50代男性、父親を介護していた母親が倒れたが「僕は介護できない!」
高齢の親の2人暮らしでは、一方に介護が必要になると、もう一方の親による老老介護が始まるケースが一般的です。しかし、介護する側が倒れることもあります。Bさんの両親も、父親を介護していた母親ががんになりました。
Bさんの事情:フルタイム勤務だから介護はムリ!
「両親とは二世帯住宅で暮らしています。父親は要介護4で、母親(自立)が主となって父の介護をしていました。その母親が、がんで入院することに。僕たちはフルタイム勤務なので、父の介護をすることは困難です。母が退院しても、これ以上の在宅介護は難しい」
◎Bさんの選択
父親は介護付き有料老人ホームに入居。母親も退院後は要介護認定を申請して、必要に応じて在宅で居宅サービスを利用する予定。
【解説】
両親それぞれの介護方法を考える
両親のうち一方がもう一方を介護している場合、介護を行っていた親が倒れると、「 要介護の親をどうするか?」で途端に困ることになります。
すぐに担当のケアマネジャーに相談し、今後の方策を考える必要があります。居宅サービスのショートステイを利用して、要介護の親に一時的に施設に滞在してもらうといった方法も考えられます。しかし、将来的に在宅介護を復活できるかどうか、判断が難しいことも多いでしょう。
Bさんは両親としっかり向き合い、話し合った上で、父親には介護付き有料老人ホームに入居してもらいました。母親も要介護認定を申請して、退院後は必要に応じて在宅で居宅サービスを利用する予定だそうです。
どのような施設が適切かわからない場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談すれば、地域にある施設やその特徴などを教えてもらえるでしょう。公的施設の空き情報もおおむね把握していると思います。
焦りは禁物
特別養護老人ホーム(特養)などの公的施設は、希望してもすぐに入居できず、待機期間がある場合もあります。
一方で、民間の有料老人ホームは比較的スムーズに入居できます。Bさんは父親のために、自宅から近い有料老人ホームを複数見学し、「 ここなら」と思えるところを選びました。24時間体制で介護を行ってくれる介護付き有料老人ホームです。
「一口に『有料老人ホーム』といっても、介護の体制も費用の支払い方も、施設ごとに違うので混乱しました。見学が不可欠ですね」とBさん。父親は体験入居を活用し、そのまま入居しました。
もし、適当な施設が見つからなくても、焦って意に反するところを選ぶのではなく、とりあえず、介護老人保健施設(老健)に入ってもらう、ことも検討しましょう。老健は永続的に入居する施設ではなく、在宅復帰を目標に3~6か月ほどを目途に入る施設です。その間に、納得できる施設を探すこともできますし、在宅介護を行う環境が整って自宅に戻ることもできるかもしれません。
<施設説明>
●介護付き有料老人ホーム
施設職員が24時間体制で介護サービスを提供する民間施設。都道府県から「特定施設」の指定を受けている。
【入居条件】要支援1以上 【費用目安】初期費用0~1億円, 12~40万円/月
●介護老人保健施設
永続的な入居ではなく、在宅復帰を目指すための公的施設。特養の入居待機場所として利用しているケースも多い。入居期間は原則3か月ほど。
【入居条件】要介護1以上 【費用目安】初期費用0円, 6~17万円/月
◆老老介護が行き詰った場合の施設探しのポイント
・どのような施設が選択肢となるか、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する。
・一定期間、介護老人保健施設への入居も候補にする。
・特に民間施設を選ぶ場合、介護体制や費用の支払い方法など個別に異なるため見学は必須。できれば体験入居も利用する。
・当面、在宅のまま介護保険のショートステイサービスで乗り切るのも選択肢。
※この記事は2024年11月7日に発売された自著『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本 第3版』(翔泳社)から抜粋し一部改編し転載しています。