中国チチハル市の中学で体育館の屋根が崩壊 なぜ保護者らは激しく怒ったのか?
中国東北部・黒竜江省チチハル市の第34中学校で7月23日午後、体育館の屋根が突然崩落する事故が発生した。当初、体育館内には中学生など19人がいて、生き埋めになったと報道された。
そのうち8人は救助されたり、自力で脱出できたが、24日午後には11人の死亡が確認された。事件後、詳細がわかるにつれ、中国のSNSに飛び交ったのは、保護者らの激しい怒りの声だった。
行政も医者も一切説明しない
SNSで多数シェアされたのは、犠牲者の父親が病院の廊下と思われる場所で、当局などの対応を激しく非難する動画だ。
緑色のTシャツを着た父親が「一体、病院や政府は何をしているんだ!なぜ、医者は私たちに一言もこの状況を説明してくれない?子どもに会わせてくれないのか?もう5時間も待たされているんだ」と切々と語っていた。
これに対し、多くの人々が「あまりにもひどい対応だ!」「辛すぎて見てられない」「気の毒すぎる……」「父親が怒るのは当然だが、彼は冷静だ。東北の人々は我慢強く、民度が高い。こんなに辛いことがあっても、父親は必死で我慢している」といったコメントを投稿した。
事故後、病院には保護者や学校関係者が駆けつけたが、地元政府の指示だったのか、病院側は一切の情報を出さず、子どもにも長時間、面会させなかったことから、保護者らは地元政府や病院などの対応を激しく非難した。
SNSでは「きっと後ろめたいことがあるから、すぐに遺体に会わせないのだろう」「何か裏工作しているのではないか?」といったコメントが飛び交った。また、「学校はすぐに救急車を呼んだのか?」「すぐに救助すれば助かった子どももいたのでは?」といった批判も多かった。
おから工事の疑惑も噴出
中国メディアによると、崩壊した体育館は1997年に建てられたもので、施工後26年が経過していた。事故の4カ月前にはチチハル市教育局が校内の建物の安全検査を行ったばかりで、その際は問題なかったという。
報道によれば、原因は、体育館に隣接する建物を建設中、建設業者が建築資材を体育館の屋根に置いていたことによる。その資材が雨によって重くなり、重みに耐えられずに屋根が崩壊したと言われている。
しかし、地元メディアの中には「確かに雨は降っていたが、雨量はそれほど多くなかった。資材の重さで屋根が崩落したというのは本当か。資材をそんなところに置くことも信じられない行為だが、体育館の屋根自体に問題があったのではないか」と報じているものもある。
屋根はコンクリート製だったが、事故後の映像や写真を見ると、全面的に崩落しており、もともとその体育館は「おから工事(強度が不足している手抜き工事)」だったのでは、という疑惑も飛び出ている。
おから工事のつらい記憶
「おから工事」で思い出すのは、15年前の2008年に四川省で発生した四川大地震だ。マグニチュード8.0の大地震により7000校以上の学校が倒壊、多くの子どもたちが犠牲になったことを覚えている人は多いだろう。
校舎の耐震性が大きな問題となり、行政による「人災」と指摘されたが、今回も事故現場の映像などを見て、あのときのことを思い出した中国人が多いようだ。
報道によると、チチハル市第34中学は夏休み期間に入っており、中学生のほとんどは登校していなかった。
事故当時、体育館内にいた学生はバレーボールの練習中だった。数日前に試合で遠征しており、黒竜江省内のバレーボール大会で第2位の好成績を収めた、前途洋々な子どもたちだったという。
中国では、一人っ子政策を廃止したあとも、物価や子どもの教育費の高騰などの影響で、子どもは1人だけという家庭が多い。今回の事故で、一瞬にして、そのたった1人しかいない我が子を失った保護者もいた。
SNSの中には「四川大地震のときと、この国は何も変わっていない。何の罪もなく、真面目に生活していても、どこにどんなリスクが転がっているかわからない」という言葉もあった。