「取り調べでボロボロ」女子大生らの姿に北朝鮮国民も衝撃
2017年に公開された韓国映画『コンフィデンシャル/共助』。北朝鮮の捜査員が韓国に派遣され、現地の刑事とともに犯罪グループを追うスパイアクションだが、『愛の不時着』のヒョンビンや少女時代のユナらスターが出演したとあって広範な人気を呼び、観客動員数718万人の大ヒット作となった。
そんな映画を見た北朝鮮の大学生2人が先月末、公開裁判にかけられた。平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
公開裁判が行われたのは南浦(ナムポ)市運動場。動員された500人もの若者が見守る中、引き立てられてきたのは、南浦教員大学の女子学生2人。観客席の最前列には、同学の学生が一列で立たされた。
2人は、南朝鮮(韓国)映画や、プロの歌手がバトルを繰り広げる音楽番組などを視聴するばかりか、流布させた容疑で5月末に逮捕され、6カ月間の予審(起訴前の証拠固めの段階)を経て、裁判にかけられた。
長期にわたり強圧的な取り調べを受けた2人の姿はボロボロで、見る影もなかったという。激しい拷問にかけられたことは想像に難くない。
裁判ではまず、2人がコロナ対策の規則に違反していたことが指摘された。
「コロナ陽性者発生で最大非常防疫体制を稼働し、大学も授業を中止して学生を自宅隔離にさせたのに、全国的にウイルスとの死闘が繰り広げられる中で、鍵をかけた家の中で南朝鮮の映像を見ていた」
裁判官は次いで、映画の内容について触れた。
「わが国(北朝鮮)の安全員(警察官)と南朝鮮の国家安全企画部が力を合わせて、事件を捜査したり、難関を乗り越えたりする映画を見て、わが国の安全員を誹謗し、南朝鮮傀儡一味を庇護し、ケラケラと笑っていた」
他にもスパイを題材にした映画はあるが、南北が協力して捜査するという点から、学生らが見たのは『コンフィデンシャル/共助』と見るのが妥当だろう。
裁判は「国が苦しい時期に社会主義制度の守護より、瞬間の安逸と快楽にはまり、革命の落伍者に転落した若者が多い」として、家庭と社会における教育がなっていないと批判した上で、2人に15年の労働教化刑(懲役刑)を言い渡した。
うなだれて震える2人の姿を見た人々は「見てはいけないものを、なぜ見たのか」と憐れむ反応を見せたという
最近、韓流ドラマや映画などを視聴し、拡散させた高校生3人が公開される一件があったが、それに比べると懲役15年はまだマシな方と言えよう。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
しかし、不衛生で暴力と飢餓が蔓延するのが、北朝鮮の教化所(刑務所)。親が金持ちでワイロで刑期を短縮させたり、頻繁に通って食べ物を差し入れたりしない限りは、生きて出られることはないだろう。