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出掛ける前からジャズ気分:劇場型“朗読とフリー・ジャズ”の新潮流(朗読幻奏3【妄執】)

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
朗読幻奏3【妄執】
朗読幻奏3【妄執】

“朗読幻奏”は、2013年の夏にスタートした古今東西の文学作品を朗読・演奏するシリーズ。首謀するのはスガダイロー(ピアノ)、日比谷カタン(ギター、朗読)、石井千鶴(小鼓、朗読)という3名。彼らは初回のゲストだった京極夏彦によって“音ノ刃”と命名されている。

日比谷カタンは2001年からアコースティック・ギターの弾き語りによる音楽活動を開始、石井千鶴はVOICE SPACE(東京芸術大学音楽学部の卒業生を中心とした、詩と音楽のコラボレーションを実験するパフォーマンス・グループ)への参加など、言葉と音楽との関係性に敏感な経歴をもつパフォーマー。石井千鶴とスガダイローは秘宝感(2010年結成のディープな進化系フリー・ジャズ・バンド)で共演という、オルタナティヴなカルチャー・シーンを先導する顔ぶれだ。

第3回を迎える“朗読幻奏”、朗読のテキストは芥川龍之介「地獄変」と泉鏡花「海神別荘」。ゲストに俳優の山口崇を迎えて、“妖の世界”を描こうとした2人の文豪の“言葉”を現代に“降ろそう”とするらしい。

そういえば今年は、3月に東京文化会館小ホールで行なわれた「武満徹ソングブック・コンサート」で自作詩を読む谷川俊太郎を観たり、伊藤志宏が8月にリリースした3人のチェリストとの共演作『タペストリア』で女優の緒川たまきが京極夏彦作品を読む曲を聴いたりと、“朗読”を絡ませた音楽活動に触れる機会があったことを思い出した。“朗読”への注目度が高まっているという“噂”は、あながち惹句だけではないのかもしれない。

さて、“音ノ刃”たちはどんな切り口で“朗読”の可能性を広げてくれるのかーー。

♪朗読幻奏 【姫と鬼】泉鏡花・京極夏彦の夜

●公演概要

9月5日(金) 開場 18:30/開演 19:00

会場:深川江戸資料館小劇場

出演:音ノ刃<スガダイロー(ピアノ)、日比谷カタン(ギター、朗読)、石井千鶴(小鼓、朗読)>、ゲスト:山口崇(朗読)、トークゲスト:東雅夫「鏡花と龍之介の親交をめぐって」

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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