【姫路市】時空を超えて、ゆったり、まったり。江戸期の町家を再生しオープンした喫茶は城下町を巡る休憩所
町家を象徴する虫籠窓やうだつ、平格子の建具に紅殻色ののれん。喫茶とフリースペースの「小倉屋」が8月20日にオープンしました。姫路城から東へ徒歩10分ほどの野里街道沿い、ドリンクを飲みながらゆっくり町家を堪能できます。
夏でも涼しい町家の構造
玄関から奥の庭まで一直線につなぐトオリニワは、風が吹き抜けて爽やか。土間、それから天井が高いこともあって夏でも涼しさを感じます。扇風機だけで充分なので、冷房設備はありません。
見上げると美しい小屋組。天窓の向こうには夜になると星が輝くよね、と想像しました。
江戸期の初め、九州の小倉から移住してきた尾上氏が小倉屋として金物店を営んでいた場所。町家は200年以上前の建物で、商品棚の中には帳面や小物金具が入っていたそうです。
ここを壊してマンションを建設する話が持ち上がったとき、「姫路・町家再生塾」の事務局長も務める塩本知久さんと由紀子さん夫妻が「大切な町家を残したい」と、21年2月に購入。傷んでいる部分の補修、外観と内装の変更、2回に分けての改修には計1年かかりました。
夫妻も現在は小倉屋と同じ野里エリアで、知久さんが大学進学まで過ごしていた築140年の町家に在住。「住人同士の距離感が近い」と話す知久さんは町家暮らしのよさを熟知し、由紀子さんは18年から続くイベント「町家の日」の発起人で町家の魅力を広めるために尽力しています。
別世界に入り込む
これまでも小倉屋は「町家の日」の会場としてや地元の小学生の社会見学などで開放してきましたが、より身近な存在に。
喫茶ではコーヒーやハーブティー、リンゴジュースを提供しています。
敷地は150坪で、席数は約20席。板の間には考古学や地域史、祭りにまつわる寄贈書2000冊が。
我が家のように、くつろげる。
「昼寝をしたい」と感想を伝えたお客さんの気持ちに千姫も同感。
屏風が飾られた席からは庭も眺められます。別世界に入り込んだ気分。
庭には風情ある松の木や灯篭も。離れのあった位置には石を配置し遺構表示がしてあります。
使用人の食事部屋だったところは、食器棚がそのままに。往時に思いを馳せました。
正座が難しい人は土間に配置してあるイス、上がり框(かまち)、庭のベンチへ。
「姫路城から城下町散策へ向かう休憩スポットとして利用し、町家に触れて魅力を感じてほしい」と夫妻。
今後も改修時に出てきた土や瓦を使って土塀を作るワークショップを継続。フリースペースの活用を含め、これからがさらに楽しみ。
野里をはじめ、各地に町家の再生が広がっていくといいですね。
小倉屋
兵庫県姫路市堺町30
電話番号:070-9021-3306
営業時間:10:00~18:00
不定休 ※インスタグラムで確認を
駐車場:なし