制、強化計画の立案と遂行という部分において、これまで技術委員会が果たしてきた役割を高く評価することができないことに変わりはない。

 1月29日に予定されている技術委員会では、今回のU-23アジア選手権の失態を受けて、これまでの強化プロセスの検証や今後の方針についての話し合いが行われるという。

 果たしてその場でサッカーの具体的な中身や監督の采配ぶりは話し合われるのか?

 仮に監督を信じて全力でサポートすることの合意を導き出すためだけの話し合いに終始したとしたら、東京五輪はもちろん、また2022年W杯も一か八かの賭けで臨むことになるだろう。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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