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経済再開、感染者数が全米最多となったロサンゼルスの今【#コロナとどう暮らす

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
マスク姿の若者が「黒人の命は大切だ」と訴える光景もニューノーマルに。筆者撮影

 新型コロナウイルスによる1日の新規感染者数が最多記録を更新し続けているアメリカ。6月25日には、その数が4万人を突破した。

 新規感染者数の増加は、特に、アメリカ南部やアメリカ西部で顕著だ。カリフォルニア州では、米国時間6月24日、1日の新規感染者数が7,149人と過去最多を記録、6月25日も5,349人と5,000人を優に突破、ニューサム知事はツイッターでマスク着用を強く呼びかけている。

ロサンゼルス郡の新型コロナウイルスによる感染者数は、全米の郡の中では最多となった。出典:Johns Hopkins Coronavirus Resource Center
ロサンゼルス郡の新型コロナウイルスによる感染者数は、全米の郡の中では最多となった。出典:Johns Hopkins Coronavirus Resource Center

 カリフォルニア州の中でも、ロサンゼルス郡は新規感染者数が1日2000人を超える日が増え、米国時間6月26日現在の感染者数は9万1,577人と全米の郡の中では最多。感染者数が10万人を超えるのは時間の問題だ。

 そんな中、経済再開とともに“ニューノーマル”を迎えたロサンゼルスはどう変わったのか? 街の様子を覗いてみた。

サンタモニカ市のショッピング通り「サード・ストリート・プロムナード」。抗議デモに乗じて略奪行為が起きたため、経済再開後も、板で防護状態の店もある。筆者撮影
サンタモニカ市のショッピング通り「サード・ストリート・プロムナード」。抗議デモに乗じて略奪行為が起きたため、経済再開後も、板で防護状態の店もある。筆者撮影

 筆者が住むサンタモニカ市は、ロサンゼルス郡の中でも主要な観光地の1つである。

 同市の中心となっているショッピング通り「サード・ストリート・プロムナード」には、おしゃれなブティックやレストランが軒を連ねているが、経済再開後の週末にもかかわらず、人通りは思ったより少なかった。先日の抗議デモに乗じて起きた略奪行為のため、店に防護板を張り巡らせ、今も、警戒態勢を維持している店も目につく。

 ブティックの店頭には、店内ではソーシャルディスタンスを保持し、マスクを着用すること、気分の悪い人は在宅すること、オンラインでショッピング可能なことなどを伝える看板が配置されている。店内のあちこちにも、ソーシャルディスタンス保持を呼びかける看板が立てられている。

店内のあちこちに、ソーシャルディスタンスを呼びかける掲示板を配置している「アーバン・アウトフィッターズ」。筆者撮影
店内のあちこちに、ソーシャルディスタンスを呼びかける掲示板を配置している「アーバン・アウトフィッターズ」。筆者撮影
ブティックでは、レジと客の間にアクリル板を立てることはニューノーマルになった。「アンソロポロジー」にて筆者撮影
ブティックでは、レジと客の間にアクリル板を立てることはニューノーマルになった。「アンソロポロジー」にて筆者撮影
入店者数が16人と制限されているこの店では、入り口で入店者数をカウントしている。筆者撮影
入店者数が16人と制限されているこの店では、入り口で入店者数をカウントしている。筆者撮影
店頭の看板で、店内でのマスク着用やソーシャルディスタンス保持、気分が悪い場合は在宅することなどを呼びかける「J Crew」。筆者撮影
店頭の看板で、店内でのマスク着用やソーシャルディスタンス保持、気分が悪い場合は在宅することなどを呼びかける「J Crew」。筆者撮影

 店内には消毒液を置き、レジとの間にはアクリル板が設置されている。保健当局により入店者数が制限されているため、店内の客数を記録している店もある。

 ユニクロ・サンタモニカ店では、店内は矢印で導線が示されている他、モバイル・チェックアウトを推奨、再利用袋を使う場合は自分自身で商品を袋に入れるよう促している。

 高級デパード「ノードストローム」は、入り口に設置したテーブルの上に、消毒液の他、客が自由に手にとれるようにゴム手袋とマスクまで置いている。万全の対応に感心した。入店時には、消毒液を両手に吹きかけてくれる係員もいる。

ショッピングモール「サンタモニカ・プレイス」では、前の客が青いラインを超えてから、エスカレーターに乗るよう促している。筆者撮影
ショッピングモール「サンタモニカ・プレイス」では、前の客が青いラインを超えてから、エスカレーターに乗るよう促している。筆者撮影

 ショッピングモールの「サンタモニカ・プレイス」は、コロナ以前は、中央のコートヤードに、数多くのチェアが置かれていたが、それらは撤去されたままだ。客が集まって密状態ができるのを防いでいると思われる。

 このモールでは、エスカレーターの乗り方にも注意を与えているところがユニークだ。前の客が青いラインを超えてから、エスカレーターに乗るよう促しているのである。

パティオ席も、ソーシャルディスタンスを保ってテーブルを配置。筆者撮影
パティオ席も、ソーシャルディスタンスを保ってテーブルを配置。筆者撮影
駐車場の一部にパラソルとテーブルを配置して、サービスするレストランもある。筆者撮影
駐車場の一部にパラソルとテーブルを配置して、サービスするレストランもある。筆者撮影
「Volcano Tea House」では、6人までという入店者数制限があるため、入り口で注文アイテムを決めてから、レジへと進み、注文と支払いを行うシステムにしている。筆者撮影
「Volcano Tea House」では、6人までという入店者数制限があるため、入り口で注文アイテムを決めてから、レジへと進み、注文と支払いを行うシステムにしている。筆者撮影
ロサンゼルス郡保健局の指示を順守していることを示す書類を貼り、客に安心感を与えている「Volcano Tea House」。筆者撮影
ロサンゼルス郡保健局の指示を順守していることを示す書類を貼り、客に安心感を与えている「Volcano Tea House」。筆者撮影

 レストランは、いかに屋外で食事してもらうかを重視した取り組みをしている。換気が懸念される店内席よりも、パティオ席の方が、客にとっては安心だ。そのパティオ席も、ソーシャルディスタンスをとったテーブル配置がされている。

 サンタモニカ市の北マリブ市では、駐車場を活用しているレストランも目についた。店頭の駐車スペースにパティオ席を設けたり、店からは数十メートル離れてはいるものの、広大な共同駐車場の一部にパラソルを立ててテーブル席を設けたりしているのだ。

 タピオカドリンクの人気店「Volcano Tea House」では、入り口にテーブルを設置してメニューを置き、そこでまず注文アイテムを決定させてから、レジへと進ませて、注文及び支払いをさせている。

 ロサンゼルス郡保健局は感染防止のために飲食店に様々な命令を出した。半数の飲食店が命令に従っていないことが問題となったが、同店では命令を順守していることを示す書類を店頭に貼り、客に安心感も与えている。

 人気スーパーTrader Joe’sでは、列で入店を待つ客たちに、水ボトルが無料配布されていた。暑くなる夏には、このサービスは嬉しい。

AAAのオフィスの受付は、室内から屋外テントへと移動。筆者撮影
AAAのオフィスの受付は、室内から屋外テントへと移動。筆者撮影
AAAのオフィス内では、椅子を配置するところに、テープで印がつけられている。筆者撮影
AAAのオフィス内では、椅子を配置するところに、テープで印がつけられている。筆者撮影

 ある用件で、AAA(アメリカ自動車協会。故障車のレッカーサービスなども行う、日本のJAF(日本自動車連盟)に相当する組織)のオフォスも訪ねた。受付が室内から、屋外のテントへと変わっていた。

 屋外の受付では、用件を記入させられるとともに、受付横の看板に書かれている、3つの質問に、回答を求められた。

1. 過去14日間の間に新型コロナ検査を受けて陽性となったか?

2. 過去14日間の間に新型コロナ検査で陽性となった人と接触したか?

3. 現在、発熱、咳、呼吸困難などの症状がないか?

 すべて“ノー”なので、そう答えて、建物内に入った。

 各係員の前にはアクリル板が立てられ、フロアには、2メートルおきにマークがつけられている。また、着席して係員に対応してもらうスペースでは、適切な椅子の位置を示す印もつけられている。

パラセーズ公園ではピクニックをしたり、友人と歓談したりする人々が増えているが、マスクを着用していない人が目につく。筆者撮影
パラセーズ公園ではピクニックをしたり、友人と歓談したりする人々が増えているが、マスクを着用していない人が目につく。筆者撮影
サンタモニカ市はパラセーズ公園の諸所に看板を立てて、マスク着用やソーシャルディスタンス保持を呼びかけているが、順守している人は半数程度。筆者撮影
サンタモニカ市はパラセーズ公園の諸所に看板を立てて、マスク着用やソーシャルディスタンス保持を呼びかけているが、順守している人は半数程度。筆者撮影
パラセーズ公園には騎馬警官も出現。市民と交流し、警官に対する信頼回復を図っているようだ。筆者撮影
パラセーズ公園には騎馬警官も出現。市民と交流し、警官に対する信頼回復を図っているようだ。筆者撮影

 室内より感染の危険が少なく、ソーシャルディスタンスも取りやすいからか、サンタモニカ市内にあるパラセーズ公園では、ピクニックする人々の姿が、以前より目につくようになった。中には、折り畳み式のテーブルを広げて、テーブルクロスを敷き、花も飾ってロマンティックな食事を楽しむカップルもいる。

 パラセーズ公園では騎馬警官が市民と交流している姿も見られた。警官らはそうすることで、フロイドさん事件で失われた警官に対する市民の信頼感を取り戻そうとしているのかもしれない。

 サンタモニカ市は、パラセーズ公園の諸所にソーシャルディスタンス保持やマスク着用を呼びかける看板を立てているが、見渡したところ、順守している人々は半数程度といったところ。

 同居している家族や友人となら、他の人々とソーシャルディスタンスを保持していれば、マスクを着用せずにピクニックしても問題ないだろう。しかし、20人ほどの大人数で、マスクもせず、ソーシャルディスタンスも取らずにピクニックしている集団もいて、唖然とする。きちんとマスクをして、ソーシャルディスタンスもとっておしゃべりしているグループが少ないからか、そんなグループをたまに目にすると感動してしまうほどだ。

 感染が起きやすいため、最後まで再開されることのなかったバーやナイトクラブの営業も再開されたが、マスクを着用せず、ソーシャルディスタンスもとらない客が多い状況が報じられている。

 新規感染者数が激増する中、経済再開とともに新型コロナウイルスと暮らし始めたロサンゼルス。

 感染抑制のための様々な取り組みは重要だ。しかし、何より、マスク着用やソーシャルディスタンス保持の点で問題を抱える市民の意識改革に力を入れる必要があるのではないか?

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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