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朝倉未来vs.平本蓮の勝敗予想が真っ二つに分かれる理由─。7・28『超RIZIN.3』

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
『FACE OFF』で睨み合った朝倉未来(左)と平本蓮(写真:RIZIN FF)

平本蓮が「負けたら引退」を撤回

「オレ(負けても)引退しないですから。するわけないでしょ。勝手に引退かけてやってくれよ。美しいものでもないし。朝倉未来の親友の那須川天心も『簡単に引退とか言うな』って言ってた。簡単にお前も引退するなよって感じです。引退はしません(結果が)どうなっても」(平本蓮)

「俺が負けたら必ず引退します。でも絶対に負けません。100%勝ちますから楽しみにしていて下さい」(朝倉未来)

7月6日、東京・品川区で行われた『FACE OFF』に登場した朝倉未来(JTT)と平本蓮(剛毅會)は、イベントの最後にそう発言した。

両雄は、7・28さいたまスーパーアリーナ『超RIZIN.3』のメインエベントで激突する。対戦発表記者会見が東京・六本木で開かれたのは3月のこと。そこで朝倉、平本はともに「負けたら引退する」と口にしていたが、それを平本が撤回した形だ。

「負けたら引退」発言を撤回した平本蓮。軽妙なトークでイベントを盛り上げた(写真:RIZIN FF)
「負けたら引退」発言を撤回した平本蓮。軽妙なトークでイベントを盛り上げた(写真:RIZIN FF)

朝倉は本気で「負けたら引退する」と言った。だが平本は、負けても引退することはないだろうと私は思っていた。よって撤回に驚きはない。

平本も負けて引退することが怖くなり前言を翻したわけではなかろう。こう言いたかったのだ。

(引退をかけて闘うなんてことはやめよう。どっちが勝っても負けても、この先もお互い闘い続けようぜ)

いずれにも勝機はある

果たして、注目の一戦を制するのはどっちか?

『超RIZIN.3』をPPV生配信するABEMAが6月下旬に「視聴者・勝敗予想アンケート」を行っている。そこでは朝倉の勝利を予想する者が多かったようだ。集計結果は次の通り。

〈朝倉勝利78.8%、平本勝利21.2%〉。

だが格闘技現役選手・関係者の予想に目を移すと、その差がグッと縮まりほぼ互角。YouTube、SNSを覗くと、勝敗予想が真っ二つに分かれている。

堀口恭司(RIZINフライ級王者/ATT)、井上直樹(キルクリフFC)、YA-MAN(RISE OFG65キロ級王者/TARGET SHIBUYA)、クレベル・コイケ(元RIZINフェザー級王者/ボンサイ柔術)、青木真也(元ONE世界ライト級王者/パラエストラ東京・Evolve MMA)、鈴木千裕(RIZINフェザー級王者/クロスポイント吉祥寺)、那須川天心(帝拳)、安保瑠輝也(元K-1スーパーライト級王者/MFL team CLUB es)らは「朝倉の勝利」を予想。

対して、スダリオ剛(HI ROLLERS ENTERTAINMENT)、鶴屋怜(THE BLACKBELT JAPAN)、大沢ケンジ(和術慧舟會HEARTS主宰)、石渡伸太郎(元パンクラス・バンタム級王者/CAVE)、吉成名高(ムエタイ3階級制覇王者/エイワスポーツジム)、矢地祐介(フリー)、塩田”GOZO”歩(パラエストラ八王子)、城戸康裕(TEAM ONE)らが平本が優位と見ている。

それぞれで予想の根拠は幾らか異なるが、大まかに言えば次のようになる。

<MMAファイターとしての実績と総合力で朝倉優位>

<打撃勝負と勢い&成長度で平本優位>

予想が真っ二つに分かれたことは、いずれにも勝機があることを示す。

おそらく朝倉はテイクダウンを狙う。これが決まれば試合のペースを一気に握れよう。だが、これを平本が許さなかった場合はスタンド勝負に。となれば精度の高い打撃技術を持つ平本が優位になるのか。

サングラスをかけてステージに登場した朝倉未来は「復帰戦にラクな相手を用意してもらった。俺は、その先を見据えている」と自信を漂わせた(写真:RIZIN FF)
サングラスをかけてステージに登場した朝倉未来は「復帰戦にラクな相手を用意してもらった。俺は、その先を見据えている」と自信を漂わせた(写真:RIZIN FF)

朝倉未来が判定で勝つ

二人のSNS上でのトラッシュトーク合戦が始まった4年前なら、ほぼ全員が「朝倉優位」と予想したことだろう。MMAファイターとしての実力に大きな開きがあった。

だが、いまは実力差が縮まりつつある。平本がMMAの練習を積み試合を重ねる中で成長、逆に朝倉は試合で負けることが多くなった。闘いに対するモチベーションも低下しているようにも見える。それが、勝敗予想が真っ二つに分かれた理由だろう。

それでも私の予想は「朝倉優位」だ。

ノーマルに考えて二人の実績には大きな開きがある。

だがポイントは、ヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)にタップを奪われ、キックボクシングルールでの闘いとはいえYA-MANに殴り倒された朝倉がメンタル、フィジカルの両面を立て直せているか否か。

もし、YA-MANに敗れた時と同様のコンディションでリングに上がったならば、平本の勢いに飲み込まれてしまう可能性も十分にあろう。

だが今回、その心配は必要なさそうだ。

朝倉は言った。

「ジム(の在り方)も変わり、これまでで一番格闘技に向き合えている。だから自信しかない。去年は情けない姿を見せてしまったが、今年は俺の大復活。クレベルとか鈴木千裕にも勝てると思ってる。その辺のストーリーも見せたい」

さらに闘い方については、こう話している。

「喧嘩の強さを見せますよ。綺麗に闘うつもりはない、バチバチに行く。スクランブルでのカラダの強さ、気持ちの強さを(平本は)体感することになる」

その言葉通りにフィジカル、メンタル両面でのコンディションが整えられているなら、朝倉が試合をコントロールできよう。

因縁の一戦、「絶対に負けたくない」との想いを強くしている朝倉が、判定で勝つと見るが─。

真夏のさいたまスーパーアリーナで、五輪期間中に繰り広げられるエポックファイトの行方を確と見届けたい。

〈7月28日、さいたまスーパーアリーナ『超RIZIN.3』主要対戦カード〉

『超RIZIN.3』では、上記カードを含め十数試合が予定されている(提供:RIZIN FF)
『超RIZIN.3』では、上記カードを含め十数試合が予定されている(提供:RIZIN FF)

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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