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「今の公明党なら潰すのが池田名誉会長の意志」山本太郎が選挙区を譲った男の本気度 参院選2019

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
演説する野原ヨシマサ氏 筆者撮影

 この週末21日に投開票が行われる25回参議院選挙。数々の候補者の中でも、一際、異彩を放っているのが、野原ヨシマサ氏だ。山本太郎氏率いる政治団体「れいわ新選組」から東京選挙区で出馬しているのだが、野原氏はなんと現役の創価学会の沖縄壮年部。創価学会と言えば、公明党の支持母体だ。しかも、東京選挙区では同党の山口那津男代表が出馬している。野原氏は「政治改革するための手っ取り早い方法は、公明党を潰す事です」と山口代表の首を取る構えだ。選挙結果によっては、公明党のみならず、いくつもの選挙区で創価学会票をあてにしている自民党にも大打撃となる。

○「公明党は平和・福祉の旗を完全に下ろした」と野原氏

 創価学会とは、教育者・教育学者であった牧口常三郎氏が1930年に設立した「創価教育学会」をルーツとする仏教系の新宗教団体。1960年代当時、第3代会長で池田大作氏(現名誉会長)により創価学会は国政への進出を本格化、公明党を結成した。当初、公明党は「平和の党」を自称し、福祉政策を重視するなど中道左派的な政策を掲げていたが、1999年からは自民党と連立を組み、以来、常に自民党の補完勢力であり続けている。その公式ウェブサイトによれば会員世帯数が827万に及ぶという創価学会は、国内有数の集票組織であり、公明党の候補者のみならず、自民党の候補者達も恩恵を受けてきた。こうした自民党の補完勢力化した公明党に憤り、山口代表に真っ向勝負を挑んでいるのが、野原氏なのである。

 「安保法制、共謀罪を(国会で)通した時、公明党は平和・福祉の旗を完全に下ろした」―野原氏はそう主張する。そして、「公明党を潰すこと」は、現在、療養中の池田創価学会名誉会長の意志だと言うのだ。

 「公明党の前身である公明政治連盟を池田先生が立ち上げたときに、こう言われました。『将来公明党が政権になびいて立党の精神である平和福祉を忘れた場合には、そして国民をいじめるようになったときには、その時には遠慮なく潰していいよ』って言われたんです。だから、私が勝手に言ってるんじゃないんです。池田先生がそうおっしゃってるんですよ」(今月12日東京・品川での演説)

○創価学会員達も同調「自公政権支持できない」

創価学会員達も公然と野原氏に同調 筆者撮影
創価学会員達も公然と野原氏に同調 筆者撮影

 野原氏の公明党批判に公然と同調する創価学会の会員達も現れている。今月19日、JR新橋駅前での野原氏含む、れいわ新選組の候補者達の演説会では、創価学会のシンボルである三色旗がいくつも翻っていた。取材に応じてくれたある学会員は「私は物心ついた時から学会員でしたが、沖縄の民意を無視して、辺野古の米軍新基地の建設を強行する自民党に同調する公明党を観て、目が覚めました」と話す。

「学会員の票がなければ、少なくとも一人区で自民党の候補は勝てなくなります。一人でも多くの学会員に、投票先を変えてもらいたいです」(同)

 別の学会員も筆者の取材に応じた。

 「悲しいことですが、多くの学会員達は、政治自体にはあまり関心が無く、選挙運動に参加することが『功徳』だと信じているのです。毎回、選挙の度に『選挙区は自民党』『比例は公明党』との指示が学会上層部から下りてきますが、安保法制や原発推進は支持できません」

 公明党は「自民党の暴走を抑えるブレーキ役」と同党の役割を学会員達に説明してきた。だが、それを鵜呑みにできない学会員達は、野原氏支持へ流れているようだ。

 

○「こんな面白い選挙があるか?」と山本氏

 野原氏が出馬している東京選挙区は、もともと6年前の参院選で、山本太郎氏が当選を果たした選挙区。今回も、東京選挙区からなら山本氏は当選確実と目されていた。だが、山本氏は、あえて野原氏に選挙区を譲り、比例区から出馬している。それは「自身の一議席を守るだけの選挙はしたくない」との思いからだったようだ。

演説する山本太郎氏 筆者撮影
演説する山本太郎氏 筆者撮影

  「この東京選挙区で、野原さんが立候補してくれた。公明党代表の山口さんに創価学会員がガチンコで喧嘩売りにきているんですよ。こんな面白い選挙あったかよ、ていう話ですよ」(山本氏 今月19日、JR新橋駅前の演説より)

 掲げる政策が異なるにもかかわらず、政権を維持するという一点で協力してきた自公両党の矛盾する関係そのものを狙い撃ちしてきた山本氏の戦略は、確かに、見事だと言えよう。その当落にかかわらず、野原氏の東京選挙区出馬は、日本の政治が抱える閉塞感に一石を投じるものになるのかもしれない。

(了)

 

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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