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【ジャズ生】タンゴの幻影をリセットさせる問答無用の一本勝負|喜多直毅クアルテット@ティアラこうとう

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家

“ジャズの醍醐味”と言われているライヴの“予習”をやっちゃおうというヴァーチャルな企画“出掛ける前からジャズ気分”。今回は、喜多直毅クアルテットによるポスト・モダン・タンゴの進化形のステージ。

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喜多直毅クアルテットは、ヴァイオリンの喜多直毅、バンドネオンの北村聡、ピアノの三枝伸太郎、コントラバスの田辺和弘という4人編成のインストゥルメンタル・バンドだ。

この楽器編成を耳にしただけでピンッと来る人もいるだろうが、彼らが土台としているジャンルはアルゼンチンタンゴであると指摘することができる。このジャンルで“標準編成”を意味する“オルケスタ・ティピカ”を最少人員で構成するとこの配置になるからだ。

では、喜多直毅クアルテットはアルゼンチンタンゴのレパートリーを演奏するバンドなのかと思われてしまうと、それには素直にうなずくことができない。

2011年に結成されたこのバンドの目的が、“タンゴ愛好会”をめざしたものでも、“タンゴ研究会”をめざしたものでもないことは、彼らがオリジナル主義で、踊るための伴奏を心がけているわけでもなく、甘くロマンチックなイメージを拝借した耳なじみのよい音楽を演奏しようとしているわけでもないことからわかるはずだ。

また、日本人にとって異文化の濃度が高い要素を多めに配合することで差別化を謀った“アコースティックなフュージョン”を狙っているのでももちろんない。

それは、このバンドが原則的に途中休憩なしのほぼぶっ通しという、ストイシズムあふれたステージングを展開することからしても“一目瞭然”となるはずだ。

タンゴの真髄は、その守るべき形式にあるのではなく、激情と共感の波動を伝えるためにどれだけのボーダレスな精神をもてるかにあるーーと喝破したのがアストル・ピアソラであるならば、喜多直毅クアルテットは間違いなくその真髄を更新して現代に再現すべく登場した“ジャパニズム・ティピカ”と呼べる存在である。

さて今回の“一本勝負”による激情と共感の波動では、いかなる心象風景が湧き上がってくるのかーー。

では、行ってきます!

●公演概要

3月31日(木) 開場19:00/開演19:30

会場:ティアラこうとう・小ホール(東京・住吉)

出演:喜多直毅クアルテット<喜多直毅(音楽とヴァイオリン)、北村聡(バンドネオン)、三枝伸太郎(ピアノ)、田辺和弘(コントラバス)

♪ 2016年3月31日喜多直毅クアルテット・コンサート“挽歌”PV

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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