日本ダービーで人気集中のサートゥルナーリア、その凄さはジンクスを超えられるか
サートゥルナーリアは3歳世代7071頭の頂点に立てるのか?
5月26日、第86回日本ダービーが行われる。今年の3歳世代は計7071頭だが、このうちこの舞台に立てるのはたった18頭。そして、その優勝の最右翼と言われているのがサートゥルナーリア(牡3、栗東・角居勝彦厩舎)だ。皐月賞を制し4戦4勝で二冠に挑むが、その前評判の高さの理由と不安点について探ってみた。
2018年ホープフルS 優勝サートゥルナーリア
日本競馬史上7頭目の無敗の二冠馬となるか?
日本競馬史上、無敗でダービーを制したのはこれまで全10頭がいる。そのうち、皐月賞も制しているクラシック二冠馬は6頭。のちに菊花賞も優勝してクラシック三冠馬になったのはシンボリルドルフとディープインパクトの2頭だ。
日本にグレード制が導入された1984年以降、無敗でダービーに挑んだ馬は12頭いたが、そのうち1番人気だったのは6頭、そのうち優勝したのは4頭だった。この4頭はいずれも皐月賞勝ちを経て日本ダービーに挑んでいる。
このように、
・ダービーまで無敗
・かつ、ダービーで1番人気
・かつ、皐月賞優勝を経てのローテーション
の該当馬はみな日本ダービーを制している。
サートゥルナーリアはおそらく今年の日本ダービーで1番人気になると予想されている。サートゥルナーリアがこの秋、菊花賞へ駒を進めるかはさておき、7頭目の無敗の二冠馬への道はとても明るいと占える。
乗り替わり直後で勝てるのか?
一方、サートゥルナーリアにとって悪いジンクスといえば、サートゥルナーリアに騎乗するレーン騎手とは今回が初タッグであるという点である。競馬用語で"テン乗り"と呼ばれるこのケースで、過去優勝したのは65年前の1954年(優勝馬ゴールデンウエーブ)までさかのぼらなければならない。
今回コンビを組むのはオーストラリアのダミアン・レーン騎手だ。現在、日本ではJRAの短期免許で騎乗している。この短期免許で日本ダービーを制した例は2003年のネオユニヴァースのみ(優勝したのは現在日本で免許を取得し活躍しているミルコ・デムーロ騎手)と決して有利なデータは揃っていない。
なお、ダミアン・レーン騎手はサートゥルナーリアの1週前追い切りに騎乗し、その感触は確認済み。厩舎サイドは「とても真面目な方で指示に忠実に追い切ってくれたし、いい感触を得ているようです」(角居厩舎辻野助手)と鞍上自身も馬との相性も高く評価していた。
そして、レーン騎手はすでに先日のヴィクトリアマイルで日本のGIも制している。
このようにデータ的には悪いジンクスが並ぶが、そもそも日本ダービーへ向かう有力馬ともなれば直前にパートナーを変える必要性がない(今回もルメール騎手が騎乗停止になったため、急遽乗り替わりが決まった)と考えれば、あまり悲観することはないとも言える。
2019年皐月賞 優勝サートゥルナーリア
父はロードカナロア、距離の不安はあるか?
最後に距離についてである。ロードカナロア自身は短距離からマイル路線で活躍しており、産駒も代表産駒・アーモンドアイ(牝4、美浦・国枝栄厩舎)以外はマイルまでの活躍が目立つ。それゆえ、適正距離を不安視する声がないこともない。
しかし、アーモンドアイはご存じのとおり牝馬三冠とジャパンカップ(GI)を制し、今年はドバイシーターフ(GI)で海外GIも制している。また、母のシーザリオはオークス、兄のエピファネイアはジャパンカップを優勝している。
オークスとジャパンカップは、日本ダービーと同じ東京芝2400m戦である。
「そう考えれば、むしろ東京芝2400mは適距離である可能性すらありますね。」(角居厩舎辻野助手)。
「前の馬にとりつく脚の速さには驚きを覚える」
サートゥルナーリアは2018年4月19日に栗東トレセンに入厩した。当時、まだ幼いこの馬に対し、陣営は「まだまだ幼児体型ですが、トモなどはボリュームがあり、しっかりした体つきです」(同・辻野助手)と評していた。その後も順調に調整を進め、予定どおり同年6月10日に阪神競馬場で初陣を飾っている。
その後も比較的順調に成長を重ね、ウオッカなど一線級の名馬を数多く輩出してきた角居厩舎のスタッフたちに「かつて味わったことのない乗り味」「底知れない」と評されてきた。
そんなサートゥルナーリアの武器はとりつく瞬間の加速のすばやさ、そして競馬におけるコントロールの自在さだ。
「普段はまだ幼い部分もあるのですが、走るときには鞍上の指示をよくききます。待つべきときにちゃんと待てるし、GOサインには素早く応える。とくにGOサインの直後、前の馬にとりつく脚の速さにはこちらも驚きを覚えます。」
そんなサートゥルナーリアが今年のダービーで大仕事を披露する可能性は極めて高いと考えるのは筆者だけではないはずだ。