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『ドカベン』香川伸行さんを偲ぶ。明るい人柄、そして今年3月に語っていた「夢」――

田尻耕太郎スポーツライター

不躾な質問にもジョークと笑顔

「ドカベン」の愛称で親しまれた元ホークスの香川伸行さんが、9月26日午後に亡くなられた。52歳だった。福岡在住の香川さんは2日前には東京に出向いて仕事を行っていたという。あまりに突然の訃報に言葉を失うしかなかった。

初めてきちんとお会いしたのはごく最近。今年3月、「読む野球」(主婦の友社)という媒体でインタビューをさせていただいた。「昭和のパ・リーグ」がテーマだったが、当時の活躍もさることながら、やはり「ドカベン」香川さんのキャラを引き出すような話題へと移っていった。「今の体重は?」などという不躾な質問もしてしまった。それでも「125キロくらいかな。プロで一番重かった頃よりは10キロは少ないで」とカラカラ笑って答えてくれるのだった。あらかじめ、知り合いのメディア関係者やホークスOBなどに香川さんについて話を聞いておいたが、誰もが口をそろえた通り、気さくでとても明るい人柄の方だった。

ただ、体が悪いとは聞いていた。インタビューの中でも、香川さん自ら語っていた。

「腎不全を患って以来人工透析を週に3回受けているんやけど、じつは去年5月に死にかけたんや。透析のために病院に行ったら、そこで心筋梗塞を起こしてしまってな。意識不明になって、病院にいたのにまた別の病院に運ばれたらしい。『らしい』って俺は全然知らんから(笑)。6時間経ってようやく意識が戻った時は家族が呼ばれとって、医者から『本当に危なかったんですよ』って言われましたよ」

いつか、無名の高校を「甲子園」に――

こんな話題の時も香川さんはまるで冗談を言うように、明るく振る舞うのだった。病気以降は野球解説の仕事もなくなった。自然とプロ野球とは縁遠くなったが、その理由として「最近のプロ野球は面白くない」ともボヤいていた。

「オレみたいな個性のある選手が少なくなったよね。下手に三拍子、三拍子ばかりいうから面白くない。イチローが(スタメンに)9人並んだら、監督は何もせんでええやないか。色んな選手がいるから野球には監督が必要なんや。投げるだけ、走るだけ、打つだけのスペシャリストがいたっていい。この選手が登場したら…!みたいなワクワク感のある野球を見たいですよね」

といいつつも、今年は「スポーツナビ」のOBトークコーナーに度々登場して、久々にホークスについて語るなど、再び活躍の場が見られるようになっていた。

そして、こんな夢を語っていた。

「最近、元プロが高校野球の指導を出来る資格が簡単に取れるようになったやないですか。アレは取ろうと思ってるんですよ。高校生を教えて、上手くなっていったら面白いやろな。もしやるならば、田舎町の、まだ甲子園に出たことのないようなチームを教えてみたい。個性が映える選手を育ててな。そんなチームを作って甲子園に連れて行ってみたいな」

近年は中学生のクラブチームで指導し、自身の冠大会「ドカベン香川杯」も開催していた。大好きな野球へ、そして「ドカベン」を応援してくれたファンへの恩返しはまだ道半ばだったはず。本当に残念でならない。

謹んでご冥福をお祈り致します。合掌。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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