アンネと93歳生存者の友人の実話を元にしたオランダ初のアンネ映画『私の親友、アンネ・フランク』
オランダ初のアンネ・フランクの映画 Netflixでも
2021年にオランダで初めてアンネ・フランクを取り上げた映画「Mijn Beste Vriendin Anne Frank」(英訳"My Best Friend Anne Frank"「私の親友、アンネ・フランク」)が製作された。そして2022年2月にNetflixでも公開されている。「ナチス占領下のアムステルダムで共に過ごした日々から、強制収容所での残酷な再会まで。アンネ・フランクとハンナ・ゴスラーの友情を描いた実話に基づく物語」と紹介している。
93歳でイスラエルに住むアンネの友人との物語
第二次世界大戦の時に、ナチスドイツが約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。アンネ・フランクはユダヤ人だったために、ナチスの標的となり迫害を逃れてオランダのアムステルダムの隠れ家で約2年間、身を潜めて生活していたが、密告されて1945年にベルゲン・ベルゼン強制収容所で病気で死亡した。アンネが隠れ家生活で思いを綴った日記を戦後、ホロコーストから生き延びた父オットー・フランクが「アンネの日記」として出版し、現在でも世界中で多くの人に読まれている。またアンネ・フランクは世界中の老若男女にも人気がある。世界中の若者に人気のインスタグラムには世界中のアンネ・フランクのファンがアンネの当時のモノクロ写真や、アムステルダムにある「アンネの家」を訪問した写真をたくさん投稿している。
アンネ・フランクの生涯は「アンネの日記」を元にした映画、ドラマ、演劇、アニメ、マンガなどで世界中で作品の題材として取り上げられ、演じられている。アンネの生涯を忠実に描いたノンフィクションである。今までのアンネ・フランクの映画やドラマは、アンネが執筆していた「アンネの日記」を元に隠れ家での生活を中心に描かれていた。そしてアンネ・フランク一家が密告されて逮捕されて収容所に送られるところで終わっているものが多かった。だが、今回、オランダで初めて製作されたアンネ・フランクの映画は、アンネと親友のハンナ・ゴスラーの話を中心に進められており、今までのアンネ・フランクの映画やドラマとは違った角度からアンネ・フランクを見ることができる。
アンネの親友だったハンナ・ゴスラー氏もユダヤ人だったために、ナチスに逮捕されて強制収容所に移送された。アンネは強制収容所で病気で死亡してしまったが、ハンナは辛うじて生き延びることができた。現在93歳でイスラエルに住んでいる。
▼現在のハンナ氏
フィクションからノンフィクションまで幅広のアンネ・フランク
戦後75年が経ち、ホロコースト生存者らの高齢化が進み、記憶も体力も衰退しており、当時の様子や真実を伝えられる人は近い将来にゼロになる。当時の記憶や経験を後世に伝えようとしてホロコースト生存者らの証言を動画や3Dなどで記録して保存している、いわゆる記憶のデジタル化は積極的に進められている。ホロコースト映画はほぼ毎年製作されているが、誰もが簡単に見ることができる映画を通じてホロコーストの歴史を伝えることができるという観点で、記憶のデジタル化と伝達において重要なメディアの1つである。
そしてデジタル化された証言や動画や映画は欧米やイスラエルではホロコースト教育の教材としても活用されている。ホロコースト映画をクラスで視聴して議論やディベートなどを行ったり、レポートを書いている。アンネ・フランクはホロコーストを象徴するような人物で、「アンネの日記」は小学生の必読書にもなっており、アンネ・フランクの映画や動画は小中学生のクラスでのホロコースト教育では多く活用されている。
ホロコースト映画は史実を元にしたドキュメンタリーやノンフィクションなども多い。実在の人物でユダヤ人を工場で雇って結果としてユダヤ人を救ったシンドラー氏の話を元に製作され1994年に公開された『シンドラーのリスト』やユダヤ系ポーランド人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマン氏の体験を元に2002年に公開された『戦場のピアニスト』などが有名だ。史実を元にした映画は欧米やイスラエルではホロコースト教育の授業で視聴されることも多い。今回の映画のように次世代にホロコーストの歴史の真実を伝えていくことに多く活用されている。
一方で、フィクションで明らかに「作り話」といったホロコーストを題材にしたドラマや映画も多い。1997年に公開された『ライフ・イズ・ビューティフル』や2008年に公開された『縞模様のパジャマの少年』などはホロコースト時代の収容所が舞台になっているが、明らかにフィクションであることがわかり、実話ではない。
そしてアンネ・フランクについてはノンフィクションの映画が多い。今回の映画「私の親友、アンネ・フランク」もハンナ・ゴスラーとアンネ・フランクの2人の史実に基づいているノンフィクションだ。だが、最近ではフィクションの創作アニメ映画『アンネ・フランクと旅する日記』(Where is Anne Frank)も製作された。アンネ・フランクという実在の人物をモデルにした映画ではフィクションでもノンフィクションでもホロコーストの歴史を伝えている。